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異世界転移おじさんの服作り

作者: 百粒

単発です。

今のところ続きは予定しておりません。

「よーし。今日も元気に行ってきまーす!」

 俺は福武創。36歳。

 独身で生きがいは仕事しかないけど、俺には仕事が待ってるから頑張るぞー!

「おや。これは、魔法陣?」

 気がつくと足元に、光の魔法陣的な何かが形作られた。

 そう思った直後、俺はなぜかお城の中っぽいところに立っていた。

 足元の魔法陣も、消えていく。そして眼の前には、俺と似たような魔法陣の召喚で呼ばれたっぽい高校生の男女四人組が、周囲を見回して驚いたり喜んだりしていた。

「え、ここどこ?」

「おっしゃー! まさかの異世界転移だー!」

「え、学校は?」

「本当にあるのね。こういう展開」

「勇者達よ、よくぞ召喚に応じてくれた!」

 突然大きな声を出されたので、俺も学生四人もそちらを見る。

「ワシはこのテキトーウ王国の王! そなたらを召喚したのはワシじゃ!」

 正直急展開すぎるが、一般人の仕立て屋としては何もできることがない。

「勇者として召喚された若者たちよ! それとおっさんよ! そなたらには魔王を倒し、世界を救う力がある! 故にその力を貸してほしい! 見事魔王を倒したあかつきには、褒美として山程の金銀財宝をやろう!」

「ちょっと待ったちょっと待った。状況的に、俺達がなにかと戦う? 現実的に無理じゃないか?」

「そんなことねえよ吉丸! 俺達には超強いチートスキルがあるんだよ! これは大チャンスなんだぜ!」

「チートスキルって、わけがわかんないんだけど。虎二君頭どうかしちゃった?」

「いや、その少年の言う通りじゃ! 鑑定士、早速スキル鑑定を!」

「はっ。私より近くから順に、少年はスキル超勇者。もう一人はスキル超戦士。少女はスキル超魔法使い。もう一人はスキル超僧侶を持っています!」

「ほら、やっぱり!」

「そして一番遠くのおっさんは、スキルアメージング裁縫を持っています!」

 皆が俺を見る。

「さい、ほう?」

「それはどういう、超強いスキル?」

「詳細は不明ですが、衣服を作るスキルでしょう。裁縫や上裁縫の更に上位スキルと思われます !」

 それって、間違いなく俺のことだよな?

「おっさん」

 王様が言った。

「どうやら、なにか手違いで勇者召喚に巻き込んでしまったようじゃ。ごめんね」

 よくわからないが、要するに俺はここでは場違いだったようだ。


 高校生たちと別れた俺は、文官っぽい人に個人部屋っぽいスペースにつれてこられた。

 ベッドや机等はあるが、誰かが使っている様子はない。

「あの」

「気安く話しかけるな! 俺は貴族だ!」

 うわ、めんどくさ。

「すみません。貴族さん」

「ふん。勇者召喚でいらんものが出てきたと噂がたてば王様も不快だろう。しばらくここにいさせてやる。精々役に立つんだな!」

「は、はい」

「即処刑されないだけでもありがたく思え!」

 文官はそれだけ言うと、俺を残して去っていった。

 これ、本当にマジでどうなるんだろう?


 しばらく部屋で待機していると、メイドが一人入ってきた。

「こんにちは。今からあなたを仕立て屋の方々の作業部屋に送ります。ついてきてください」

「あ、はい。ありがとうございます。あ、待った」

「? なにか?」

「スカートが少し切れてる。針と糸があったら直せるよ。送ってもらうついでに、道具があったら俺に直させてくれ」

「あ、いつの間に。はい。ありがとうございます」

 メイドの言う通り仕立て屋の人達がせっせと働いている場所につれてこられた。

 誰に話しかければいいんだ?

「あの、すみません」

「話すのはリーダーと。リーダーは一番奥」

「あ、はい」

 俺はリーダーと思わしきメガネの女性に声をかける。

「すみません。まず、針と糸を貸してください」

「いいですが、何に使うんです?」

「メイドのスカートが破けてしまっていて。すぐに直します」

「一緒に見ます。腕前を見せていただきます」

「はい」

 メイドのスカートはすぐに直った。けどその直後、突然目の前に妙な字が浮かび上がる。

「ありがとうございます」

「待って。なにかおかしい」

「はい?」


 衣服の修繕をおこないました!

 現在のレベル、1。使用したアイテム、高級縫い針、高級糸(紺)。

 取得裁縫ポイント、160。強化に振り分けてください!


「強化?」

 他にも、物理攻撃力、魔法攻撃力、素早さ等の字があったり、あと、スキル、丈夫、火耐性1とかも見える。

 よくわからないが、これを選んでいけばいいのか?

