22.チャイ大陸(12) チャイ菜御殿
いくつかの宿場町を経てセントラルチャイに近づいてきた。
街の近くはチャイ菜畑が一面に広がっている。チャイ菜は1年で何度も収穫できるため、次期をずらして栽培しており、ここセントラルチャイでは年を通して途切れることがない。
「あそこですぞ」
「えっ?」
休息時に商業ギルドのフォーリンが話しかけてきた。
「乾燥工場ですよ。例の。あの丘の上です」
と指差す。先に大きな倉庫みたいな建物が見えた。
「あっあれね。」
「帝都にいる間に連絡を入れておいたので準備は出来ているはずです。
設置をお願いします。」
休憩時間を延長してもらって、フォーリンと乾燥工場に向かう。
責任者と話をして設置場所を決め、アイテムボックスから乾燥室をぽんっと出して設置する。
チャイ菜の集積場の一部を曲がりして乾燥工場を併設する様だ。試運転をしてみる。太陽光や空間魔素などを使い自然エネルギーを使って稼働するため通常運転では燃料補給は必要ない。創業速度を上げたい時は魔力を注入するか魔石を取り替える必要が生じる。
順調に動いている。
ます前工程で、チャイ菜をある程度の細かさに切っていく。それを網の上に並べ、間を空けて何段も吊り下げたワゴンを乾燥室に入れていく。
一回の乾燥で100個分、そして待つことしばし。
扉を開けて網を取り出して大きな漏斗にバサッと放り込み、下に付けた袋に流し込んで密封する。密封容器はスライム袋だ。名前の通りスライムを加工して作った湿度を通さない袋だ。これを出荷して、小売では更に小さな袋に入れて販売するか量り売りにする。
一度の乾燥で大袋1袋分出来た。1分に一つ出来るとして、1時間で60袋、1日7時間稼働させたとして、1日420袋出来る。
販売価格を100g1000ゼニとして、大袋1袋10kgで10万ゼニ、1日で4200万ゼニの売上。
チャイ菜1個の仕入れが200ゼニとして、大袋1袋分の原材料費2万ゼニ。
これに加工費(角切り、出し入れ、袋入、出荷)と輸送費など3万ゼニを差し引いて、5万ゼニ、50%の粗利だ。
チャイ菜の水分量からすると1/5程度の重量になるので、チャイ菜生が1個500gとして100gの乾燥チャイ菜と約400gの水が取れる。
一回100個で40kg、1日420袋で16.8トンの水が同時に出来る。
そしてこの水、『チャイ菜水』をブランド化して売る。
という作戦だ。
チャイ菜水には水の他に、チャイ菜に含まれる揮発成分も溶け込んでいるため、さわやかな風味が残る。
また、チャイ菜の乾燥には熱を使っていないため、ビタミンCも失われにくい。これもブランド化可能だと思うが、この世界にビタミンという概念がない。『極新鮮乾燥チャイ菜』と名付けよう。
乾燥させたものをチャイ菜水で戻すのがベストだろうが、旅には水は重いので持っていかないな。
フォーリンと、にたにたしながら暫く事業展開の話に花が咲いた。皮算用ではあるが見込みはある。
大分乗り気である。
どちらが越後屋でどちらが代官様かはわからないが、「そちも悪よのう」とか聞こえてきそうだ。
何も悪いことをしていないが、雰囲気だ。
商売自体は彼に任せても大丈夫だろう。
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そうだ、チャイ菜を切るのが大変そうだな。
碁盤目状に一気に切れる角切りカッター作るかな。
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これが後にとんでもない利益を出して行くのだが、二人はまだ知らない。
チャイ菜御殿が建つかも




