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ミスリル  作者: 紺野 柚季
本編
2/14

1:8年目・12歳

話数変更。

EXが3話になります。

住んでいる町とは段違いに雪が積もっている、叔父さんの住む山中の村。

8年目にして何となく分かるようになった道を、ざくざくと雪を踏んで、あいつ――イノリアの家へと歩く。

本当は走って行きたいけど、もう12歳なのだから落ち着きを持て、と母さんに言われたばかりだ。

それに、毎年走って転けて、雪塗れになってイノリアに笑われているから我慢する。


叔父さんの家へは母さん達が行っているから、俺は後でも良いだろう。

いつもの事だし。

そんな風に考えながらひたすら早歩きしていると、横から声をかけられた。


「おや、ロニー坊じゃないか」


聞き慣れたその声は、イノリアの義父でもある村長さんのものだった。

イノリアに聞いた話ではお祖父ちゃんと言った方が良い年齢らしいけど、無駄に若々しい。

だからか、イノリアのお父さん、も、イノリアのお祖父ちゃん、も何だかしっくりこなくて、普通に村長さんと呼んでいる。


「村長さん久し振りー!」

「急いでるなあ。あの子なら工房に居るよ」


一応は立ち止まって返すと、村長さんは面白そうに目を細めて、笑い混じりにイノリアの居場所を教えてくれた。

少し恥ずかしい気持ちになりながらも、素直にお礼を言ってまた歩き始める。

イノリアの家と工房は少し離れていて、柵やら何やらのせいでぐるぐる回る羽目になる事もあるから、さっきの言葉自体は助かった。

言い方はどうかと思うけど!


村の丁度真ん中辺りで右に曲がって、しばらく進んだら、今度は左。

適当に建てたとしか思えない家の並び方で道がぐねぐねしてるけど、大体そんな感じで、イノリアの工房――この村唯一の鍛冶屋につく。

両開きの扉の周りだけ深く積もった雪が溶けていて、緩やかなスロープになっている所を慎重に降りる。

一番最初に来た時、ここだけ雪が積もらない事に首を傾げた俺に叔父さんが教えてくれた事だけど、特別に魔法をかけているらしい。

しかも三重。

一つ目は、雪除け。

二つ目と三つ目は、防犯。


『魔力を持つ人間は少なく、また人間の魔法は効率が悪い』

と叔父さんが言っていたから、これって多分凄い事なんじゃないかと思う。


「イノリアー!」


工房に向かって大声で呼びかける。

二つ目の魔法によって、この扉はイノリアと、イノリアに許された人しか開けられない。

入って良いですよー、というお許しは半年で消えるから、俺は毎年開けて貰わなければいけない。


「ロニー?」


きぃ、と音を立てて開いた扉からひょこりと姿を現す、一年前と全然変わっていないイノリア。

イノリアは微かに首を傾げ、淡い紫の目を細めて、怪訝そうに訊ねてきた。


「そうだよロニーだよ。何でそんなに怪しまれてるんだよ俺!」

「あ、ロニーだ。ごめん、雪だるまじゃなかったから」


そう言ってふふっ、と笑い、イノリアは宙に一本線を描くように指を動かした。

その瞬間、工房から熱気が漏れ出て来る。

これが三つ目の魔法。

扉の二つをイノリアに解いてもらって初めて、工房に入ることが出来るようになる。


「俺だって学ぶんです、成長するんですー」

「へー、そうなんだー?」

「当たり前だろ、馬鹿にするなよな。毎年毎年、笑われてたまるか」

「だって面白いんだもの。っていうか、気にしてたんだ」


中に入り、その後ろでイノリアが扉を閉める。

工房内は暖かい。というより、外に合わせた格好をしていると暑い。

軽口をたたきながら俺は着込んでいた服を脱いで、長椅子に放っておく。

客用の椅子だけど、冬の半ばの今頃になるとそうそう来ないから問題ない。


「学校はどう?」

「まあまあ」


イノリアの毎年恒例の問いに、今年は適当に返してしまう。

そんな事より、早く話したくてしょうがない事があった。

いや、学校に行っていないイノリアが学校の話を聞きたがるのも分かるから、そんな事、なんかじゃないんだけど、でも。

それ位興奮していた。


「……ロニー、なんかうずうずしてる」


相変わらずイノリアは察しが良い。

俺の態度に怒るでもなく、少し不思議そうに。

でも話しやすいようにか、促すようにイノリアは呟く。


「分かる?」

「うん。ロニーって分かりやすいから」


微笑を浮かべて言われ、うっと言葉に詰まったが、それは一瞬だった。

ほら、分かりやすくうずうずする位だから。

一週間前のテンションを引きずっているという自覚はある。


「あのさ、最近魔物の動きが活発になってる、って話は知ってるだろ」

「うん。お父さんも、村のみんなに気を付けろ、って声かけて回ってたから」

「それでさ、二ヶ月くらい前に、勇者様がその原因を探しに旅に出ただろ?」

「へえ、そうなんだ。それは知らなかった」

「まじでか」


驚いたけど、雪に囲まれているし、仕方ないのかもしれない。

それにこいつ、あんまり外に出ないし。


「まあそれでさ、その勇者様。なんか魔物が多くなっている所に行って、魔物を倒したり色々調べたりしてるらしいんだけど、めちゃくちゃ強いんだって町でも凄い噂になってて」

「ほうほう」

「そんなに凄い人、一回で良いから会ってみたいなーって思ってたらさ」

「んん?」

「この間! つい一週間前に! 町に来たんだよおおぉお!!」

「おぉお!」


俺につられてか、似たような歓声をあげるイノリアに気分が良くなる。

姉ちゃんには鬱陶しがられていたから、余計に嬉しい。

自分だって勇者様を見た時にはキャーキャー言っていたくせに、俺が勇者様の話を家でしていると

『五月蝿いから黙れ』

なんていうのだから、本当に酷い。


「それで?」

「中央から来てる騎士達と、練習試合して。姉ちゃんは広場まで行ったらしいけど、人がいっぱいで俺はちょっと無理そうだったから、屋根に上って見たんだ」

「うんうん」

「もうさ、それがさ、凄くて! 俺んち、広場に近いから結構良く見えるんだけどな、もう、本当、あああ!」

「そんなに凄かったんだ?」

「おう! めっちゃ凄えの! 騎士達をばったばった地面に倒してさ! すっごいかっこよかった!」


途中、言葉に出来なくてつい叫んでしまったが、イノリアはそれさえも汲んでしまう。


「そっか。私も見てみたかったなあ」


なんて。

本当に良い奴だ。

ああ、自分の顔が緩んでいるのが分かる。

今絶対にやけてるよ俺。


「な、残念だったな」

「うん」



そのまま工房内にあった棒で勇者様の戦いの真似をする事、数時間。

痺れを切らした母さんが工房まで迎えに来て、イノリアはまだ仕事があるからと、そこで別れた。


学校の話は、また明日。

滞在期間12日、10日目位の会話


「あー、剣士になりたい」

「あれ、勇者じゃなくて?」

「姉ちゃんに『あんたが? 無理無理』って笑いながら言われた」

「うわぁー……変わらないねぇ……」


姉ちゃんはとにかく酷い。




稚拙な文章で、お目汚し失礼します。


締め切りがあと三日と半日くらいとか……(ガクブル)

間に合わない気がする……


2014/01/20 投稿

2014/02/12 修正

     (EXに合わせて、扉の魔法を教えた人を村長さんから叔父さんに変更)

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