仕事に頑張るぞ③
「ただいま。」
「おかえりお姉ちゃん!」
うっ、可愛い。わが弟は可愛い。
「さーて、夕飯をぱぱっと作りますか。今日は何がいい?」
「お姉ちゃん忙しいから、チョー簡単なやつ!」
「じゃあ、野菜炒めといきますか。それー、キャベツ、ニンジン、ピーマン、パパっと切って、豚肉も入れて炒めて、さあ出来上がり!ご飯は冷蔵庫から出してチーンだね!」
「やったー。はやーい。お姉ちゃんすご過ぎ。」
わが弟、太陽は褒めるのが上手い。だから、こっちも頑張っちゃうんだよね。そして、それは学校でも同じで、友だちも多くて、特に女の子にモテる。バレンタインデーなんか、チョコレートいっぱいもらってくるものね。でも、お姉ちゃんが一番って言ってくれるから、私にとっても一番可愛い存在です。
「ところで、お母さんは?」
「夜勤から帰ってきて、疲れて寝てるよ。」
母は、看護師をしていて、父が亡くなった後、私たちを一生懸命育ててくれている。色々やりたい事も後押ししてくれて、本当にありがたい存在だ。
「では、いただきまーす。」
手を合わせて、二人で楽しく食べる。この時が幸せだなあと、思う。太陽も学校が楽しいみたいで、学校であった事をたくさん話してくれる。お姉ちゃんとしてもうれしい事この上ない。太陽に温かく接してくれる周りの人に感謝しかない。
「でね、璃々ちゃんが、お姉ちゃんが雑誌に載ってるモデルに似てるっていうんだよ。違うよって言っておいたけど、変だよね。お姉ちゃんそんな事やってないのに。」
「ははっ。そんな美貌ないわ。」
「だよね!」
いや、太陽そこは、ちょっとは否定して欲しかったよ。でも、露ほどもモデルだと思ってないので、助かるけど。
「ほら、そんな事言ってないで、食べたら片づけるよ。」
「はーい。」
夕飯の片づけをして、太陽をお風呂に入れて、洗濯物を片付けて、明日のテスト勉強!っと
でも、次の日の朝、私はこの日常を続けられる事が出来なくなりそうになった。
「ねえ、君、モデルのSORAだよね!」
胡散臭さそうな男がなれなれしく、私の腕をとり、そう話しかけてきた。
「違います。全然違います。手を放してください。大声で叫びますよ。」
「おおっ怖い。でも、そのスタイル、肌の輝きは、今や雑誌モデルで人気のSORAちゃんだよね。みんなをだませても、このおじさんは騙せないよ。へー、凄い進学校に通ってるんだね。こりゃ、みんなも知りたいよね。どうやったら、美しさと頭のよさをゲット出来るか。まあ、みんなも見てるから、放課後ここに来てよ。」
って言って、嫌がる私の手に一枚の紙を握らせた。
頭の中真っ白になったが、何とかテストの答案をうめた。(これからどうしよう。どうしよう。そうだ!確かRANさんの電話番号を教えてもらったはず。電話して相談してみよう)
私は、誰に相談していいか分からず、あの優しい笑顔のRANさんを思い出して、すがるような気持ちで電話した。
「RANさんですか?私SORAです。実は相談したい事があって。」
「どうしたの?いいよ、言ってみて。」
「実は私の事がばれてしまったみたいで、高校に不審な人が来て、話を聞きたいって。放課後、待ち合わせ場所まで伝えてきて。」
「事務所のマネージャーとかはいないの?」
「私事務所入ってなくて、個人で仕事取ってるので。」
「そうか、でもこれからもこうゆう事起こるから、事務所に入ってる方がいいと思うよ。」
「私もそう思いました。でも、どの事務所に入ったらいいか。」
「わかんないなら、同じ事務所に入る?と言っても、おばさんがやってる事務所だけど。オーロラ事務所っていうんだけど。」
RANさんは、事務所に連絡してくれたようで、明日契約書を渡すから、よく読んでもらって、サインしてもらえば、事務所に入れるようにしてくれた。
「でも、取りあえず、その変な男よね。マネージャーもどきに行ってもらって、何とかしてもらいましょう。どこに来いって?」