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■夏の国より

 ナウタはナーツァリ国の首都である。天神はそこに寄港していた。

 キリは基地の応接室へと招かれていた。自分に出会いたいという人物がいるとの話だ。


 ソファに座って待っていたのは一人の女性である。女性はキリを見るなり立ち上がり深く頭を下げる。


「はじめまして。私はクラシノ・ムツミと申します」

 ――クラシノ。その姓に覚えがあった。


「クラシノ・ホノエの妻でございます。このたびは時間をとっていただきありがとうございます」

 よく見ればカリンと顔つきが似ている。それもそのはずでムツミはカリンの姉にあたる人物であった。


「早速ですが、俺に話とはなんでしょうか?」

 ムツミは少し俯いた後に話を切り出しはじめる。


「実は――」


   ――◇◇◇――


「なるほど。ホノエはあなたと戦うことで敗北――即ち死を選ぼうとしている、と」

 レイアは先ほどキリとムツミが話した内容をまとめる。


「それを止めてほしいと言われた」

 その依頼を達成するには――。


「おそらく彼は必殺の一撃をあなたが受けざるを得ない状況に持っていくでしょう。そうなればあなたは彼を殺さなくてはならない」


 ――では、どうすればいいというのか?


「相手を活かし、自らも活かす。生半可なことではないわよ」

 レイアはキリの肩に手を優しく撫でるように置く。


「二人が活きるにはどうすべきか。それは何となくわかっているでしょ。あとはあなたの覚悟次第よ」


   ――◇◇◇――


『皇子よ、よくぞおいでになった! 我が全身全霊を賭して戦うことを誓おう!』

 浅く窪んだ広大な土地。その中心にて焔朱雀と欠月は相対していた。


「こちらも誓おう!」

 キリは張り叫ぶ。


 焔朱雀は盾を捨て、両手に槍斧を上段で構えたまま向かってくる。ホノエの声が聞こえる。

『参る!』


 対する欠月は右肩の衣を脱ぎ捨てて両手の光振刀を手放す。

『勝負を捨てるつもりか!?』


「勝負を捨ててなど……いない!」

 欠月の両手が青白い光を帯びる。


   ――◇◇◇――


「皇子は何をなさろうと?」

 ムツミは両手で口を抑える。武器を捨てては戦いにならないではないか。


「女が男同士の勝負に口を挟むとこうなるのよ。こうなると止められないわ」

 レイアが淡々と語る。


「どういうことでしょうか?」

「もともと命がけなのよ、この戦いは。だからどちらが命を落としてもおかしくない。そのギリギリの線をさらに追い詰めたのよ」


 ムツミは少し暗い気持ちが胸を覆うのを感じて俯いてしまう。

「男ってのは何にでも命を懸けられる。それが彼らの誇りよ。見守ってあげなさい。どんな結末になってもね」


 レイアは優しい眼差しをムツミに向ける。それを受けたムツミは二人の戦いを見届けるため再び顔をあげるのであった。


   ――◇◇◇――


 ――ネア、すまない。お前を守ることも幸せにすることもできなかった。

 悔恨が彼の槍斧を振るう原動力と成り果てていた。


 そのすべてをキリは受け止めようというのである。

 ――そんなことができるものか。


 焔朱雀の槍斧が欠月の脳天にめがけて振りおろされる。何もしなければ機体を繰者ごと一刀両断するはずだ。


 その刃を欠月は両手を掲げて受け止める。

 ――真剣白刃取りである。


   ――◇◇◇――


「……くるよ」

「わかっている」

 ポリムとキリは短くやり取りをする。


 向かってくる刃に対して寸でのところを両手の平で挟む。欠月のスラスターを全開に吹かして、さらに足腰を地面に据えた状態で衝撃に耐える。


「すごい力だ……」

 ポリムは驚いていた。焔朱雀が繰りだす渾身の一撃は想像以上だった。間接の部分がキリキリと声を上げているのが聞こえるようだ。


 キリは眉一つ動かすことなく迫りくる刃を見つめている。

 それから刃を引きつけて右側へと逸らし刃を返す。すると焔朱雀の手から持ち手がスルリとすっぽ抜ける。


 武器を失った焔朱雀は明らかに戦意喪失をしていた。戦いは終わったのだ。


   ――◇◇◇――


 繰者は互いにコックピットを降りて相対する。

「なぜこのようなことを?」

「あなたは勝負で最初から敗北を選択するばかりか、死を選ぼうとしていた。だが、あなたの家族はそれを望んではいなかった。故に俺はあなたにはまだやるべきことが残っていると感じた」


 ――だからだ。とキリは伝えた。するとホノエは一瞬だけ目を丸くした後にスッと目を細める。


「私はあの虐殺を防げず妹のネアばかりか多くの方々を失うことになりました。この悔恨は自らの死だけでは注ぐことはできない。それはわかっていたつもりでした」


 ホノエはキリの前に跪く。

「私の迷いに対してあなたは自らの命を賭して我が刃を正面から受け止めた。これからその刃の向く先はあなたの往く先であると確信をしました」


 キリはふうとため息をつく。

「……どうか頭をあげてほしい。ホノエ、失われた人々の意志を引き継ぐためにも共に戦ってほしい」

「御意」

 

 ホノエはまっすぐな瞳をキリに向ける。そこに迷いは見られなかった。

ご無沙汰しています。

ペースはこんな感じでゆる~くやっていくのでよろしくお願いします。

とはいえそろそろ終わりが見えてきましたので、もう少しお付き合いください。

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