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聖女ライラのほんわかスローライフ1

「皆、これからよろしくね!」


 私の笑顔と呼びかけに歓喜する群衆たち

 ああ気持ちいい


 ここが聖女ライラのほんわかスローライフの世界だって気付いた時に、私の入っているキャラクターに気付いて歓喜しちゃった。

 どうしてこんな事になったのかなんてもうどうでもいい。


 だってヒロインのライラだよ!!ライラがこの世界で臨むがままにスローライフ送れるようにってライラは超優遇されたキャラクターだもの。


 まずは貧しい農家に生まれたライラって設定の数年間は我慢しなくちゃいけないんだけど、どんなに収穫量の少ない凶作の年でも父さんの作る野菜は艶々して大きくってというおかしな現象に気付いてもらえるようにって私頑張った。

 私の聖魔力はその時はまだまだ量でいえば少なめなほうだったから、それでも大変だったわ


 そのおかげで設定よりも早くに噂を聞いた貴族筋の平民が私の事を引き取りたいって打診があって、父さんは金貨2枚に目がくらんで私を養女に出してくれたわ。

 貴族以外の戸籍って曖昧なところがあるからその平民の養女となった私は今度は遠い親戚筋だという貴族から引き取りの打診が来て、そこから貴族の養女になるっていう流れを10歳まで縮めることが出来た。

 10歳で即王太子と出会えるわけないんだけど、私を養女にしてくれた子爵の屋敷に早く移りたかったから。

 私は子爵令嬢としての教育を受けてから王太子と出会えるのよ。

 ゲームでは何にも知らない平民育ちのライラが王太子と出会うって設定だけど、私は一刻も早くより良い暮らしがしたかったから子爵に引き取られたかったのよね。

 子爵の家は他にも子供がいたのだけど、どの子も平凡で大した才能がなかったみたい。

 それだと貴族社会で自分達の存在がただ埋もれていくだけなので、子供で一発逆転を狙っていたみたい。

 残念だけど私の義父も義母もそこまで優秀じゃなさそうだし、容姿だって義父に関しては美人の平民を何代か前に妻に迎えたとかでギリ美形の範囲かな。義母も美人の範囲内だったけれど、高位貴族から見初められるかといえば残念な感じ。

 偶然義父が若い頃ピンクブロンドの髪色だったらしく、今は色あせた藁のような髪色だとしても私がこの子爵の親戚筋の娘だと周囲に紹介されても疑われなかった。

 子爵家には娘がいて義妹となったスザンヌも聖魔力を持っていたけど、聖魔力の力が聖女になれるかどうか少し心配な量しかなかったから、また新しい聖女になりそうな女の子を探して私に辿り着いたみたい。

 本当に運が良かったわ。


 ライラはその力で作物に元気を与える事が出来てライラが手掛ける畑の作物は超一級品だけど、ゲームではわからない苦労が実際に畑に行くとあったわ。


 虫が多すぎてダメ


 畑をどんどん広げて魔属領までライラの畑にしたいけれど、この先の事を考えるとそれはしなければならないけれど畑の管理は全部人にやってもらおうと決めた。


 聖女ライラのスローライフの畑を耕して作物を収穫しちゃうぞって所はこれで終わりにしよう。


 これから美味しいスイーツで私の魅力に群がってくるハイスペックキャラと恋をするんだから



◇◇◇


 15歳になった私は養父母と共に王都に出てきた。

 農家、平民と生活様式が変わって貴族に引き取られた時に感じた贅沢だと思えた生活も数年続けてみるとね、あぁここは貧乏なのねって気付いちゃった。

 初めて着せてもらったドレスにワクワクしたことだってあったけれど、でも既製品のドレスだったのよね。

 私が着るドレスって王都の最高級品のドレスだったはずなのに子爵家だとね・・・3枚程度しかドレスを与えられないし、子供に似あうフリルをたっぷり使ったドレスとか買ってくれないし。

 子爵家の跡取りである長男と貴族令嬢として私を育てる為に必要な私の2人にかかるお金が大変だったみたい。

 義妹のスザンヌは私を引き取ったあとに更に聖魔力が少なくなって成人までにはその能力は失うだろうって話を聞いて義両親はあっさり手放しちゃったのよね。

 義父も子供の頃に少しだけ聖魔力があり萎びた花を元気にさせる程度の能力で10代前半にはその能力も消えちゃったからスザンヌの力が失われたとしても別段驚いた様子もなかったのよね。