 たぶんだが、素早さは高い方が良いだろう。1上げると、裁縫ポイントがマイナス10された。ポイントを戻して選び直すこともできそうだ。

「あの、すみません。まだですか?」

「すみません。ちょっと待ってください」

 ひとまず素早さを10上げる。あと丈夫を付けた。これで残りポイント30。

 あとは、メイド服なんだから、掃除が上手になれば良いな。と思ったら、スキルのところに掃除1という字が現れた。それも手に入れると念じると、残りポイントが10になる。

 最後に素早さをもう1上げると、これでぴったり0。最後にこれでよろしいですか? と表示されたので、心の中でうなずいておく。

 すると。

 眼の前でメイド服を修繕したところが光り、俺の見える字も消えた。

「あれ? なんだか」

「どうですか。たぶん、素早さが上がって、あと掃除上手、服も丈夫になってるはずですけど」

「は、はい。たしかに。しょ、しょうしょうお待ち下さい!」

 メイドは突然走り出した。速い。

「今のはまさか、上裁縫?」

「知ってるんですか、リーダー?」

「上裁縫スキルは裁縫すると追加効果をつける力もあるのです。しかし、素早さにスキル掃除とは、付与される効果が多すぎます」

「へえ」

 そうなんだ。

「あなた、持っているスキルはなんと言いましたっけ?」

「アメージング裁縫です」

「聞いたことのないスキルですね」

 それからはてんてこ舞いだった。

 次から次へと、上質な布や糸であれを作れ、これを作れと言われる。

 作ったはいいものの、裁縫ポイントをどう振り分けるか訊ねると、ポイント数とつけられるスキルを問いただされ、泣く泣くごわごわした分厚い紙に付与できるスキルを書かされる羽目になる。

 それが終えるとすぐに次の服作りを三着分頼まれた。夜寝て朝起きたら10着に増えていた。

 1週間後には、千着の服作りを頼まれた。

 不幸なことに、この場所に服を大量生産する機械は無かった。

 手が痛くなってきたら、なぜか俺に優先して回復魔法をかけてもらえた。

 食事もまあまあ美味しい。しかし、忙しい。休む間がない。

 働いても働いても仕事が減らない。むしろ増える。

 誰か助けて。


「創さん。これが今日依頼された最重要依頼3着と、重要依頼1着です」

「はい」

 最重要依頼は最優先で仕立てなければならない。しかも刺繍も複雑なので大変だ。

 もう頭がどうにかなりそうだ。しかし休んだらどうなるか。この前少し休んだら怖いおじさん達がやってきた。もうあんな思いはしたくない。

 それに、重要依頼も一件か。一体どんな服なんだろう、ん?


 依頼人。王国の超偉い魔法使い。依頼内容。腰痛が治るローブが欲しい。報酬〜


「こ、これは!」

 俺は依頼内容がわかりにくいと難癖をつけて、この依頼主を呼んでもらった。


「なんじゃ、噂のアメージング仕立て屋。わしに話とは?」

「あなたがこの依頼の、超偉い魔法使いさんですね?」

「うむ、いかにも」

「実は、報酬を変えていただきたい。これを断れば、あなたのローブは絶対に作りません」

「なぜじゃ!」

「こっちも生きるか死ぬかの瀬戸際なんです」

 俺は懇切丁寧に訴えた。

 今、仕事と睡眠以外の時間が無いことを。その睡眠も、どんどん削らされていることも。

 このままでは過労死してしまう。そう言うと、魔法使いさんはうなずいた。

「まさかそんなブラックなことになっていたとは。わかった。お主の望む通りの報酬にしよう」

「はい。では、俺をここから連れ出す。レッツ夜逃げ。ということで」

「しかしこちらにも用意がある。決行はワシが合図したらということにしよう」

「わかりました。どうかお願いします」

 ひとまず最重要依頼は片付けつつ、魔法使いさんのローブも無事作れた。

 そこで丁度、魔法使いさんが顔を出しにきてくれた。

「仕立て屋よ、用意ができたぞ。いつでも夜逃げできる」

「ありがとうございます! では今すぐ俺をここからつれだしてください!」

「ああ。じゃがその前に確認じゃ。送る先はワシの古い友人のところじゃ。じゃがそこでの扱いはここよりひどくなるかもしれん。それでもよいかの?」

「かまいません! どのみちこのままだと俺は死ぬ!」

「そこまで言うならよいじゃろう。では、達者でな。ほい、転送魔法!」

「魔法使いさん、ありがとー!」


 気がついたら知らない部屋にいた。

 眼の前には一人のおじいさん。

「まさか本当に来るとは」

「あなたが魔法使いさんの知り合いですね!」

「そうじゃ。あやつとは腐れ縁じゃがな」

「お願いします、ここにいさせてください! 服作りならできます!」

「うむ。そういう話じゃったな。では、こうしよう。ワシの新しいローブを一着作ってくれ。そうすればしばらく面倒をみよう」

「はい。俺のスキルのことは聞いていますか? どんなローブが必要で?」

「あやつと同じ腰に効くローブではつまらんからな。若返り効果のあるローブを作れ」

「わかりました! でもその前に、少し眠らせてください」

「いいよ」

 俺は安心して眠ると、次に目が合った親切な魔法使いさんに、3日経ったぞ。と言われた。

 そのおかげか頭は妙にスッキリしていて、用意してあった布を使ってすぐにローブを作ることができた。

「魔法使いさん、できました!」

「うむ。よし。では早速試着。おお!」

 ローブを着た魔法使いさんは、みるみる若返っていく。

 というか、体が縮んでいく。

「確かに若返った。でもなんで見た目8歳なんだよ!」

「すみません」

「サイズ調節のスキルもつけろ!」

「刺繍でつきますが、どんな感じのものにします?」

 こうして、俺は異世界でおじいさん魔法使い(見た目8歳)と共同生活を送ることになった。

 世の中何が起きるかわからないものである。




ロリババアはいるけどショタジジイはいない気がしたのでお試しに。

コンセプトはアラサーとショタジジイの共同生活です。

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タイトルを見てどんなお話だろう?と思いましたが勢いのある急展開であっという間に読み終わりました。 超偉い魔法使い、超強いスキル?っていう言葉があったり、みんなのスキルが超◯◯なのにおっさんは超じゃなく…
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