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ミスリル  作者: 紺野 柚季
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12/14

11:EX_XXX年目・???

蛇足そのに。

わたしのパパとママは、とても仲が良い。

どれくらいか、っていうと、すうううぅっごく。

パパはママのあとをよく追っていて、ママもそれが嬉しそう。

もちろんケンカをしてる所なんて見た事ないし、いつもいつも笑っている。

一度、『どうしていつも笑ってるの?』と訊いたことがあるけど、答えはパパもママも、『幸せだから』だった。


『大切な人に逢えて、可愛い大切な子供達に囲まれて。こんな生活が、きっとこれからも続く。これ以上の幸せはないよ』と。


ちょっとよく分からないところもあったけど、二人が幸せだとわたしも幸せで、お兄ちゃんもきっとそうだから、つまりはみんな幸せだ、ってことなんだと思う。

最近は二人とも生まれたばかりの弟にかかりきりだけれど、寂しくはない。

お兄ちゃんがかまってくれるし、寝る時はみんな一緒だから。


あったかくて、安心できて、笑っていられる場所。

わたしの家は、そんなところ。


ね、ほら、幸せでしょ?


* * *


僕の家族は、みんな幸せだ。

具体的に言うと、頭が。


いくら南西部だからって、ここは北大陸だ。

冬が長く、咲く花もそれほど多くはない。

だというのに、父さんも母さんも妹も、年中色とりどりの花が咲いているとしか思えない。

何だよ、11歳にもなって、親に挟まれて寝るって。

意味が分からない。

だけど、一人で寝たい、とは暫くの間は言い出せない。


妹が、確実に、泣く。


最近生まれた弟の世話で、夜中、二人は布団を出る事が多い。

その度に、妹が僕の手を握ってくるのだ。

昼間も前にも増して僕にべったりだし、多分寂しいのだと思う。

正直言って面倒で、鬱陶しいと思うこともある。

けど。


寂しさを弟にぶつけたり、癇癪をおこして解消する、なんて事は絶対に出来ない、脳内お花畑な妹だから。

父さん達みたいに頭のネジが数本どっかにいく事も、あの女王様な双子妹みたいになる事もなく、出来れば、普通に普通に育って欲しいから。

色々と理由を付けてはみるし、どれも本当の事ではあるけれど。


『大切なものに囲まれて、こんな生活が、きっとこれからも続く。これ以上の幸せはないよ』


妹の問いにそんな風な事を言っていた父さんの声と、それを笑顔で肯定していた母さんの表情。

いつもと同じはずなのに、やけに重たく聞こえたそれが、今でも鮮明に思い出せる。


幸せ。

って、なんだろう。


そんな事を考えては、すぐに打ち消す答え。

素直に認めたくないし、何があっても口にしたくなんてないけど。


やっぱり僕も、間違いなく二人の子供だという事だ。

そんな僕の幸せは。

きっと聞いたら喜ぶから、誰にも言わずに、墓まで持って行くつもり。

息が詰まりそうになりながら。

今にも泣き出してしまいそうになりながら。


あの時を境に、その表現は180°意味を変えた。


生きていても良いのだろうか。

こんなに幸せで、本当に良いのだろうか。


――ああ、

幸せすぎて死にそうだ。



     11:EX_XXX年目・26歳+α+x



2014/02/09 投稿

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