7:14年目・18歳
負けた。
負けた。負けた。負けた。
一つの掠り傷すら負わせることも出来ず、あっさりと、簡単に、組み伏せられた。
イノリアは、知っていたのか。
あいつが一番になる事を。
大丈夫だと言ったその口で、作っていた笑みは、俺を嗤うものだったのか。
違うとは分かっていても、思考は延々と無限にループする。
どろどろとした行先の無い思いは凝り固まり、黒々とした塊になって心を押し潰そうと重量を増していくから、だから。
「……お前には分からない」
口が勝手に言葉を紡いでいく。
思っていない。
俺はそんなこと、思っていない。
……思っていない、はず、なのに。
「こんな、山奥で! しかも四六時中工房に閉じこもって、誰ともかかわろうとしない! そんなお前には、分からないだろ!!」
次々と発せられる言葉は、イノリアを傷つけようとする意志が明確に窺える。
思っていない、考えていない事を、言える訳がない。
だとすると、これは俺が思っていた事?
こんな、こんな事を。
イノリア、に?
「優しいものにばかり包まれて、人の悪意に触れた事はあるか? 傷付けられた事は? 傷ついた事は? 無いよな、だって、お前、いつもへらへら笑ってるんだもんなあ!」
ああ、やめろ。
やめてくれ。
お願いだから。
もうこれ以上は――
「……お前を信じてた、俺が馬鹿だったよ」
馬鹿は確かに俺だ。
信じてたんじゃない、依存していたんだろうに。
よくもそんな事をぬけぬけと。
最初から最後まで裏切ってくれた自分自身の体を、無理矢理動かして、工房を飛び出す。
これ以上顔を合わせているなんて出来なかった。
これ以上、酷い言葉を投げかけるなんてしたくなかった。
結局のところ、それは全て、逃げでしかないのだけど。
最後の最後、終始驚いたように目を見開いていたイノリアの目が、何かで揺れたように感じた。
それを確認する事は、きっと二度とないだろう。
後二つで本編終わりです。
語彙の豊富な口喧嘩をしたことが無い&眠いせいで、物凄くちゃちな台詞の喧嘩となっております。
喧嘩っていうか、ロニーが一方的にいちゃもん付けているだけですね、これ。
良いのかこれが主人公で。
計画性って大事ですね、次回気を付けます。
とりあえずどうあがいても間に合いそうにないので、EXは完結設定後、ちまちまと投下します。
元が蛇足なので、お許しくださいませ。
2014/01/23 投稿