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■八時四〇分

登場人物:キリ、ユミリ、ティユイ、ミキナ、ケイカ

 キリたちが立ち去ったあと。

「……立てるか?」

 咳きこみながらも何とか立ちあがろうとするミキナに男の手が差しだされる。


「……ありがと」

 ミキナはその好意を受け取ることにした。


「ごめんなさい。私が抑えられなかったから」

 ケイカが申し訳なさそうに謝罪をしてくる。彼女はもう縛られてはおらず自由になっていた。おそらくベイトがほどいたのだろう。


「シキジョウ君はあなたが隙を作ったって言ってたけど、どういうこと?」

 ケイカはベイトを一瞥する。それで少し困ったような表情を浮かべている。つまり、男性を前にしては言いにくいということか。


「わかった。無理には追求しないわ」

 どうせかそんな暇はないのだ。事態はこれから一気に動くだろう。


「それでどうする?」

 ベイトの問いにミキナは思わず嘆息をつく。正直、気乗りはしなかった。


「第一目標はティユイ皇女をケイトから出さないことだから。こちらが相当不利な状況でも、挽回の余地は十分にあるわ」


「これから追撃するとなれば命の保証はできない。皇女には死んでもらって構わんのだな?」

「ええ、彼女について閣下は生存の可否について問わないという返答だったから」


 その声が震えていることをミキナは自覚する。言葉にするだけで吐き気を催しそうになった。

「本来の記憶を奪ったうえで別の記憶を植えつけて、この街から出られなくしていたのだろう。しかも出て行くとなれば死んでもいいという。大した主だな」


 無表情なベイトの声に少し怒りの色が混じっているようにミキナは思えてしまった。

「それでお前はどうするつもりだ? 俺やケイカは所詮、異邦人。何が正しいのかをこの世界の住人に委ねるしかない。その上で問うている」


「そうね。私としては由衣――ティユイには命のかぎり生きてほしい。失ったものが多すぎるから。できることなら……」

 この先を自分から言うわけにはいかない。それを察したベイトとケイカは互いに目配せで合図を送りあう。


「ならば、俺たちに任せるといい」


   ――◇◇◇――


 コックピット内は全面がモニターになっていて三六〇度見渡せる。桐が手元で丸いものを握ったり動かしたりしている。


「桐君、それってマリモですよね?」

 由衣にとってマリモとはゲーム機のコントローラーである。ボールのような形でそれを握ったり、指でなぞったり、上下左右に動かしたりして操作をするものだ。


「そうだよ。現在、あらゆる操作にマリモは利用されている」

 モニターから御所が見える。すると建築中となっていた建物がガラガラと崩れて中から巨大な人型のロボットが姿を現す。その大きさはざっと見た感じで二〇メートルほど。


 由衣がロボットであると判断したのは外装のメタリックなメインボディが黄色く塗装されているというのものあるが、なにより顔部分を多く覆っているバイザーの存在である。


 おかげでのっぺりした顔つきになっている。頭も角も何もついていない兜をかぶっているようで彼女からすれば――。

「やられメカっぽいですよね」


 その言葉に桐はがくりとうなだれ、友美里は顔を引きつらせている。

石汎機(マグ)は世界中で使われている量産機で、それだけ信頼性が高いんだよ」


「世界中で、ですか?」

 どういうことかと由衣は首を傾げる。


「キリ、由衣はまだ何の説明も受けていいへんのよ」

「そういやそうだったな。そのあたりはちょっと複雑なんだよ」


 由衣たちが乗っているリーバはまっすぐにマグのほうへ向かっていく。

「ドッキングする。あわせて衝撃吸収気体を充満させるからな」


「了解」と友美里が返答した。

 それからリーバはくるりと反転して石汎機の前腰部に接続される。それとと同時にコックピット内に黒い霧のようなものが充満していく。


「この黒いの大丈夫なんですか?」

「衝撃を吸収する気体なんよ。無害だから心配しなくても大丈夫」


「視界は問題ないんですか?」

「実際、問題ないでしょ」

 そう言われて視界がクリアであることに由衣は気づかされる。


「揺れはしないけど動くからな」

 桐が言うと同時にまわりの風景が動きだす。


「キリ、実戦ははじめてなんやろ?」

 友美里は不安そうだ。


「桐君、設定は主人公みたいなんですねぇ。ひょっとして、これから華々しく活躍するんですか?」


「あんたねぇ……。一緒に散々ゲームしていてどうやったか知っているやろ?」

 そういえば桐とはしょっちゅうロボットを操作して戦うゲームで対戦をしていたのを思い出す。


「そういえば私、桐君に負けたことないですね。(るい)先輩から一本取るのが難しかったんですよねぇ……」


「言っておくけど、あれって本番さながらのシミュレーションやからね」

「友美里先輩も下手でしたよね」


「私のことはええの! ルディとまともに戦える、あんたが変なんよ」

 友美里は自分が正常であることを主張する。


「俺と友美里は軍人出身とかじゃないからな。二人みたいにはいかないの」

 コックピット内の揺れは一切ない代わりにまわりに映る画像から機体が上下に揺れているのがわかる。機体はゆっくりだが、動いていた。


「武装は光振刀(ツルギ)振断盾(ハオリ)に投げ刀が二本を確認。動作不良もなし」

 桐はどうやら装備の確認をしているようだ。桐の横の方に画像が浮かびあがり、機体の装備が仕込まれている箇所が赤く映っている。


「こういう人型ロボってアニメとかでしか動いたところ見たことないですよ。万博のときでも動いたって話しはなかったじゃないですか」


「由衣、よう聞いて。現在は和養一六年なんよ」

「和養? いまは令和ですよね?」

 由衣は友美里が何を言っているのか理解できなかった。


「私たちはもう西暦を使ってないんよ。たぶん西暦でいうと二〇二七年から一〇〇〇年くらい経過していると思う」


「……どういうことでしょうか?」

 その言葉を桐が神妙な面持ちで遮る。


「話はあとだ。たぶん敵がくる」


実は学園パートをばっさりやってます。あと序盤からユミリとルディを出しています。人機も最初から出していきます。

お読みいただきありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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