81.オキナ大陸(17) オキナダンジョン(16) イャチ帝国帝都(1)
宴会のさなかですが、事案が発生しました。
地方領主からいきなり決闘申し込まれました。
結婚を申し込まれるよりは対処は楽ですが。
どうやら、黒龍がらみです。黒龍に生贄と貢物を捧げる役をしていたらしい。
黒龍が改心してしまい、仕事がなくなったとおっしゃっていますが、
「違うだろ、貢物を横領してたのが無くなって困っているだけだろ」
「ぐぐっちがうわぁ」
「しかも生贄も横領していたんじゃないか?」
「そんなことある訳無いだろ」
「調べたんですよね。
黒龍は別に生贄を食べてたんじゃなくて、里の雑用を任せてただけらしいんですよ。
村々からのリストと、黒龍の里で保護した人たちとが、会わないんですよね」
「しらんっ!逃げたのだろ」
「彼らの証言も取ってあるんですよね」
「ええいっ!決闘だぁ」
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という流れです。
「では、もしあんたが負けたら、
横領した物、人は全て回収します。倍返しで」
あっ、人は倍返し出来ないか。
「お前が負けたらどうする!」
「謝罪します。ただし横領した物、人はそのまま回収します」
「不平等だ!」
「では、倍返しはやめて4倍返しにします」
「条件悪くなっとるだろ」
「そもそも、決闘受けなくても良いんですよ、僕は
あなたにチャンスを与えているんだよ、決闘の前に。
はっきり言って破格の好条件だと思うんだけどね」
「わかった」
ーーーーー
わかったらしい。勝つ可能性は0。その後の態度でマイナスもあり得るのにな、ちょろい。
決闘の文化があるらしく。公的に認められた。甘いな。
強いものの言い分が通るなら法はいらないし、俺の言い分は全て通ってしまう。
ーーーーー
「早まったな、俺は召喚士だ、最強の相手を召喚してやる」
「俺は、テイマーだから従魔を相手させても良いんだよな」
「もちろんだ!召喚!『最強種』!」
召喚用の魔道具の杖を振るった。
ぱりん!
杖に付けられた巨大な魔石が割れた。
「くぐっ、どうした?」
俺はわかってしまった。
なぜって?
なんか引っ張られる気がしたんだよね。
ひょっとして俺を召喚しようとしたのか?
あの魔石じゃ駄目だろ、百倍ぐらいはないと
「なぜか召喚は失敗したが、俺は最強剣士でもある。覚悟!」
「じゃあこの小鳥で相手しよう」
「なんだと、馬鹿にするな!」
「キング、やっちゃいなさい」
キッキィー、ちゅん!「ぎゃ」ちゅん!「ぐっ」ちゅん!「くがっ」ちゅん!「ぎゃあああーー」
(因みに、「キッキィー」が鳴き声で、「ちゅん」は相手の体に穴が空いた音です)
手足が千切れそうだ、大分手加減したな。キングできる子だ。
ついでに、呪も掛けておこう。
「呪『治癒魔術を受け付けない』!、『心を病まない』!『改心する』!」
アバウトな呪だが、自殺すること無くいつまでも悔いて反省してくれるだろう。
悔いて狂ってしまったら楽になっちゃうからね。人の苦しみを味わってもらおう。
「念の為、ティム! 名前は『ザイニン』皆の下働きをしろ!
えっ?それ本名だって?
知らなかった」
ちょっと恥ずかしかった。戒めのための名付けだったのに。
財産は全て没収したが足らないな。家族はまあ下働きでもしてもらうとして。
仕方がない領地は俺がもらう事にした。生贄家族の保障するのに金が必要だからな。
領地運営で『生贄救済基金』を設立し、持続的に取り組もう。まあ、他人に任せるけど。
「代官はローズ」
「えっ?わ私っ?」
「ああ、他の人の名前が覚えられなかったからな」
諦めてくれ。




