1.5話 エルデアおとぎ話
【エルデアおとぎ話:グリティシア姫】
むかしむかし、あるところにグリティシア(*1)姫というそれはそれは美しく、かわいいお姫さまがいました。きらめく桃色の髪は、とても愛らしくみんなに愛されていました。
グリティシア姫には好きなひとがいました。もっとも古く、歴史ある国といわれるエルデア(*2)国のラスティ王子です。きれいな真っ白の髪の、とても優しい皆の憧れの王子さまでした。
しかしラスティ王子には婚約者がいました。贅沢のかぎりをつくし、ラスティ王子にちかづくお姫さまはようしゃなく殺してしまうという、血の色に染まった髪の、おそろしい魔女でした。かわいそうに、ラスティ王子は婚約者が魔女ということをしりません。
「できることなら教えてさしあげたいわ」
グリティシア姫はかなしみにくれました。諦めるしかないと何度思ったことでしょう。しかし、グリティシア姫のラスティ王子を思う気持ちはそう簡単に消えてくれませんでした。
そんなとき、グリティシア姫にとって夢のような人物があらわれます。それは森のなかに住んでいる歳をとった魔女でした。
「グリティシア姫という名前にふさわしいものをやろう」
歳をとった魔女は悲しみにくれるグリティシア姫にふしぎな赤、白、桃色のひもをくれました。赤と白だけ固くむすばれています。
「これであんたの夢が叶うだろう」
なんと、それは運命を変えることができるひもだったのです!
グリティシア姫はたいそうよろこびました。これで王子を救うことができるのです。
グリティシア姫はさっそくためしてみることにしました。しかし赤と白のひもをほどこうとするとうまくいきません。
そこで庭師を呼び、ちょきんと切ってもらいました。すると赤と白のひもは簡単に切れてしまいました。
そして桃色のひもを白いひもに結び付けました。するとふしぎなことがおこりはじめました。たちまちグリティシア姫の美しさが評判になってやがてラスティ王子の耳にもとどくようになり、王城からパーティに招かれたのです。
そしてグリティシア姫は王城でひらかれるパーティに行きました。なんてことでしょう、たくさんのかわいいお姫さまの中からグリティシア姫だけがラスティ王子の目にとまり、いっしょにダンスを踊ることになりました。魔女はうらめしそうな目でグリティシア姫を見ます。
「ああ、かわいそうな人。人を愛するがゆえにゆがんでしまったのね」
今にもグリティシア姫におそいかかりそうな勢いです。しかし、勇気のあるグリティシア姫はダンスを踊っているときにラスティ王子にそっとささやきました。
「あなたはだまされています」
ラスティ王子は最初、本当かどうか迷っていましたがグリティシア姫の真剣な目をみて信じたようでした。すぐにラスティ王子は兵に魔女を捕まえさせました。
「兵よ!あいつは魔女であると判明した!ただちに捕えよ!」
魔女は違う、違うとわめきながら連れていかれました。
そしてあっというまに裁判にかけられました。すぐに死刑となり、水の刑に処することがきまりました。
そして魔女は死に、グリティシア姫はラスティ王子と死ぬまで幸せに暮らしました。
*1:名前の由来はgrity(勇気のある)から来ているとされる
*2:古くからあった国のためelderが語源という説がある
魔女は皺枯れた声だったんだってさ。殴られてたかどうかは知らないけど。