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お付きの修道女が出来ました。

 よくわかりませんが、わたしは聖女だそうです。


 いやいやいや。

 おかしいでしょう?

 なんで、平平凡凡なわたしが聖女よ?

 魔法使いの数が少ないってのは知ってますが、物凄く少ないってわけでもないでしょうに、なんでわたしを聖女と祭り上げますかね?


 一体何故こんな事になっちゃったのでしょう?


 原因を考えてみます。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 わたしはマール村と言うところに住んでいました。

 わたしを、故郷であるマール村からこの王都に連れて来たのは、ロッソ・アンダーソン様と言う騎士様。

 騎士様が言うには、王都にいる偉い人がわたしに会いたいという事みたいです。


 王都のでっかい教会に連れて来られたわたしは、小さな部屋に案内されて色々な人に会わされました。

 たぶん、司祭とかそういう人たちです。

 何人か入れ替わり立ち替わりしていて、その度に怪我人が連れて来られました。

 ずいぶん怪我人が多いのですね。

 ああ、王都って事は首都って事でしょうから人がいっぱいいるでしょうし、その分怪我人も多いって事ですね。


 人が入れ替わる度に何だか、来る人の衣装が段々と立派になっていく気がします。


 すげぇ…

 派手です。

 ばりゴージャスな人来ました!


 教会の関係者という事は分かります。

 シルエット的には今まで来た人と似てる法衣? ってヤツっぽいし。

 でも、縦に長い帽子かぶってるし、着ている衣装もいろんなところに刺繍やらなんやらが施されています。

 白地の生地に白糸での刺繍だから、色的には目立たないけど、他にも同色系の糸や生地、小物とかが張り付いてるからゴージャスです。


 あー…ほら、あれよ。

 大司教とか大司祭とかそんなカンジの人。


 また、怪我人を治してって事ですね、わかります。


「元気におなりー」


 わたしの手の平が薄ぼんやりと淡く桃色に光ったかと思ったら、怪我人の患部がきらりきらりと金色と銀色の粒子みたいなので覆われて、そのまま粒子が立ち上り、空中で儚く消える。

 怪我人はすっかり元気になる。


 目ん玉ひん剝かれました。

 固まってしまいました。

 まるで氷ですね。


「おわりー」


 いつまでもこのままではいけないでしょうから声をかけると溶けました。


「初めまして。私はレヴァン。レヴァン・ベルヌーイと申します。お嬢さん、お名前をお聞きしてもよろしいかな?」


 怪我人だった人が部屋から出ていくと、ゴージャスな人は膝を落とし、わたしに自己紹介をしました。

 おお、子供に声をかける時に、膝を落とし子供と目線を合わせるのは子供を怯えさせないテクニック。

 それが出来るとは、好感が持てますね。


「ミリィ」


 わたしも自分の名前を言いました。

 すると、レヴァン様はがばりと一瞬にして土下座しちゃいました。


 ちょーー…え?

 いきなり土下座? えー…ヒクわー。


 いきなりの土下座にわたしはびっくりです。

 そういえば、土下座と平伏って何が違うのでしょうね?


「ミリィ様。天光降教(サン・レイ)一同、貴女を聖女としてお迎えさせて頂きたくーー」


 レヴァン様はそう言いました。


 こうして冒頭に戻るわけです。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 えーと…

 よくわかりませんが、わたしは聖女だそうです。


 いやいやいや。

 おかしいでしょう?

 なんで、平平凡凡なわたしが聖女よ?

 魔法使いの数が少ないってのは知ってますが、物凄く少ないってわけでもないでしょうに、なんでわたしを聖女と祭り上げますかね?


「あ、あのぉ…」


「お願いいたします!」


 突然そんな事言われてもわたしとしては困っちゃうわけです。

 村にはお母さんや、お父さん、お兄ちゃんだって居ます。


「村にはお母さんとかーー」


「マール村へは人を向かわせ、ご連絡差し上げます」


「でも…」


「きちんとご納得していただけるよう、手配いたします」


「お母さんとか、お父さんにはーー」


「そうそう頻繁に、と言うわけにはまいりませんが、マール村にお戻りになって構いません。ご家族をこの王都にお呼びしてミリィ様に会っていただいても問題ございません」


「そんなお金…」


「全て教会でご用意させていただきます」


 言い返せません。

 わたしは1も言わないうちから100くらい返されそうな勢いです。

 これは、あれでしょうか?

