11:EX_XXX年目・???
蛇足そのに。
わたしのパパとママは、とても仲が良い。
どれくらいか、っていうと、すうううぅっごく。
パパはママのあとをよく追っていて、ママもそれが嬉しそう。
もちろんケンカをしてる所なんて見た事ないし、いつもいつも笑っている。
一度、『どうしていつも笑ってるの?』と訊いたことがあるけど、答えはパパもママも、『幸せだから』だった。
『大切な人に逢えて、可愛い大切な子供達に囲まれて。こんな生活が、きっとこれからも続く。これ以上の幸せはないよ』と。
ちょっとよく分からないところもあったけど、二人が幸せだとわたしも幸せで、お兄ちゃんもきっとそうだから、つまりはみんな幸せだ、ってことなんだと思う。
最近は二人とも生まれたばかりの弟にかかりきりだけれど、寂しくはない。
お兄ちゃんがかまってくれるし、寝る時はみんな一緒だから。
あったかくて、安心できて、笑っていられる場所。
わたしの家は、そんなところ。
ね、ほら、幸せでしょ?
* * *
僕の家族は、みんな幸せだ。
具体的に言うと、頭が。
いくら南西部だからって、ここは北大陸だ。
冬が長く、咲く花もそれほど多くはない。
だというのに、父さんも母さんも妹も、年中色とりどりの花が咲いているとしか思えない。
何だよ、11歳にもなって、親に挟まれて寝るって。
意味が分からない。
だけど、一人で寝たい、とは暫くの間は言い出せない。
妹が、確実に、泣く。
最近生まれた弟の世話で、夜中、二人は布団を出る事が多い。
その度に、妹が僕の手を握ってくるのだ。
昼間も前にも増して僕にべったりだし、多分寂しいのだと思う。
正直言って面倒で、鬱陶しいと思うこともある。
けど。
寂しさを弟にぶつけたり、癇癪をおこして解消する、なんて事は絶対に出来ない、脳内お花畑な妹だから。
父さん達みたいに頭のネジが数本どっかにいく事も、あの女王様な双子妹みたいになる事もなく、出来れば、普通に普通に育って欲しいから。
色々と理由を付けてはみるし、どれも本当の事ではあるけれど。
『大切なものに囲まれて、こんな生活が、きっとこれからも続く。これ以上の幸せはないよ』
妹の問いにそんな風な事を言っていた父さんの声と、それを笑顔で肯定していた母さんの表情。
いつもと同じはずなのに、やけに重たく聞こえたそれが、今でも鮮明に思い出せる。
幸せ。
って、なんだろう。
そんな事を考えては、すぐに打ち消す答え。
素直に認めたくないし、何があっても口にしたくなんてないけど。
やっぱり僕も、間違いなく二人の子供だという事だ。
そんな僕の幸せは。
きっと聞いたら喜ぶから、誰にも言わずに、墓まで持って行くつもり。
息が詰まりそうになりながら。
今にも泣き出してしまいそうになりながら。
あの時を境に、その表現は180°意味を変えた。
生きていても良いのだろうか。
こんなに幸せで、本当に良いのだろうか。
――ああ、
幸せすぎて死にそうだ。
11:EX_XXX年目・26歳+α+x
2014/02/09 投稿




