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■アークリフのハクト

 クエタの海――アークリフ国海域にて。

「あれか」


 フユクラード軍所属の戦艦藤子が領内に向かってきているという報告を受けハクトは派遣されていた。

 その男は前髪にヘアピンをつけて前髪をあげている。白い軍服はアークリフ軍の所属を示すものだ。


「どうしますか?」と通信士の男性にハクトは訊ねられる。狭い艦内には現在ハクトと通信士がいるだけだ。二人は席に座っている状態だ。

白雫虎(ガナウィルク)で出るぜ。どっちみち話し合いはねえよ。だったら俺たちは必要ないんだからな」


 ハクトは席を立ちあがる。

「すぐに出るぜ」

「了解」


   ――◇◇◇――


 戦艦藤子、人機繰者(パイロツト)の待機室。そこにはキリとニィナ、そしてリルハの姿があった。

『悪いがキリくんに出撃してもらう。ニィナくんは待機だ』


 画面にはクワトの姿が映っている。

「どうして私が待機なんですか?」


『我々の特殊な事情をあちらに伝える必要があると判断した。セイオーム軍の石汎機がフユクラードの艦から出撃すれば疑問が自ずと湧くというものだ』


「俺への指揮と機体の使用許可は問題ないんですか?」

『レイアから委譲されている』


 ――なるほど。第一三独立部隊はセイオーム軍の中でも独立した動きをしている一方で、他国の連携もしてみせるところを見せる必要があるということか。


「了解です。すぐに出撃すればいいんですね」

『頼む』

 キリが返答するとクワトは短く答えて通信が終わる。


 しかし何度やっても人機で戦うのは慣れないものだ。思わず手が震えなるのを誰かが暖かく包んでくれる。


「キリならやれるよ」リルハが笑顔を向けてくる。

「何でそう思うんだ?」


「理由はないかな」

 ――無責任だなとキリは思わずため息をつく。

「それじゃあ行くよ」


「うん。待ってる」

 キリは扉の前に立ち止まってちらりと横顔を向けると右腕を軽く振って部屋をあとにする。


「声、かけてあげればよかったのに」

 ニィナはふくれっ面で終始黙ったままだ。


「キリが何で振り向いたと思ってるんだか」

「え?」とニィナは目を見開いてパチパチさせる。


 ――鈍いなぁ。リルハは肩をすくめるのであった。


   ――◇◇◇――


 白雫虎が白を基調とするのはアークリフ国を象徴する四霊機の一機であるからだ。目の前には黄色い石汎機。

「お手並み拝見ってところだがな」


 白雫虎の武装である一つの銘は()(ざん)()。小刀である。こちらは右手に装備している。

 二本装備しており、使わないときは背中のバックパックにマウントしている。


 左腕にはゴツゴツした突起のついた球体にまわりには刃返し。妙な形状をしており、銘は(きん)(かん)である。


斬りかかってくる石汎機の光振刀を金柑で受け止める。この武装は盾としての機能も有する。一方で――。


 ハクトの口の端が上がる。それから球体は撃ちだされて石汎機ごと吹き飛ばす。何とか盾で防いだようだが、代わりに弾かれてしまう。

「実験機だからって装備も変なのつけんなよな。役に立ったからいいようなものの」


 鉄球が戻ってくると頭上でぶんぶんと円軌道を描きながら振りまわす。これでは石汎機はうかつに近づけないはずだ。


 しかし石汎機は盾がないにも関わらず接近してくる。

「面白えじゃねえか」


 ――こいつは気合い入れねえとな。とハクトは意気込みながら鉄球を近づいてきた石汎機に投げる。

 一方で石汎機は肉薄する状態で上体を反らして躱しつつ、投げ刀を空いた手のほうで抜き放つ。


 ハクトも接近戦とみるや、すぐさまに左手で山茶花を抜く。間髪入れずに石汎機が光振刀を振りおろしてくる。


 それを二本の山茶花の刃の部分をクロスさせて受け止める。それから双刃で石汎機の光振刀を締めて抜けなくする。


 それから少し力を抜いて相手が押しこめやすくしたところを下方向へ押しこみ、それから左方向へ曲げて光振刀を手放させる。


 すかさず石汎機は後ろへ退がり際に投げ刀を投げる。ハクトは舌打ちをして投げ刀を弾くと追撃をかける。


 そこに残り一本の投げ刀を石汎機が投げてくるのを躱してさらに接近をしていく。石汎機の方はもう丸裸だ。


 山茶花の刃が石汎機の首筋を捉える。

『双方、それまでです』


 戦闘の終わりを宣言したのはマコナであった。


お読みいただきありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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