大聖堂を探検です。
本編に戻りました。
さて、ミレッタとコニーがわたし付きの修道女となりました。
初顔合わせの時にはずいぶん固くて、ちょっと気疲れしちゃいましたけど、お願いしたら少しは柔らかくなりました。
ミレッタは基本、わたしの身の回りのお世話をしてくれる。
コニーは基本、わたしの護衛。
わたしはまだ5才児だから、まともに身の回りの事が出来ません。
その為のミレッタです。
ええ、そうですよ。どうせ自分の部屋のドアノブにすら届きませんよ。ふんだ。
護衛と言うのも、護衛してくれるコニー自身が言うには、わたしくらいの幼さの子供が一人で出歩くと、ひょいと抱えて簡単に攫われちゃうらしいです。
王道中世ヨーロッパ。マジ怖ぇー。
「えーと、あとはわたしはどうしたらいいのでしょう?」
マール村から王都に連れて来られて、そのまま大聖堂に直行。そしてこの客室に。
ミレッタとコニーとの顔合わせも済んじゃった今、わたしはどうしたらいいのでしょう?
「部屋にお籠りさんですか?」
ゆっくりしていただきますって言われたって、ここは村じゃない。
初めて来た王都で、しかも大聖堂の中。
何していいかわかりません。
ミレッタやコニーがいると言っても、まさか勝手に外出するわけにもいかないでしょうし。
「このまま部屋に居てもかまいませんが、お暇でしたら大聖堂内を見て回りますか?」
「いいのですか?」
「外に出るわけにはいきませんが、大聖堂内でしたら問題無いですよ」
「私もミレッタもいる。大丈夫だ」
…いいみたいです。
だったら話は早いです。
大聖堂内を探検です。
ーーとは言ってもですね、わたしはこの大聖堂内のどこに何があるのか、まったくわからないわけですよ。
ミレッタにお任せです。
ミレッタに手を引かれてやって来たのは、大聖堂大ホール。
出発前に軽く施設の配置を教えてもらいましたが、どうやらわたしはちょっと勘違いしていたみたいです。
コンラード王国王都、天光降教教会本部と言う大きな複合施設があって、その中に色んな施設があるみたい。
教会の司祭様や神学生、研修生が寝泊りするのが修道院と言う所で、わたしがいた客室もここ。
中庭が併設されていてその先に参拝などの各種手続きをする建物。そして正門。
修道院の隣、中庭を囲う様にあるひときわ大きな建物が大聖堂とのこと。
てっきり、わたしは大聖堂と言うすごく大きな建物があって、その中にお祈りする大ホールとか司祭様とかが住む部屋とかが全部入ってるのかと思ってました。
あと、修道院って孤児とかを引き取るところじゃないんだね。
ミレッタに聞いたら、それは孤児院と言う別施設みたい。この教会本部内にもあるらしい。
「教会本部で、まず見るべきものと言ったら、ここ大聖堂大ホールです」
「ほぁー」
自分で言うのもなんですが、あほの子っぽい声が出ました。
大聖堂、すっごいね。
まず、ものすっごく広い。
大聖堂の建物自体が5角形で、内部も同じく5角形。
入り口から入って真正面に、頭が輪っかのロザリオを胸に抱いて跪いてる女の人の像。白いから石膏像かな?
天井には色とりどりの花や鳥が飛び交ってる絵画が天井一面に描かれています。
天井付近の壁には、ばかじゃないの? ってくらいでっかいステンドグラス。
たぶん光の加減とか方向とか計算されてるんでしょうね。わかります。やたらきらきら輝いてるもん。
床一面には何脚あるのってくらいの椅子…うーん、みんな2~3人掛けくらいの大きさだから椅子じゃなくベンチ?
お金かかってますねー。
本部ってくらいだから当然なのかな?
確かにこれは絵になりますね。
一見の価値ありです。
宗徒じゃなくても観光名所として開放されてるのかな?
今も、引っ切り無しに人が出入りしてるし、最前列でお祈りしてる人も多いです。
と、最前列でお祈りしていた人たちを相手にしていた神父様? が、わたしたちに気が付いたようです。
突然、跪き両手を交差して胸の前に持ってくる天光降教の礼をとってきました。
神父様の突然の礼に驚いた信徒たちは、その原因となったモノを探しーーすぐさまわたしに気が付きました。
そして神父様とわたしを交互に、何度かその視線を行き来させて、疑問の顔のまま神父様と同じく天光降教の礼をとったのです。
ぬぉっ。
拝まれてます。
日本みたいに両手を合わせてなむなむってカンジじゃないけど、拝まれてます。
めっちゃ拝まれてます。
あなた達、よくわかってないでしょう?
とりあえず神父様が礼をとったから、まねっこしたんでしょう?
集団から面と向かって拝まれるのは、ちょっと怖いんですけど?
そのうち、その様子を見ていた周りもざわざわと騒ぎ始めちゃいました。
ちょーーやめてよ。
平平凡凡なわたし。
生まれ変わっても村娘Dなわたしは大勢の人に見られるのは得意じゃないんです。
ーー逃げちゃいました。