47.チャイ大陸(37) 獣人国(1)
まずはイーストチャイから南下して獣人国へ向かう。受け入れてもらえるだろうか。
南下していくとジャングルが広がってきた。草原、湿原もある。
我らの馬車は少し浮いた状態で走れるので、悪路でもなんの問題もない。すいすいと進む。
獣人国といっても首都らしい首都はなく部族会議の行われる『アニマ』の街があるぐらいだ。この街は多種族が共存して暮らしている。部族間の争いが禁じられている区域である。
とりあえずアニマの街へと向かう。イーストチャイからは街道が一本あるだけだ。
街ではチャイ帝国通貨が使えるが、街から離れると物々交換が基本になる。産業は農業、狩猟が主になり、鍛冶屋、道具屋、飲食店、食材店、宿、服飾店、雑貨屋、大工店などが並ぶ。冒険者ギルドもある。
まあ生活の場であり、文化的とは言えない。
文化を求めイーストチャイに行く者もいると言うが、生活していけるかは本人次第だ。出戻りは多いそうだ。
まあここに人類文化を無理やり持ち込むのは良くないだろうな。独自の文化を発展させるのが良いだろう。
『アニマランド』でも作るかな。動物園?とか?
精霊と妖精の里とか無いかな
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リオネルに先行してもらい、長との面会をセッティングしてもらおう。
武闘大会も近いことから族長たちも集まっているようで、会議場での面会となった。
「この度、亜人国を統括する辺境伯を拝命した、冒険者のロイと従者だ。」
「まずは、息子のリオネルの救出に尽力頂いたこと感謝をする。」
「我々はジャパンゲア大陸から訪問する際たまたま遭遇し救助しただけです。」
「辺境伯と言われたが、どうなさるつもりじゃ」
「拝命したばかりで、今は具体的な案はありません。出来れば友好的に話を進めていきたいと思っています。他の大陸の出身ですので、こちらの事情とかを把握することから始めようと考えています」
「「「「「帰れ!」」」」」
族長たちが叫んだ。
長はそれを制して
「今までの帝国の我々への扱いは決して良いものでは無かった。それに関してはどの様にお考えじゃ」
「実情は把握していませんが、人種差別、経済格差、文化の違い、が主な問題ではないかと考えています。
相手がある以上直ぐに改善できるとは考えていませんし、急激な変化には抵抗があると思います。
まずは、抱えている問題を解決していくことから始めたいと思います。
ただし、可能なこと不可能なこと優先順位、実現順位などは調整が必要でしょう」
「友好的と先ほど言われたが、正直我々は人族に良い感情を持っておらん」
「「「「「戦うぞ!」」」」」
族長たちが再び叫ぶ。怖いなあ
「我々は武力は持っていますが、戦いを好みません」
「「「「「腰抜け!」」」」」
叫ぶの好きだなぁ、揃ってるし、練習したのかな。
「我々は帝国の爵位を拝命されましたが、権力に屈したわけではありません
独自に複数の精霊とドラゴンと友誼を結んでいて、この世界の自然を守る事に尽力しています」
「「「「「ハッタリだぁ」」」」」
「ドラファ、頼む」
会議場は天井がないので、そのまま上空に上がり人化を解く。
ぼんっ〜!
「「「「「ぎゃぁー」」」」」
パニックになってしまった。
「しずまれ!」
おっさすがだ、長の一声で静まった。
「もちろん武力で脅して従わせようなんて考えていません。武力がなければ侮られるので示しただけです。
逆に、武力を見せただけでビビるのであればその威勢はハッタリではないですか」
「おやじぃ、だから素直に話せって言っただろ」
リオネルが続ける
「主、茶番に付き合わせてすまん。帝国の扱いに疲弊して虚勢を張ることしか出来んのだ。
せいぜい武闘大会で鬱憤を晴らすぐらいだ」
「めんどくさいのは嫌いだが、しかたないね。とりあえず領土に住むものには味方だと思ってくれ。
問題点と希望を抽出して、解決策を話し合っていこう」
面倒なファーストコンタクトが終わった。
彼らが抱えている問題を解決していこう、それが領主の存在意義だ。