 スザンヌは貴族に生まれたくせに令嬢っぽくもない垢抜けない子だって行商に来ていた薬師に金貨4枚で引き取られて行ったわ。

 跡取りさえいれば子爵家は問題ないし、後で知ったんだけど子爵家の領地は作物が今はあまり収穫出来ない貧しい地域で政略結婚にも使えないし、かといって家にずっと置いておけば長男の結婚の時に嫁ぎ先のない妹がいるなんて醜聞になるだろうって。

 国外の遠い親戚の所に養女に出したってことにして、以降存在感のないスザンヌのその後を訊ねる人もいなかった。

 私もスザンヌが消えてくれてよかったと思う。

 子爵家の娘は私一人でいいのよ。


 このゲームはライラが頑張らなくてもストーリーが楽しく進むはずなのよ。

 確かにサムル王国の王太子ルートは頑張らなくってもどんどん進んでいった。

 畑を耕したり人を癒す事に生涯を費やしたくないし、綺麗なドレスと快適な暮らしとたまにスイーツを作るならこのルートでしょ。

 このルートでも聖女として王子に見初められるコースと大聖女として国民に崇められながら王太子妃になるコースがあるのよね。

 聖女として王太子妃になると王宮の中で畑を作り綺麗なドレスを着ることが出来るけれど、王妃や王太子妃よりも崇められる大聖女っていう存在が生涯自分の頭の上にある感じで何だか嫌。

 それだとエレアを倒せば無尽蔵といえる聖魔力を手に入れられるのだし、サムル王国以外の国、そう世界中から崇められる存在になれるのよね。

 ところがエレアがどうにもゲームのように思い通りに動いてくれないのよね


 もしかして私が15歳で養女になる流れを10歳で貴族の養女になるよう設定以外の行動をしちゃったからかな?


 あの薬草イベントまでは上手くいっていたから大丈夫だと思ったんだけど、魔属領に攫われたエレアの元にどうにかして辿り着かないとエレナの力を奪えないじゃない!


 サムル王国の王太子は私にメロメロでなんでも思い通りになったはずなんだけど・・・


 私の聖魔力が最大値になっていないから普通よりは能力の高い聖女って評価だし。


 あの魔属領への討伐までは王族しか立つことが出来ないバルコニーから群衆に手を振ることを許されてたし、王様だってなんでも願いを叶えてくれていたのに・・・


 魔属領の中に入ることが出来ないのだって仕方がないじゃない!あんなに強い結界を向こうが張れるなんて思ってもみなかったし、あんなこと出来るなんて知らなかったわ。

 あんな強力な結界を破る力なんて私にはないし、聖魔力を全部使い切って魔属領に入ったとしてもそんな状態の私じゃエレアとの戦いでエレアを打ち倒す事が出来なくなるじゃない。

 だから国中の教会に散らばっている聖女達や聖女候補を集めて少しでも私の代わりに結界の力を落としてもらいたかったんだけど、国中の聖女の力を魔属領討伐に使う訳にはいかないって却下されちゃうし。

 

 魔属領の魔王や魔人達がサムル王国の存続を揺るがすような行いをしているわけではないから攫われた元王太子の婚約者の救出にそこまで力を入れる必要ないって。


 これには失敗したわ。

 ゲームのシナリオ通りに王太子と出会って直ぐに恋に落ちて、それで王太子が婚約者だったエレアを断罪したのよね。

 まぁ、断罪するようにそそのかしたのは私だけど、てっきりシナリオ通りに事が運ぶと思っていたし。


 だから薬草採りのイベントで魔獣に攫われようにしたし、サムル王国編の王太子ルート通りに私が聖女で王太子が勇者として魔属領討伐に成功するものだと思っていた・・・


 それに魔属領に入って氷の魔石を大量に仕入れないとサムル王国のスイーツ関係がほとんどダメになってしまうし!!

