86.オキナ大陸(22) オキナダンジョン(20)
精霊石の謎は解けた。
後は計画を実行するのみ。
ひたすら地下道を作り続ける。
目論見通り、巨大水晶結晶の洞窟を見つけた。ライトアップしてみたら幻想的な空間が誕生。
これは充分人を呼べるレベルだ。まさに宝石箱の中に飛び込んだ感が半端ではない、感動物だ。
アリーに頼んで探してもらった海の精霊の里にも行き、水中生物が観察できるように、それほど深くない所に観光ドームを作ってもらった。ドームからは海底の生き物がよく観察できる自然の水族館だ。ドームって何で出来ているのだろう?透明度が高く水圧に耐える強度もある。謎は多いが、どの道謎だらけの世界だ、これも気にしたら負けである。所謂魔法と剣のファンタージー世界である。きっと創造主は想像力豊かなやつに違いない。そんな手練れに対抗する気は無い。
軌道のメンテナンスが必要だろうから、その人員の宿泊施設を兼ねて、ドーム内にホテルを建設した。全室海底ビューの豪華ホテルだ。レストランも建設する。
軌道は、3つのチューブから成り、上り道、設備道、下り道で構成される。設備道はメンテナンス道と配線と避難道を兼ねている。結構大変だ。
なんか面倒くさくなってきた。掘り進めるのはアイテムボックスとマイワールドを駆使して実現できるが、壁の補強は結構手間である。シールド工法のように自動機が欲しいなぁ。
だいたい一人でこんな大事業をするのが間違いのような気がする。自分で考えたことだけど。
とりあえず、海底トンネル作ったらおやすみしようかな。なんか俺にもインセンティブと癒やしが欲しい。
ーーーーー
終わった。2ヶ月かかった。
もう海底トンネルは嫌だ。やらない
ーーーーー
ん?
よく考えたら、地上世界で働きすぎだから、休暇って事でオキナ大陸行ったんだよね。
俺、なんで地下世界でも働いているんだろう?ワーカホリック?
楽しいダンジョン攻略になって無いよね。
しばらく海底ドームでただただ海を眺めて過ごそう。
決めた!
工程表は無いけど白紙にした。
2〜3日はぼーーーと眺めていたけど。ちょっと飽きてきた。
海の生物は沢山居るが、名前がわからない。まあ分かったとしても覚えられないけど。
ふと、横を見ると俺以外にも客が居た。まあ居ないと困るんだけど、出来立てなのにまだ客は少ない。かなり高価な設定をしているし、まだ気軽には来れる所ではない。
「海底はどうですか?」
声をかけてみた。若い女性で、海底生物をじっと観察してメモを取っている。
「ええ、素晴らしいですね。こんなに近くで生態を観察できるなんて、まるで天国です」
「学者さんですか?」
「ええ、そんなようなものです。あなたは?」
「この施設の関係者です。水晶宮はご覧になりましたか?」
「いえ、まだです、このドームで観測するのが種目的なので、どの様なところですか?」
「巨大な水晶結晶の洞窟で、ライトアップされてとても幻想的ですよ」
「そうですか、帰りに寄ってみます」
「輸送や観光だけでなく、学術的にも意味があったんですね。」
「ひょっとしてロイ様ですか?」
「そうですけど、どこかでお会いしましたか?」
「あっ、私ローズの妹でフラウといいます。姉からは色々話を聞かされています」
「そうですか、現状は関係者でないとなかなか来れませんからね。食事も宿泊もまだ高いですからね。
物流が増えて訪問者が増えていけば、施設の効率が良くなって安く出来るようになっていくでしょう。
まだ認知度も低いですからね」
ローズから何を聞かされているか不安だが、聞くのは怖いので聞かない。
「今回も1ヶ月分の生活費を注ぎ込んでいます。その価値はありますが、明日からパンとスープです」
「それは大変ですね。ローズの家族なら招待しますよ。」
目をキラキラさせている。さすが学者だな。
人の役に立っているというのは嬉しいな。
内覧会用のチケットを渡した。一週間の施設利用料滞在費が無料になるはずだ。関係者や有力者に宣伝用にに配っているものだ。いくら有用な施設を作っても、人々に知られないと利用されない。
それから食事に誘われ、いろいろな話を聞かされたが、残念ながら記憶できていない。学者の話は難しくてよくわからない。簡単に纏めると、この地下世界の生態系に関する話だ。
ふと疑問を思い出し、訪ねてみた。
「ところで、地上の世界には亜人と呼ばれる種族が多種いるが、なぜ、地下世界に亜人は居ないのだろう?」
「亜人と言われても、こちらには居ないのでわかりませんが、どの様な種族でしょうか?」
「大まかに言うと動物と人間の両方の特徴を持った種族で、動物より頭が良く、人語を話して理解します。何方かと言えば人間よりの種族です。
例えば、鳥人族は四肢と別に羽も持ち、空を飛べます。」
「えっ、そんな種族が居るんですか、見たい」
あっ興味を持ってしまった。
「俺の推測では、古代に地下世界に逃げ込んだ時に亜人族が除外された説ですね」
「私は、逃げ込んだ後に種族が生まれたと考えましたわ」
「なにか文献は残って居ないのか?」
「ここで発見されている最古の物でも2000年ほど前のものですわ、地上世界には無いの?」
「地上世界では、こちらより技術も失われたものが多いから数百年ぐらいまえの文献または口伝ぐらいしかない」
「口伝では時間敵感覚が伝わらないので難しいですね」
「それを知ったからといってどうってこと無いんだけどね」
「そんな事無いですわ、歴史は大切よ、過去を知って未来を語るんですわ」
「そうか、俺も精霊の謎を解くために世界を巡ってきたからな、それで真実がわかり、これからの指針にも影響しているな」
「そうですわよ。
ところで精霊の真実って?」
しまった。秘密だった。
「どこまで明かして良いかわからないが、精霊と人がどう関わってきたかって事かな
世界を背負うつもりなら話すが、ドラゴンと交渉したり、精霊や妖精と交渉したりも必要だな」
「ちょっと重いですわね」
「俺は、地上世界と地下世界を背負ってしまったからな。潰れそうだ」
ワーカホリックとしてだけど。
「今は遠慮しておきます。
それより地上世界に行ってみたいわ」
「そちらは実現可能だな。
近々、使節団が編成されるはずだ、候補に入れておくよ、俺が決めるわけではないから確約は出来ないがな。」
「ありがとうございます」




