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■逃亡、潜伏

登場人物:キリ、ティユイ、レイア、ヒズル、エリオス、シンゴ

 貨物庫から飛びだしたキリとティユイは指定された地点を目指していた。

 外は雨が降っており、空は曇天に覆われていた。


「どういうんだ?」

 リーバ内のシートでキリはティユイを膝に乗せながら、現状把握に努める。


「ルディ先輩とか見てて思うんですけど、ロボットでの戦闘っていります?」

「この世界にはエーテルが充満しているだろ。それがあらゆるものを構成する(もと)となるんだ。もちろん体内にもエーテルはある。その総量をコントロールして身体能力を向上させたりできるんだ」


「ああ、よくロボットもので出てくる謎の便利エネルギーですね」

「エーテルは現在の人類が発見した物理学の単位でもっとも最小のものだぞ」


「やっぱり便利エネルギーじゃないですか」

 キリは一瞬「うぐっ」と呻きつつ、何も言い返せなかった。


「どこへ向かっているんですか?」

「このコーヤには月輝読(ラゲンシア)があってな。それを受領することになっている」

「どゆことです?」


「月輝読は人神機(じんこうき)。意思のあって乗り手を選ぶんだよ。対して俺が乗っている石汎機なんかは意思はない。だから人機って呼ばれている」

「そこまでファンタジーぽいなら(カード)とか武器に封じこめて、召喚できるようにしたらよかったのに」


「……人機は質量が三万トンあるんだぞ。質量コントロールができるからって、そりゃ無茶振りだろ」

「できそうですけどねぇ。でも、石汎機のやられメカって感じなのは納得です」


「基本性能は一緒だけどな」

「ワンオフと量産機の性能が一緒なんですか?」

 ティユイは愕然としているようだった。


「人型である以上、出力やら頑強さなんかに差異は出ないよ。それと事前に伝えておくと人機自体は兵器じゃない。機動鎧(ブーストアーマー)と武器を持たせることで機動戦略兵士と呼ばれて、兵器としての扱いになる」


 ようするに武器も何も持っていなければ人機は兵器と見なされないということだ。言われてみれば納得である。

「ところで人型ロボットという扱いなのか、それともスーツという扱いなのか。どちらなんですか?」


「その辺は俺もよくわからないんだ。それより一旦降りるぞ」

「どうしてです?」

「身を隠して夜まで待機だ。詳しい動きはそれから話すよ」


 森が見えるところから光が見える。リーバはそこにめがけて降下していくのであった。

 

   ――◇◇◇――


「お久しぶりね、ヒズル」

『そちらも変わりがないようだな』


 潜水艦“天神(ファランドール)”の艦長室にてレイアは椅子に座って映像に映るヒズルと会話をしていた。

「ま、対立関係になった以上は仕方ないわね。早速、交渉としましょう。こちらはルディとユミリの引き渡しを要求する」


『それは不可能だ。特にユミリ王女はこれからハルキアへ送り返す。蒼天龍も繰者のルディも同じくな。あれもハルキアのものだ』

「その言い方だとあなたたちが二人を救ったって立て付けになるけど?」


『ソウジ家の支持は高い。お前が率いる第一三独立部隊は世間的にテロリスト扱いだ。如何に法規は守っていてもな』


 レイアはわざとらしくため息をつく。

「これでこちらの戦力が削られたワケね」


『ヤツは自分の正当性を主張するために演説をするそうだ』

 ――それで決定的になる。とヒズルは続けた。


「お得意の奴ね。好きにすればいいわよ」

『随分と余裕があるようだな』


「そう見える? って、わかってるでしょうに。意地が悪いわね。……コーヤでの戦闘はやめないわけね」

『ああ、進言はしたがな。ここまで来たら譲れんのだろう』


「逆にここを切り抜けると勝ち確なんだけど、わかっているの?」

『儂がそこまで甘いと思うのか?』

 ヒズルの視線は挑戦的だ。


「ふぅん。いいわよ。受けて立ってあげる」

 何かを企んでいるとわざわざ言ってくるのだ。昔から不器用な男は健在ということだ。そういうところは嫌いではない。


『話は以上だ』

「……柄じゃないことやってるわね」

 それでレイアは苦笑いを浮かべるのであった。


   ――◇◇◇――


 あたりが暗くなってくる。雨は相変わらず続いていた。

「雨はもう少しで止むみたいだな」


 キリとティユイはコックピットを降りて、簡易テントの中にいた。

「これからどうするんですか?」

 それにしても簡易テントがリーバの下部分に収納されていたのは驚いたものだ。こういう事態も想定して、サバイバルキットが備えつけられているそうだ。


「ここがコーヤっていう水母なのは説明したよな。この水母は霊域と呼ばれている。何て言うかな魂の安息地であり集積地なんだ。だから生者にとってここは禁則地になっている」


 ティユイは記憶が戻ったというわけではない。よって頭の中はまだ二〇二七年だ。

「魂の安息地ってどういうことです?」

「死とは肉体が昇華される状態で残るのが魂。それがこのコーヤに集まるんだ」


「魂って幽霊みたいなものですか?」

「理解できない存在っていうんならそうなるけど。現在では魂は許容できる存在だよ」


 キリは心配するなとティユイに声をかける。

「キリ君って寛容というか心が広いですよね」


「そんなこと考えたことも言われたこともなかったよ。認識の問題だろ」

「そうかもしれませんけど、そんなことないと思います」


「さて、そろそろ行動しようか。月輝読は寺院の近くにある社に鎮座している」

「その月輝読をどうするんですか?」


「受領するって言っただろ。月輝読は乗り手を選ぶ。それはつまり皇系の血筋。ティユイ、月輝読は君が乗るんだ」

お読みいただきありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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