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ねえ、先生?  作者: 京野 薫
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混乱

 私が自分と言うものを本当の意味で知ったのはいつだったろう。

生物学的な男として産まれはしたものの、物心ついたときにはキラキラした物や可愛らしい物に興味を引かれ、両親が買い与えた男の子向けのオモチャは見向きもしなかった。

服も男の子用の服は嫌がり、女の子用のヒラヒラしたフリルの付いたものや、可愛らしいリボンの付いた物を着たがった。

だけど、パパとママは興味の方向性の問題なんだろうと軽く考えて、私に何度も言い聞かせた。

「昭乃、男の子は男の子らしい格好をしないと」

「女の子みたいな服やオモチャばかりだと、お友達に馬鹿にされるよ」

だけど私には分からなかった。

なんで?

保育園の女の子のお友達はみんな可愛らしい服を着てるのに。

人形やお姫様の塗り絵で遊んでるのに。

自分もその中に混ぜてもらえて楽しく遊んでいるのに。

男の子の中に入っても、男の子の遊びは乱暴で汚くて全然楽しくない。

可愛くもないしキラキラもしてない。

なんで自分だけがそんな中で遊ばないと行けないの?

実際にこの言葉をもっと拙い言い回しで言ったときの両親の彷徨う視線を今でも良く覚えている。

それと時期を近しくして、保育園の年長組に上がったとき世界が変わった。

それまで当たり前のように混ぜてもらっていた塗り絵や人形遊びに段々と入れてもらえなくなってきた。

「あきのくん、男の子だもん。いやだ」

自分では理解できない物。どうしようも無い物。

そんな事に世界が変えられていくようで怖かった。

どうしたらいいんだろう?

お友達とまた遊びたいのに。

訳が分からなくなって、泣きながら先生に言った。

お友達に仲間はずれにされた。

わたし、またみんなと遊びたい。

大好きな先生。

私にとって、この理不尽な状況を変えてくれる唯一の人だと思った。

だが、先生が言ったのは「あきのくん。じゃあ男の子のお友達と遊んでみよう。男の子同士きっと楽しく遊べるから」

おとこのこどうし。

難しいことは分からなかったけど、自分は男の子でそのため男の子と遊ばないと行けない。

それをしなかったから女の子に嫌がられている。

もう女の子のお友達とは遊べない。

それは感覚として分かった。

その時から、時々周囲の景色が薄い膜が張っているように見えてきた。


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