0:関係ない人達の会話
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全10話+EX2話予定。
「――ミスリル?」
「うん。知ってる?」
「知ってるも何も……稀少金属でしょ? あの、馬鹿みたいに高価な」
「そうだけど、そっちじゃなくて。御伽噺の方。奇跡を起こす、神秘の宝石」
「あぁ、あの童話の。で? いきなり何でそんな話?」
「ふっふっふー、よくぞ訊いてくれました!」
「やっぱいいわ。答えんな」
「まぁまぁ。実はだね、最近、巷で気になる噂がありまして」
「聞けよ」
「なんと!」
「おい」
「先月、ここの領主の息子が遠征先の遺跡で、ミスリルを見つけたんだって!」
「へー、そう。あ、すみません。アップルパイとガトーショコラを一つずつ。あと、ココアも」
「かしこまりました」
「ちょっちょちょっと!」
「何?」
「ちゃんと聞いてよ……」
「お前に言われたく無いんだけど……」
「聞いてよ……」
「うぜえ……」
「……」
「あー、はいはい、で、続きは? ほら、聞いてやるから」
「聞きたい?」
「いや別に」
「そっかそっかー、そんなに聞きたいのかー」
「うわどうしよう、本当にうざい」
「その見つけたらしいミスリルなんだがね、今月、競売にかけられるらしいのだよ」
「はーん、そう、どうでもいい」
「いやいやいや、どうでもよくないでしょ! ないから! ないよね!?」
「えー」
「えー、って!」
「いや、だってさぁ、仕方ない……仕方ない? あー、んん、やっぱどうでも良いし」
「なんでさ! 気になるじゃんかー」
「どこが?」
「どうしてそんな珍しい貴重なものを売っちゃうのか!」
「でかすぎて邪魔なんじゃない?」
「そんなにでかくないでしょ、宝石なんだから」
「……あー、そうだねー」
「え、何、何なのその反応! 何か知ってんの!?」
「いや、知らないよ。うん、知らない知らない」
「うわ、怪しい……!!」
「! あんたにもその位は分かるんだ……」
「酷っ!」
「あれ、私優しいよね」
「どこが!?」
「は?」
「すっごい優しいです!」
「ね。…………あのさ、諦めな。あんたにはどうせ使えない。手に入れたって、何にもならない」
「え」
「いや、あんただけじゃないか。……だから? なら、元あった所に戻せば良いのに」
「ちょ、何のはな、っていうかどういう意味?」
「お待たせ致しました。アップルパイとガトーショコラ、ココアでございます」
「はい、私です」
「ごゆっくりどうぞ」
「ありがとうございます。……あー、うま」
「無視!?」
「ちょっと、うるさいよ。静かにしなよ、迷惑でしょ」
「ぐっ……い、今更……」
「今更でも大切な事なので」
「うー……」
「しょうがないな、分けてあげるから元気出せ、ほら。静かにな」
「難題だ……でもありがとう……」
冬童話2014
参加作品
冷たく硬い。
2013/12/23 投稿