 魔属領討伐前に王都の一等地を王太子に頼んで立ち退きさせちゃってるし、もうスイーツ店をオープンさせるつもりでお店も作ってるし。


 はぁ~上手くいかないわ


 氷の魔石が手に入らなければスイーツ店をオープン出来ないじゃない。

 可愛いフリルのエプロンも発注しているし、可愛い女の子達を採用するつもりで求人も出していたのに。


 果物の仕入れルートだって王太子にお願いして確保してたけれどほとんど仕入れることなく待たせていたらオープンが決まったら連絡下さいって言われちゃうし。

 季節のフルーツを使ったタルトやたっぷりイチゴのショートケーキと言ったライラの得意料理をスイーツ店で披露するつもりだったけれど、このまま魔石が手に入らなければサムル王国は大変なんだって。


 あ~もうサムル王国はいいかな。


 今じゃ王太子も面倒臭いし、顔は良いけれど魔属領討伐失敗してから王宮の中で孤立し始めたって話だし、ここにずっといても全然楽しくない。

 王太子ルートを捨てて別のルートを試してみようかな


 あっ!そういえば隣国の王太子は氷の魔力を持ってたっけ。

 それに妹姫はエレナと同じで聖魔力を持ってたし、あの妹姫を倒せば聖魔力が最大値になったわよね・・・


 氷の魔力を持つ王太子と聖魔力を持つ妹姫か・・・あそこは妹姫がブラコンをこじらせていて聖女ライラと兄である王太子の仲を嫉妬して陰湿ないじめを仕掛けてくるのよね。

 それを討ち返して妹姫を倒して・・・妹姫は修道院に送られゲームからは消えたはず。

 エレナの聖魔力を奪うつもりだったけれど、魔属領に入れない今の状態だとやっぱり隣国の王太子ルートを攻略しておくべきかなぁ


 容姿はどちらも良いのよね。

 サムル王国の王太子の金髪碧眼は王道の王子様顔なんだけど、あっちの国の王太子は寒い国をイメージしてなのか銀髪紫瞳で氷のような冷たい雰囲気がまた素敵だし。


 よし!あっちの妹姫の聖魔力を貰ってしまえば私が最強の大聖女になれるし、それから魔属領を奪えばいいわ

 あっちは氷の魔石が採れるからそれを融通してもらってこっちのスイーツ店に使う事も出来るし、どちらの王国からも私を王太子妃にって求められちゃうけれど、ハーレムルートも悪くないしね。

 

 「ねぇエリック!大量の氷の魔石がどうしても必要だからリザルド王国に行かなきゃいけないの」

 

 「だめだよライラ、そんな事出来ないよ。君はこの国の聖女で未来の王太子妃なんだよ、そんな身分の者が簡単に隣国に行けるわけないよ」


 エリックはそんな事言っているけれど私が余所に行く事が不安なのだろう。

 各国にそれぞれ呼び名は多少違えど聖女のポジションがあり、聖魔力を使える者は男女問わず国の中で管理しているものね。

 エリックだってどうしても私を余所の国に行かせたくないはずだけれど、あっちの国に行ける方法があるのよね。


 私の放つ聖魔力の力を国全体に広げることで聖魔力の結界を作るんだけど、そうなると魔物にとって住み心地が悪くなるからサムル王国から逃げ出していくのよ、それで余所の国に魔物がいきなり増えて被害が出ててるしリザルドも聖女があまりいない国だから困っているはず。


 魔属領の忌々しい結界のせいで私達は魔属領に入れないだけでゲームの流れでは私は一番強い聖女なんだからリザルドで聖魔力の結界を張って魔物を追い立てれるって言えばいいのよ。

 

 ただ今はエレアの聖魔力を奪っていないから国全体に聖魔力の結界を張ることが出来ないけど、あっちで妹姫の聖魔力を奪ってから結界を張ればいいだけだしね。


 「そうね、ごめんなさいエリック、私ったら大好きなスイーツ作りが出来ないからイライラしちゃってて・・・あっ!でも聖女の仕事もちゃんとしてるのよ!魔物の被害がないように私この国全体に聖魔力の結界を張ってるんだ!」


 「さすがは私のライラだな!!」

 尊敬と愛情が混じった笑顔でエリックは私を抱き寄せた。


 「うん!だって私はこの国の大聖女だよ!!」

 本当はまだ大聖女じゃないけれどね。


 「君が僕の婚約者で良かったよ!サムル王国は君という大聖女のおかげで安泰だよ」

 「ふふふっじゃあ私がこの国に結界を張る日はこの国の記念日にしちゃおうか!」

 「それはいいね、早速父上に伝えるよ。魔属領の討伐が成果がなかったから国民の不満もこれで払拭出来るよ!」


 嬉しそうなエリックの様子を見ながらリゾルド王国の王太子の絵姿を思い返してしまう。


 ごめんねエリック、これも私の理想のスイーツ王国を作るには仕方がないのよ。


 魔族領に偵察を何人も送り込んでるけれど全然帰ってこないし、やっぱりこの世界のヒロインである私が動かないとゲームは進まないのかもしれないわね。

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