三話
ここから新作になります。
十年以上たっているので書き方が、たぶん変わっていると思います。
ブックマークありがとうございます。
「 うわぁ、 綺麗 。たまやー!」
青白い小さな光が次々と打ち上がり、消えていく。
おい 、佳也子。 ゴーストが浄化されているんであって、 花火じゃないぞ。
「 ……今宵の不知火丸は血を欲している。 悪霊退散 」
おい、勇者。 その剣はエクスカリバーじゃなかったっか?ノリノリだな。
「 魔王様、そっちに1匹逃げたっす」
シャッカイの視線の先には逃げ出したリッチが。
なんで俺のほうに向かって逃げてくるんだ? もしかして俺が一番弱いと思われてる? まあ 今の俺はかっこいいというより、可愛いからな。
「そろそろおねむなんだ。さっさと潰れろ」
俺は大きな光の矢を放った。
これは家族?旅行の初日の夜の出来事。
遡ること一日。
季節は夏。 暑苦しい日が続く。
もうすぐ俺の5歳の誕生日がやってくる。 幼稚園では年長組になり、来年は小学生だ。
佳也子の腹がだいぶ膨れてきた。来月には俺の弟か妹が誕生する。腹から感じる魔力は日に日に大きくなっている。
魔力が強い子供は生命力が強いので、そっとのことでは流れない。
どちらかと心配なのは佳也子の方だ。産まれる子供より母親のほうが魔力が少ないと 、出産時に命の危険がある。 まあ 俺がいるからには問題はないけどな。
もともとハウスキーパーのシャッカイがいるので、家事は全て任せるように言い聞かせた。シャッカイの作る飯の方がうまいからな。
「 ひどいよ瞳くん 。私のご飯だって美味しいでしょ?」
たまに砂糖と塩を間違うやつの言い分は聞かぬ。
「俺は甘い野菜炒めを断じて認めん!」
庭に設置されたビニールプールで涼みながら、俺は答えた。俺のまわりにはアヒルさん家族がプカプカと浮いている。
その俺の様子を佳也子は文句をいいながら、撮り続ける。
水着はなぜかカエルの着ぐるみみたいなやつ。センスを疑われるに違いない水着だが、着ているのが可愛い俺だからな。可愛いしか勝たん。
しかし、今日も暑い。今年も猛暑になるらしい。地球温暖化というやつだ。
魔王である俺に不快感を与えるなんて、やるな太陽め!
魔法で薄い幕を作り、冷気を循環させてしのぐことできるが、あまりやってない。
俺だけひんやりしてたら、周りすぐにバレるからだ。世間では普通の幼稚園児で通しているからな。
だからといってこの猛烈な不快感を我慢する気はない!
俺はアヒル母さんを手にとり、しばし思考にふける。
「パパ!瞳くんがアヒルさんと見つめあってるのー!早くきてー!」
佳也子の騒ぐ声が遠くに聞こえる。
俺は思考の海から浮上する。
過去の知識から探しだした古の大規模魔方陣を使い、減ったオゾン層かわりのバリアを張ればいけるだろう。
問題は魔方陣が動いたときの発光だ。酷く光る。住宅街でやったら大騒ぎが起きるな。どこか人気がない場所でやる必要がある。夜中に抜け出して、どこかの田舎まで飛ぶか?
