第1話 プロローグ
初めまして。
この作品は、4人組ガールズバンド Ametiara が誕生するまでの物語です。
音楽に出会い、迷い、葛藤し、それでも同じ夢へと歩んでいった少女たちの青春記録を描いていきます。
まばゆいライトが瞬き、会場は熱気に包まれていた。
暗転していたステージが一斉に輝きを放ち、観客の視線が一斉に前へと注がれる。
その中央に立つのは四人の少女たち。
それぞれに異なる表情を浮かべながらも、ただ一つの方向を見据えていた。
ギターが弦をかき鳴らす。
会場の空気が震え、歓声が弾ける。
ベースが地を揺らし、低音が観客の胸を突き抜ける。
ドラムが力強く刻まれ、リズムが血流のように全身を駆け巡る。
そして、ピアノが旋律を紡ぎ、音は一つの物語を描き出していった。
その音に名前がある。
四人の少女が紡ぐバンド——Ametiara。
リーダーは浅黄悠花。
短く切り揃えた金色の髪を揺らし、ステージの中心でギターをかき鳴らしている。
笑顔は柔らかく、しかし力強く、観客を自然と惹き込む。彼女が奏でる旋律には、どこか異国の風を思わせる自由さがあった。
ベースを抱くのは白鷺刹那。
長い銀髪がライトを反射し、上品な気配を纏うその姿は観客の目を奪う。
その声は澄み切っていて、力強さと気高さを同時に含んでいた。
指先が弦を滑るたびに、重厚な低音が会場を支配していく。
ドラムセットに座るのは黒羽希愛。
黒髪を高く結い上げ、冷ややかな眼差しをステージの奥に向けている。
感情を表に出すことなく、正確無比のリズムを刻む姿は機械のようですらあった。
だが、彼女の一打には確かな熱があり、観客の身体を自然と揺らしていく。
そして鍵盤の前に立つのは碧山紫苑。
緑の髪と眼鏡が知的な雰囲気を漂わせ、指先は迷いなく鍵盤を駆ける。
その旋律は清冽で、どこか張り詰めた緊張感を孕んでいた。
彼女の放つ音は、冷静さと激情の狭間で揺れ動き、音楽に新たな色を添えていく。
観客は叫び、跳ね、涙を流していた。
だが彼女たちは知っている。この景色に辿り着くまで、決して平坦な道ではなかったことを。
——異国で音楽に触れ、帰国後に居場所を探す少女。
——両親の音楽に育まれ、気高さを胸に育てた少女。
——静寂の中に心の鼓動を隠し続けていた少女。
——母の期待に応えるため、完璧を演じてきた少女。
それぞれが抱えていたものは違った。
孤独や迷い、葛藤や諦め。
それでも音楽だけは、彼女たちを決して見放さなかった。
光の下で今、四人は確かに一つになっている。
その音が証明していた。
悠花はギターをかき鳴らしながら、笑みを浮かべて叫ぶ。
「——私たち、Ametiara!」
その言葉を合図に、ステージの熱気はさらに高まる。
観客の心臓の鼓動と、四人の奏でるリズムが重なっていく。
しかし、この輝きに至るまでに、彼女たちは数えきれないほどの遠回りをしてきた。
出会いと別れ。
挫折と再起。
そして、夢を諦めかけた瞬間さえあった。
それでも——。
誰かの言葉に背中を押され、誰かの存在に救われ、また誰かの音に導かれ。
四人は少しずつ、同じ舞台へと歩み寄っていった。
悠花にとっては、海外から帰国して初めて得た居場所だった。
刹那にとっては、幼い頃から抱き続けた「音楽と共に生きる」という誇りを託す場だった。
希愛にとっては、図書室の静寂から再び世界へと踏み出す勇気の証だった。
紫苑にとっては、親の期待ではなく、自らの意志で選び取った初めての舞台だった。
これは、四人が「Ametiara」として歩み始めるまでの物語。
それぞれが音楽に出会い、迷い、ぶつかり合い、やがて同じ夢を見つけるまでの記録である。
ステージの光はなおも眩しく、観客の熱狂は止むことがない。
だが物語は今、ここから始まるのだ。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
次話からは、Ametiaraメンバー4人それぞれの幼少期から物語が始まります。
彼女たちがどんな出会いをして、何を抱えて育っていったのか——ぜひ楽しんでいただければ嬉しいです。