74.オキナ大陸(10) オキナダンジョン(9)
「ところで、龍脈利用技術について知りたいんだけど」
「はい、龍脈を龍脈溜まりに一旦プールしてそこから精霊石を使って一定の量を細く決められた速度で流しだします。それをこのコイルと呼ばれる細い線を何度も巻いた輪の中を流すと、そのコイルの両端に電気と呼ばれる力の流れが生じます、それを特殊な細い線、電熱線に流して熱を得たり、明かりを得たりします。
送電設備は無いので、各街ごとに設置され、数十件に一つ設置されています。生活にはこの施設が必要なので街は龍脈の近くにしかありません」
電気を使っていたのか。龍脈が磁力線のようなもので極性を反転しながら流れているのか?
そしたら出てくるのは交流だよね。これは地上世界でも利用できそうだな。
「なるほど、精霊石で龍脈の流量を制御しているのか」
ひょっとしたら、呪玉の疑似精霊石で代用できないだろうか? 疑似精霊石には精霊は宿っていないが、念を封じ込められる。「気の一定の流量を保つ呪」、『気』が生物判定されれば呪の効果は出る。
実験してみたいな。
「発電実験装置は作れるか? 試したいことがある」
龍脈の小さな支流を作ってもらいコイルと呪玉を設置する。電熱線を繋いでみると、安定して発熱しだした。ランプは竹の繊維で作った炭を真空のガラスに密封して電気を流せば良いのだっけ?
いくつか条件を変えて作ってみた。いつもの様に「ぽんっ」て。一定の流量というのを設定できるようにしてみた。いくつか壊れたけど、機能するものはいくつかあったので、その中間的な条件を採用した。
「疑似精霊石でもなんとか使えそうだな。家庭用の小規模発電ならこのままでも使えそうだ」
魔王国に行って初代さんに、規模に応じた最適な疑似精霊石を開発してもらうようにお願いしてみよう。
「実験は成功されたようですね。精霊に頼らなくても出来そうなんですね」
「ああ、まだ規模や用途に応じた改造や実験は必要だけど、出来ると思う。
ここには作れる者は居ないので帰って手配しないといけないな
こちらの大陸には電気は無いから、実験用に電気で機能するもののサンプルをもらえるか?」
「わかりました、準備します」
持ってきたのは、電灯、電熱器、電動工具、暖房機などをたくさん持ってきた。
色々やることが増えそうだ。
「精霊契約による現状維持が出来るようになったので、新技術の開発期間の余裕ができた。
気長にいこう。」
これはクリーンエネルギーと言えるだろう。精霊との契約が必要なくなるなら精霊は自然を守るのに専念出来るだろう。
龍脈発電所計画の発動だ。
「んぐぁ〜」「ぐぐぅ〜」
ん?人間が二人落ちてきた。
「主、密偵のようです。おそらく他の大陸の者かと」
「オブシディアン、ご苦労」
ライディ、拘束してくれ。
「さて、安心しろ、拷問はしない」
いつものように呪玉を使うだけだ。
ぽちっ。『気持ちよく真実を話したくなる呪』を発動させた。
「何処から来た」
「イャチ帝国だ」「ルウア帝国だ」
「何を調べに来た?」
「「地上からの来訪者の情報を探りに」」
情報が早いな。
この地下世界では電信による遠距離通信があるそうだ。電波が天井で反射して遠くまで届くそうだ。
「訪問すると伝えろ、会談の場を設けろ」
前触れが要らなくなった。