ぶちゅう。
俺のほっべに親父がチュウしながら、自撮りしてた。
「瞳くん、ハート!ハート作って」
佳也子が俺にポージングを求めてくる。
俺は無言で持っていたアヒル母さんで、親父の頭を殴る。
だが幼児の力は弱く、ダメージはほとんどなかったようだ。親父は笑顔のままだ。
「瞳くん、照れてるのかい?可愛いね」
照れてねぇー!このチュウ夫婦め!隙あればチュウしてくる危険なやつらだ。
俺はアヒル口を付きだし、不快感を露にした。
「あれ?怒っちゃった?ごめんね、瞳くん。
そうだ!瞳くんの好きなお馬さんに乗りに行こう!パパやっと夏休みなんだよ!佳也子さんも安定期だし、旅行に行こう!明日お馬さんに乗れるからね、御機嫌なおして!」
俺は別に馬好きではない。勘違いしてるな。
ただシャッカイの借金返済のために、競馬で馬に不正をしかけただけだ。
だが旅行は悪くない。人気の少ないところで魔方陣を設置できるからな。
「パパ、自然が多いところがいい」
俺はにっこり笑ってそう答えた。
「じゃあ、アメリカ軍のヘリをチャーターして、また無人島にでもいく?」
だめに決まってるだろ!佳也子が突然産気づいたら、病院まで遠いだろう。適度でいいんだよ。
「だめなのかい?じゃあどこにしようか。お馬さんは外せないし…」
「シャッカイと萌子ちゃんにも場所どこがいいか聞いてみる?」
おい、佳也子。シャッカイは運転手とか雑用係でわかるが、なんで萌子が混じってるんだ。
「人数多いほうが楽しいよね。連絡してみるね」
それから数十分後。
「呼ばれて登場!萌子ちゃんだよーん」
うるさいやつがやって来た。
暇なのか?夏だぞ。青春 しろよ、女子高生。
「前世が男なんだよ?その頃の記憶がばっちり残っているの。ケダモノと恋愛なんてムリムリ」
親父がトイレで席を外しているせいか、萌子はぶっちゃけた。
お前の前世がケダモノなだけでは?そういえば、お前のパーティって女ばかりだったな。ハーレムか?
俺は紳士だったぞ。嫁もいなかったしな。
「なに言ってるの、瞳くん。紳士はプリン盗み食いしないよー」
黙ってろ、元雑用係め。
「なに?美味しいプリンがあるところがいいの?」
戻ってきた親父がそう尋ねる。
「牧場っすね。馬とプリンなら」
シャッカイが萌子の麦茶を台所から持ってくる。
全員そろったようで、ネットであれやこれと行き先を探し始める。
夏休み期間で、突然の旅行だ。安いホテルが空いている訳がない。お高いスイートなら余裕がある。
「ここでいいかな」
タブレットに表示されたリゾートホテルのスイートの画面を親父がトントンと叩いた。
一泊九十万。定員二名だが、お子様の俺も一緒で問題ないらしい。二泊するので、百八十万。さらに萌子とシャッカイ用のセミスイートが一部屋三十万。合計三百万。
「たかっ!」
親父以外が震える。庶民には高級すぎる。同じくホテルのシングル部屋は一泊三万五千円。それでも高いと萌子が騒いでいたのだ。残念ながらそれは埋まっていたけどな。
「そう?この時期でこの値段なら安いほうじゃない?僕が前に泊まった部屋はシーズンオフでも倍はしたよ。旅行費は僕が持つから心配しないで」
のほほんと親父は麦茶を飲みながら言う。
いまいち俺にはその金額がピンとこない。この世界に来てから、自分でお金を払ったことがないのだ。
世間をあまり知らないと思っていた親父はブルジョアだった。アメリカ軍とズブズブの研究所の所長だもんな。
「値段以外問題ないなら、予約するね」
プチプチと予約する親父。その指が動く度にどよめく庶民たち。
こうして旅行が決まった。
旅行初日。
「瞳くん、こっち向いて!」
萌子と親父が俺にスマホ向けてくる。
車で出発してから、ずっと俺の撮影会。
高速の変わらぬ景色に、おねむな俺は佳也子の膝でパタパタと寝返りを打つ。右向きで寝たいのだが、佳也子の大きなお腹に顔があたり、くるりんと左を向く。
「眠れないの?パパのお膝にくる?」
「やっ!」
だって柔らかくないからだ。枕は固いより柔らかくないと眠れない。
「お姉さんのお膝もあいてるよ」
萌子が自分の膝をポンポンと叩いてから、俺に向かって両手を広げる。
む。柔らかそうではある。
だがあそこで寝たら、何か大事なものをなくしそうな気がする。なにせケダモノだしな。
そんな俺の葛藤を察したのか、バックミラーを覗き込んでいた運転手のシャッカイが、左折ウインカーをだす。
「サービスエリアで休憩するっす」
「いいね!ちょっと早いけど何か食べようね」
すかさず佳也子がのった。最近の佳也子の食欲は凄い。二人分だからな。
夏休み中のサービスエリアはめちゃくちゃ混んでいた。
迷子防止のためにシャッカイに抱っこされ、おトイレに。俺達を会う人、会う人達がやたらとじろじろと見てくる。
俺が可愛いからかと思ったが、皆ヒソヒソなにやら話しているので違うようだ。
その理由がわかったのは、トイレの大きな鏡を見たときだ。
タンクトップ姿のチャラチャラした金髪のヤンキーと、小さなコウモリ羽を背に着けた小悪魔ファッションの愛らしい幼児。
どうみても誘拐犯と誘拐された子供みたいじゃないか?通報されないか?
