表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/86

■戦のきざはし

 蒼天龍の下でひとしきり泣いたユミリはゆっくりと顔をあげる。

「お姉ちゃん、行くね。またお姉ちゃんに会いたいから」

 ――そのために自分は生きなくては。


「もう誰も死なせへん」

 その足取りはキリのいるほうへ向かうのであった。


   ――◇◇◇――


 ホノエはところどころ破壊されたクラシノ邸を外から呆然と眺めていた。

「お互い、無事で何よりだったな」


 背後から頬に絆創膏をつけたハクトが声をかけてくる。

「本当にそう思うか?」


 ホノエの疑問にハクトは訊ね返す。

「どういうことだよ?」


「殺す人間を選別していたというより殺さない人間を選別していた形跡がある。実際、私はほぼ無傷だった」


「どういう基準だったんだ?」

「そこまではわからん。まあ、少なくともソウジ・ガレイ閣下の意志とは関係なさそうではあるな」


 その名を聞いてハクトの機嫌があからさまに悪くなる。

「ったく、胸くそ悪い演説だったぜ」

「まあ、どの口がとは思うところだな」


 五カ国会議で告発されそうだったソウジ・ガレイがやけくそになったとしか思えない展開だったからだ。だが、人死にがここまで出ていることは計算通りだったようには思えない。


 これは歴史に残るような虐殺事件であるからだ。そこに自分が関わったという一端が示されるのはソウジ家としてどうなのだろうか。


「だがよ。このままじゃあ終われねぇ」

「うむ。その通りだ」

 ホノエは力強く頷く。


「お二人ともご無事そうで何よりです」

 マコナであった。


「艦長殿、ホノエならびにハクトはこの通り無事であります」

 ホノエが敬礼をするのにハクトはため息を一つついて遅れてだが横に習う。


「いまは軍務ではありませんから、敬礼は結構ですよ」

 ふふと笑いながらマコナは二人の敬礼を解かせる。


「じゃあ、どうしてここにきたんだ?」

「皆さんが心配でしたのできちゃいました」

 ハクトに対してちろりとマコナは舌を出して答える。


「これから、どんな動きになるんだ?」

「おそらく、そんなのんきなことは言っていられないと思いますよ」


「どういうことです?」

 ハクトとホノエが互いに顔を見合わせマコナに訊ねる。


「ターベに所属不明の部隊が展開されつつあります。ターベに駐在している軍艦は天神、紀ノ、藤古の三艦とそれに所属する人機のみ。一角獣は中破。月輝読は機動鎧の破損が深刻で戦闘は困難。現在動ける繰者は四人。よって戦闘可能な人機は四機のみです」


 状況をさらりと説明される。

「敵がどんな奴なのかがわからねえと不利有利はわかんねえな」

 それを聞いても二人の戦意が下がるようなことはなかったことにマコナは安堵する。


「マコナ艦長、俺たちはこのままじゃ終われねぇ。人機戦だっていうんなら何が何でも勝ってやる」

「ならば私もできるかぎり知恵を出しましょう」


 一同は頷きあうのであった。

お読みいただきありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

感想、評価、お気に入り登録も今後の励みになりますので、ぜひお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