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■世界の果て

 ペルペティは光が収束してエネルギーの剣となった槍を振りおろす。

 剣も盾も取りあげた。妙なマントを着けてはいたが気にすることはない。すべてを切り裂くだけだ。


 キリは好感が持てる青年だったが、情けは禁物だ。

 ――これで私も人殺しか。そんな想いがふとよぎる。


 これも自分の世界に戻るためだ。そのためなら何だってやると決めたのだ。自分をきっと待っているであろう人たちの元へ還るために。


 エネルギーの放出が終わり、光の剣は霧散する。光の剣が振りおろされた衝撃とペルペティから熱が排出されて蒸気と粉塵が舞いあがる。


「……やった」

 ――やってしまった。後悔の念が荒波のようにケイカに襲いかかってくる。手段を選ぶつもりはなかったつもりだが、やはり気分は最悪だった。


 こんなことをするつもりなんてなかったのに。俯いている自分の耳に嗚咽が聞こえる。それが自身のものであることに気がついたのは少し時間が経過してからだ。


『……よかったな。人殺しにならなくて』

「え?」


 声が聞こえるとともに砂煙が動く。ペルペティの頭部に布のようなものが被さる。しばらく排熱の関係で身動きがとれない状態だ。でなければ、分離をするしかないが――。


 思考がまとまらないままでいる間にペルペティの両腕が切り落とされてしまうのであった。


   ――◇◇◇――


 ――耐えきった! 信じられない気分だが、マントの端々がところどころ焼き切れてはいるものの、何とか光の剣を耐え忍ぶことができた。


 ――本当は殺したくなんてなかった!


 キリはケイカの声が聞こえたような気がした。

「……よかったな。人殺しにならなくて」

『え?』


 石汎機はマントを外してペルペティの頭部に被せる。それから両手に投げ刀を持った状態で一気に接近して両肩の腕の接続部分に突き刺して、躊躇わず刃を振りおろす。


 この投げ刀も光振刀である。よって刃に触れてさえしまえば対象物は分解していく。ペルペティの両腕はいともあっさりと地面に落ちる。


 左手の投げ刀を地面に落とすと頭に被さっていたマントを剥ぎ取ると同時に投げ刀を首筋に当てて一気に振り抜くとペルペティの首が宙に飛ぶ。


「まだやるか?」

 ペルペティのこの形態は足まわりが太く手が前回に比べて長い。おそらくその長い腕で掴んだりするのが得意で、反面として足で蹴ったりとかは苦手ではなかろうかとキリは推測したのだが、どうやらそれは当たっていたようであった。


 腕を切り落とした状態のペルペティはもはや木偶の坊状態であった。

『……わかったわ。降参する』


   ――◇◇◇――


『聞こえるか、ケイカ』

「ベイトさん?」


 ペルペティは両腕と頭が切り落とされて戦闘続行はもはや不可能な状況である。どうしたものか考えあぐねたところでのベイトからの通信であった。


『投降しろ。もう無理に戦う必要はない』

「でも……」


 それでいいのかとケイカは思ってしまう。

『それに俺はもう助けてやれん』


「どういうこと?」

『ソウジ・ガレイのところには戻るな。奴らは信じられん。……短い間だったが、相棒がいるというのは悪くなかった。もう会うこともないだろうが、元気でな――』


 ベイトからの通信が途切れる。これで何となく察しもつく。そこまで現実が見えていないわけではないからだ。

「……わかったわ。降参する」


『了解した。では、機体から降りて武装解除してもらう。手続きについては――』


   ――◇◇◇――


 ――荒野の中。ボロボロの布で天幕が張られている。


 その日陰の下で左目に眼帯をしたボロボロの服装をした男が頭を抑えながらゆっくりと起きあがる。


(あに)さん、目が覚めましたか? なかなか起きないから朝食作っておいたっすよ」

 一二歳くらいのぱっと見は少年が顔を覗きこんでくる。


 その実は少女であることも彼は知っている。それが生き残る手段であることも理解していた。


「……妙な夢を見ていた。お前と同じ年齢くらいの娘が出てきた」

「その娘とはどうなったんすか?」


「わからん。俺は早々に退場となったようだからな」

 男は空を仰ぐ。


 ギラつく太陽と雲が風で流れている。


 ――無事でいればいいがな。


 らしくない。そんな風に思いながら感慨深くしているのであった。

お読みいただきありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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