急いでトイレ済ませ、佳也子たちと合流した。
人混みのなか、スマホで連絡を取って佳也子たちと合流すれば、ちゃっかりと大量の食料とテーブルを勝ち取っていた。
まぁ見るからに妊婦な佳也子に遠慮して、空けてくれたのだろう。
「この先ちょっと渋滞してた。早めに休憩とってよかったね」
サービスエリアの渋滞電光掲示板を確認してきた親父が、俺の好きなトルネードポテトをかじる。
「パパ!」
「あ、どうぞ」
恭しく食べ掛けのトルネードポテトを俺に献上する親父。佳也子に奪われる前にと、俺は急いで口に運んだ。
「もともと渋滞予測をしてたから問題ないよ。お昼には牧場に着くからね」
「それにしても暑すぎだよ」
暑さにだらける萌子。安心しろ、俺がなんとかしてやるから。
世界を魔王が救う。勇者じゃないとこらがミソだな。
「暑いときにはソフトクリームだね」
シャッカイが新たに買い出ししてきた、ソフトクリームを受け取る佳也子。
「えっ!私も狙ってたんだけど。じゃんけんしよっ!」
「いいよ。負けないよー」
勇者、お前腹黒いな。じゃんけん勝負にしたら佳也子が勝てるわけない。いつも最初にパーを出すからな。なぜか本人は全然気がついていないけど。
「……負けた」
見慣れた佳也子のうなだれた姿。すかさず、親父がソフトクリームを買いに走る。おなかが冷えるからほどほどにな。
その後、佳也子たちがトイレ休憩をとりに行っている間に、シャッカイが職質された。
誰だよ、まじに通報したやつ。
職業聞かれてハウスキーパーって言ったら、何度か聞き返されていたよ。男のヤンキーのハウスキーパーは珍しいからな。意外と料理がうまいって俺はフォローしてやったよ。
気を取り直して出発。
すぐに渋滞に突入したので、おやすみなさい。
おはよう。
寝ている間に散々おもちゃにされた俺です。寝ている間の出来事は、気にしないことにしている。精神的にやられるから。だから、俺にその動画を見せようとするな!
牧場はまぁ普通だった。特に馬好きでもないしな。
せっかく来たので馬に乗せられ、牛を撫でさせられた。
プリンは旨かった。土産用にも買ってもらったくらいだ。
サービスエリアで軽く食べていたので、お昼はおそめにとる。昼飯は俺の好きなハンバーグが有名な高原のレストラン。
ブランドの高原牛を百パーセント使った、肉汁がプシャーと出てくるジューシーなハンバーグ。
付け合わせのマッシュポテトと甘く煮たニンジンのグラッセは大好物。ブロッコリーは要らなかったな。好き嫌いはだめと言われ、食べたけど。
パンも焼きたてのバケットで、パリパリ。クリーミーなバターがまたうまい。
最後にデザートはケーキ型のかき氷。これ、最新の流行りものだ。テレビで見たぞ。
イチゴと生クリームで可愛くデコレーションされている。氷は桃味を選んだので、生地部分の氷は薄い黄色。
ナイフで切るとなかにはゴロゴロと大量のフルーツ。そして生クリームが入っていた。
一人では食べきれないので、ハンバーグは半分だけ食べて、残りはよく食う佳也子行き。かき氷は親父と半分こした。うまうまだった。
大満足の昼食だった。最初にメニューの値段を見て目をまわしていた萌子も、今は笑顔だ。
そして今日は早めのチェックイン。このリゾートホテルはいろんな体験コーナーがあり、そして大きなプールもある。ホテルの中だけでも結構遊べる。
ホテルの降車口に車を止めると、ホテルの人がきて荷物をおろしてくれた。車も停めてくれるらしいので、そのまま全員でロビーに移動する。
ロビーはなんかキラキラしてた。たぶん。
ほぇーっと間抜け顔で呆ける、萌子の顔のほうが印象的だった。
流れるようにスイートルームに案内された。
部屋は全体的にライトブルーで統一されている。
ホテルマンがいなくなったら、探検開始だ。
大きなソファーが置いてあるリビング。広いダイニングにキングサイズのベッドがある寝室。あとはお風呂とトイレ。
リビングにはシャンパンクーラーにシャンパンと、果物が置いてある。
