54.チャイ大陸(44) 鳥人国(1)
龍人国の迷路を出て、南に向かうと鳥人国だ。
街道らしい街道は無い。鳥人族は飛べるから街道は必要ないのだ。ただ、北側からの物資の搬出入の為に、道らしきものはある。途中に宿場など無く原則野宿でかあるが、我々の馬車にはマイワールドがあるので問題ない。
中央山脈から川が流れ出ているので、川をいくつも超すことになる。大きな川には簡易的な橋が架かっているが小さな川には無い。我々の馬車は水陸空用なので問題ない。
一般的には非常に行き来し辛い場所にある。東海岸からなら川沿いの街道があるらしいが、かなり遠回りになる。イーストチャイからの出入りは、ドロシア港から街道のある港まで海路で移動して、そこから川沿いに西に向かうか、川を遡るのが一般的らしい。
従って鳥人国には、物資の輸出入のための川沿いの街と、高いところにある居住の街の2つある。高いところにあるのは滑空に便利だからだ。物資は滑車で引き上げるそうだ。
北側から来た我々も、川沿いの街にたどり着く。
鳥人国出身のフィア・バードに先触れを頼んだ。
川沿いの街には人族も少し住んでいる、商人や冒険者だ。冒険者は商人の護衛だ。住民として住んでいる人族は居ない。
公共の施設も川沿いにあるので、我々はここで長と会うことになる。
しばらくして、フィアが戻ってくる。しょんぼりしている。
師匠を紹介したかったそうだが、カワセミのキングに負けた事に叱られたそうだ。
そんな事で怒るんなら、キングの力を示してやろう。
長達とは集会所で面会した。長と、長男のスラッシュ・バードだ。
「俺は帝国より亜人国を纏める辺境伯の爵位を授かったロイ・ジンノだ」
「ふんっ! 帝国の辺境伯が何の用だ。お前など認めんぞ」
「残念ながらそうはいかないな、ここで亜人国3国目だが、快く迎えられたぞ」
龍人族なんて平伏していたからね。
「あやつらとは違うわ、大した力も無いやつに従う気は無い!」
「そうか、力を示せは良いんだな、なら決闘だ」
「ああ、スラッシュ、力を示してやれ!」
「ではこちらはフィアの師匠のキングにお願いしよう。キング頼んだぞ、殺すなよ」
「バカにするでない!そんな小鳥に何が出来る」
闘技場に移動し、決闘を行う。
「容赦はするな、キング、絶対的な力の差を示してやれ」
「わかった、あるじ」
「バカにするなぁーー」
「始めぃ!」
まあ勝負にもならないだろが
キングはシールドを張り、余裕で構える。
スラッシュの体当たり攻撃、
ずどーん
キングは無傷、クビをカクっと傾ける。可愛い。
次はキングの攻撃、これも体当たり、
ずががーん、んーんー。
スラッシュは闘技場の壁にめり込んで失神している。
勝負あったな。
「そこまで!」
「ななんとぉーー。ぐぐっ申し訳ない。受け入れてやるっ。」
負けても上から目線か、負けず嫌いだな。
まあ、認められたからいいか。
なんかしてやる気も無くなった。帰ろう。
税金は、出入りの商人からだけ取れば良いか。商人と話をつけよう。
商人と話を付け、物資に税金を上乗せしてもらった。
その代わり商人には滞在中に充分休める様に屋敷を建ててあげた。
馬車も少し改造してあげたので、大変喜ばれた。
商人たちは鳥人族に恩があるらしく、この様な遠くまで行商に来ているそうだ。街道で盗賊に襲われている時に助けられたのだそうだ。ここに来るだけでも赤字なので、税の分は負けられないけど、なんとか続けたいと言うことだ。馬車も改造してもらい、以前よりも早く行き来が出来る様になって助かるそうだ。
律儀な商人の様だ、ローリン商会に来ないか勧誘しよう。
「商人よ俺はローリン商会をやっているゴールドランクのロイだ、うちで働かないか?」
「あっあの、ローリン商会、今ものすごい勢いで勢力を伸ばしている?」
「そんなに凄いのかわからないが、多分そうだ」
「私の様な小さな行商人でもいいんですか?」
「もちろん、商売は人が大切だ。紹介状を書いてやるからイーストチャイの商会に持って行け」
「フィア、どうするこのまま俺達と一緒に来るか」
「はい、もうここに未練はありません。勘当されましたし。」
「いいぞ、いっしょに行こう」
気分が悪いので、早々に出発する。このまま北上だ。