 詰んだというやつ。

 偉い人っぽいから言い合い、話し合いとか慣れているんでしょう。

 コムスメなわたしじゃ勝てません。

 いや、幼女か。

 どうやら、悪い様にはされなさそうっぽいのが救いでしょうか。


「う、うん」


「おお! 感謝いたします!!」


 うなずいたわたしにレヴァン様は満面の笑顔で喜んでいます。


 こうなると後は早いです。


 お疲れでしょうからまずはくつろげる場所をさあささあさと、連れて来られたのは立派な家具や調度品が立ち並ぶお部屋でした。


「客間で申し訳ございませんが。至急ミリィ様のお部屋をご用意させますので、それまではこちらでおくつろぎ下さい」


 レヴァン様はそう言いますが、とんでもありません。

 前世? も合わせてこんな高級な部屋なんて見た事ありません。

 有名ホテルのスイートルームとかそんなカンジです。

 行った事無いからわかんないけど。


 と、そこで部屋の片隅に1人の女の人がいるのに気が付きました。


「はじめましてミリィ様。ミレッタ・スティールと申します」


「はじめまして。ミリィです」


 ミレッタと名乗った女の人にわたしも返します。


 うーん…20歳くらい?

 王道中世ヨーロッパっぽいから人間もまんま、外人なのですよ。

 女の人でも、日本人より彫りが深いから年がよくわかんないなー…


 ミレッタ様は黒のワンピースにセーラー服のカラーをでっかくした様な白襟、袖口も大きく幅を取った白袖。ベールを被って首には小さな小物を下げている。

 ロザリオともちょっと違って頭の部分が輪っかになってるアレ。ほら、ツタンカーメンとか持ってそうなヤツよ。

 分かんないからとりあえずロザリオって事にしておきましょう。

 ロザリオだけがちょっと違うけど、まんま『ザ・修道女』ですね。


 これまた初めて生で見ましたよ、修道女。


「彼女は天光降(サン・レイ)教の、ここ天光降(サン・レイ)大聖堂でお勤め中の修道女でしてな。ミリィ様もこんなじじい相手よりは、同じ女性の方が何かと気安いでしょう。ミリィ様のお世話を申しつけました」


 やっぱり修道女でした。


「大聖堂内には侍女(メイド)はおりませぬゆえ、その代りでございます」


 はー…

 侍女(メイド)の代わりですか。

 すごいですね。

 村では村娘Aどころか、更にモブの村娘Dあたりだったのに、聖女ですよ?

 ずいぶんと良くしてもらってるようです。

 村には村長さんの所にも侍女(メイド)さんなんていませんよ?


「では私は一旦退出させていただきます」


 エヴァン様はそう言って部屋から出ていきました。


「聖女様のお世話など光栄です! 精一杯お世話させていただきますので、なんでもお申し付けください!」


 うおおおお…

 すげぇ…

 すっごい嬉しいんだろうね。

 きらきら笑顔です。

 村娘Dにナニを期待してますか…


「ミレッタ様。わたしの方こそよろしくお願いします」


「ミリィ様。私に様づけは必要ございません。ミリィ様は私などよりずっと尊い聖女様なのですから」


 うーん。

 やりづらいです。

 がちがちに緊張してるわけじゃないようですけど、一々に態度がかしこまり過ぎです。

 何だかよく解んないうちに聖女にさせられましたけど、中身村娘Dにそこまでかしこまらなくても…

 とは言え、あの偉い人っぽいレヴァン様から、わたしの世話を言いつけられたのだから、わたしを呼び捨てにしたり適当な対応をしたら彼女が叱られちゃうのかもしれません。

 ここはわたしが折れましょう。


「えーと…じゃあミレッタ。よろしくね」


「はい!」


 わたしにお付きの修道女が出来ました。

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