「値段分の広さだからあまり広くないね。ところでさっき食べたから、夕飯は遅めにしないとだめだね。夕飯はホテルの料亭だけど、予約を遅くできるか確認するね」
「……広くないだと?」
フロントに電話で確認している親父を呆然と見つめる萌子。俺も別に狭いとは思わない。
しかし、今日はお値段爆弾に当たりすぎだぞ、萌子。あ、シャッカイも自分の泊まる部屋のカードを持って、ふるてえる。大丈夫だ。セミスイートはここより狭いぞ。
「シャッカイの部屋にもたぶんシャンパンあるぞ。萌子はのめないから、ないかもな。一旦覗いてこい。荷物置いたらまた来ればいいさ」
俺に勧められて、二人は出ていった。足取りが若干怪しかったが。
「うわー、プール大きいね。入れないのが残念」
いつの間にベランダに出ていた佳也子が、下を見下して言った。
「食休みで寝てろ。俺は暑いからプール行くけどな」
「ずるーい」
「なら萌子とシャッカイとで行くから、親父とデートでもしてろ」
「デートかぁ。いいね!」
ハイハイ。勝手にラブラブしてくれ。
落ち着かない様子で帰ってきた二人と俺はプールに向かう。プールに子供用ミニプールがあることは確認済みだ。
だが今日は浮き輪を使うので、大人用にいく。
萌子に膨らましてもらった浮き輪で、プカプカとプールに浮かぶ。
すでに夕暮れ間近で、他の客は夕飯に行っているようだ。今は俺達しかいない。プールサイドに明かりがともる。
「おい、今晩抜け出してやることがある。協力しろ」
「何するのよ」
「地球を覆う大規模バリアを貼る。これで暑すぎる夏とはおさらばだ」
「そんなことできるんっすか?」
「魔力足りるの?」
「俺を誰だと思っている。魔王だぞ。まぁ分厚いのは無理だが薄いのなら可能だ。
三、四十年前くらいの気候に落ち着くはずだ。それならそこまで暑くないだろう?ここ最近の異常気象からオサラバできれば十分だ」
「凄いね。魔王ってそんなに凄かったんだ。アッサリ倒せたから知らなかった」
「そりゃ、不意打ちされればな。人の国と別に戦争してたわけでもないし、警戒してなかったさ。
お前、普通に門番に案内されて、俺の部屋まで来ただろう?挨拶しようとしたら、ブスッてやられたし」
「すんません。俺が勇者を案内したせいで、魔王様が……」
シャッカイが深々と頭を下げる。
お前、ここプールだから。顔が水に沈んでるぞ。
「本当にすみませんでした」
萌子もブクブクしてるな。
お前らどこの芸人だ?面白いじゃないか。
しかし、粘るな。どこまで我慢するんだ?
死なれても困る。
俺は水魔法を二人のボディに当てた。
それに驚いた二人が勢いよく顔を上げ、ぜいぜいと酸素を取りこむ。
「でかい貸しにしとく。そのうち返せよ。それでその話は終わり。旅行は楽しむもんだぜ」
「……ありがとう。それで何を手伝えばいいの?」
「足と見張りと除草だな。どこか人気のない場所で大きな魔方陣を地面に書く。そのための準備の手伝いと見張りな」
「「了解」っす」
話がついたので、プールを上がる。シャワーを浴びてから晩飯だ。
晩飯は和食。
先付は卵豆腐と叩き餡。叩き餡は魚のすり身をお団子にしたもの。小鉢に入っているので、するんと食べられる。
椀はハモのお吸い物で、お造りはサーモンと鯛。
これは佳也子に全部あげた。好き嫌いじゃなくて、腹いっぱいになったら、メインが食べれなくなるからだ。
揚げ物は夏野菜と穴子の天ぷらで、焼き物は鮎の塩焼き。
鮎と天ぷらは少しだけ食べた。鮎はふわふわで、天ぷらはサクサクして美味しい。
そしてメインの高原牛のステーキ。ご飯は鳥の炊き込みご飯だ。ステーキは柔らかくてうまかった。
最後に炊き込みご飯をかっこむ。だしがきいていてうまい。
俺の分も食べた佳也子は御機嫌だ。親父とのデートも楽しかったみたいだ。
満腹感でさくっと早めに寝てくれないかな。
そうしたら早めに出掛けられるしな。
食べ終わったら、俺らの部屋で人生ゲーム。
佳也子、ボードゲームは旅行先に持っていくもんじゃねーだろ。せめてトランプとかじゃないの?
トランプもあるって?
……それは明日にしろ。
人生ゲームはまぁまぁ盛り上がった。
政治家の親父が一位で、フリーターの佳也子がビリ。
僅差でビリをまぬがれた俺は漫画家だった。マイナスマスしかないゲームかと疑ったぜ。
「もう一回、もう一回やろう!」
まだまだ遊び足りない佳也子。俺は萌子をチラリとみる。
「明日もあるし、今日は早く寝ようよ。ねっ」
俺の意図をくんだ萌子が佳也子を説得する。
「萌子ちゃんがそんなこと言うのって変だねー。やっぱりなんか隠してるでしょ?仲間外れは駄目なんだよー!」
「そ、そんなことないよ。ほら、妊婦はしっかり寝ないと!」
目が泳いでいるぞ、萌子。人選ミスだったか。
「なんでそんなに寝かそうとするの!わかった、どこかに出かけるんでしょ」
じっと俺をみつめて佳也子は問う。
こいつなんでか変な勘だけはいいんだよな。こうなったら意地でも寝ない。
俺はさりげなく睡眠魔法を佳也子と親父にかける。
親父はすとんと眠りについたが、なんでか佳也子に抵抗されて失敗。
馬鹿な。弱めの魔法だったが、佳也子には防げないはず。じっと佳也子を見ると、腹から魔力を感じる。
そうか、お前が抵抗したのか。
強い魔法は妊婦にかけたくない。仕方ない。
「シャッカイ、親父をベッドに。でかけるぞ、佳也子」
「はーい」
予定外の佳也子も連れて、俺達は夜の高原に出かけた。
車は人気の少ないほうへと走っていく。
「瞳くん、星が綺麗だね」
開けた車のルーフからのぞく星空を見上げて、嬉しそうに佳也子は笑う。
人里から離れたので、空に浮かぶ星々がくっきりみえる。空に吸い込まれそうだ。
「圧巻だな。そろそろここらでいいか。みんな降りろ」
車のライトが当たっている草むらへと移動する。
私有地だろうけど、地球のためだ。ここの草むらをはげにさせてもらう。
「やれ」
俺がそう指示すると萌子が、体の中から聖剣を取り出した。すぐにそれの形を鎌に変えて、草刈りし始める。
鎌は小さいやつではなく、死神が持ってそうな大鎌だ。それをブンブンと振るって、草をかっていく。
シャッカイは自分の影に向かって腕を振り下ろす。
影の中からボコボコと中型犬のような影が複数生み出される。
シャッカイが更に手を振ると、シャドウハウンド達は散らばって走り出した。人がこないかを確認する監視要員だ。その後は萌子と一緒にシャッカイは風魔法で草刈りに励む。
俺と佳也子はそれを見守るふりして、満天な星空を堪能していた。
ガッ。
なんかでかい音が聞こえた。萌子のところだ。
鎌で草むらにあったなにかを倒したようだ。
「石に当たったみたい」
三十センチほどの大きな石が真っ二つになっている。
「邪魔だね。壊すか」
萌子は両手でそれぞれ割れた石を持ち、魔力を込めて木っ端微塵に吹っ飛ばす。石であったものは細かい砂状になり、土に紛れた。
「ん?なに?」
その石が置かれたところから魔力が吹き出し始めた。
『ケケケケ』
魔力が形を変えていく。それはおどろおどろしい気配をまとったスケルトンになる。
「骨?」
「なんだスケルトンかよ、驚かせやがって」
「なんか墓でも壊したんすか?」
『………』
俺たちの反応が予想外だったらしく、黙り込む骨。
「キャー!瞳くん、早く逃げなきゃ」
わたわたと佳也子だけが慌てる。
その反応に満足したのか、またケケケケと笑い始めたスケルトン。やつがバッと腕を上げると魔力が放出され、数十体のゴーストが現れる。
「うきゃああ!」
ゴーストに取り囲まれて更に慌てる佳也子。
「佳也子、落ち着けよ。ふうん。魔法使えるからスケルトンじゃなくて、リッチかよ」
「ねぇ、うざいからやっていい?」
萌子は大鎌を聖剣に戻して俺にきく。
「さくっとよろしく」
「はーい。刀の錆びにしてくれてやる」
錆びにならんだろうに。
さくっと無造作に、一匹のゴーストを萌子が切り捨てた。聖剣は悪霊系に強いからな。なにせ聖剣だし。
切り捨てたゴーストが青白い光になって消えていく。浄化されたのだ。
『ケケケケ?』
カクンと首を傾げるリッチ。
「うりゃあぁ」
踊るように次々とゴーストを倒していく萌子。
慌てておかわりのゴーストをリッチが召還するが、あまり意味をなさない。
「 うわぁ、 綺麗 。たまやー!」
青白い小さな光が次々と打ち上がり、消えていく。
おい 、佳也子。 ゴーストが浄化されているんであって、 花火じゃないぞ。
「 ……今宵の不知火丸は血を欲している。 悪霊退散 」
おい、勇者。 その剣はエクスカリバーじゃなかったっか?ノリノリだな。
「 魔王様、そっちに1匹逃げたっす」
シャッカイの視線の先には逃げ出したリッチが。
なんで俺のほうに向かって逃げてくるんだ? もしかして俺が一番弱いと思われてる? まあ 今の俺はかっこいいというより、可愛いからな。
「そろそろおねむなんだ。さっさと潰れろ」
俺は大きな光の矢を放った。
光の矢はリッチの頭部にめり込むと、そこで爆発し、リッチも木っ端微塵に。
ま、たかがリッチだ。やっぱり大したことなかったな。
ゴミ処理は終わった。あとは魔方陣を描いていけばいい。複雑な文言を魔方陣として組み込みながら描いていく。
「これでよし。後は魔力を魔方陣に送って…」
俺は魔力をガンガン魔方陣に送り込む。俺の魔力を吸い込んだ魔方陣が輝き始める。
凄く眩しい。
それよりも魔力がちょっとヤバいかも。
「ちょっと魔力が足りんかもしれん。お前らも送ってくれ。佳也子は駄目だぞ。魔力量がもともとゴミだしな」
「えー、ひどい」
プンプンと怒る佳也子は無視だ。
しばらくするとシャッカイが離脱する。魔力不足で、魔力を送るのをやめたようだ。
萌子も顔色がどんどん悪くなっていく。
萌子とシャッカイの分足しても、もしかして足らん?計算ミス?俺が?まじか。
「悪い不発になるかもしれん」
「ま?私もう限界。これ以上入れたら倒れる」
もうちょっとだったのに……。もう少し俺が大きくならんと無理か。
諦めかけたとき、佳也子から魔力が魔方陣につぎ込まれる。
「佳也子、なにやって!」
止めようと声を荒げたが、よくよくみると佳也子の腹から魔力が流れている。
またお前か。
俺の振り絞った魔力とそいつの魔力で魔方陣が満たされた。
更に一層光輝く魔方陣。
ドンッ。
光の渦が空に一直線に登っていく。
俺は座りこんでその光の軌道を見つめる。もう裸眼で見えなくなったが、大量の魔力を帯びた光が、地球を一周したことが俺にはわかった。
「……無事バリアが展開された」
「成功したの?なにも変わった感じがしないけど」
「夜だからわからんに決まっている」
「瞳くん、なにしたの?」
なにも聞かされていない佳也子が尋ねる。
「地球を救ったかも知れない?」
「なんで疑問形なのさ。南極に行って、氷山をしこたま作ってくれば更に完璧じゃん」
「そう言う萌子が行け。俺は寒いところに行きたくない。
とりあえず帰ろう。もう眠い」
眠気でぐらぐらと頭が揺れる。
「瞳くん、お疲れ様」
佳也子に抱き上げられ、俺は目を閉じた。
旅行一日目終了です。
次は旅行の続きかそれとも別の話かもしれません。
暑い。暑くて考えがまとまりません。
なので次話は一文字も書いていません。少々お待ちください。




