デズモア・ルキフェ4
8ターン目
「お前がそんなことを言うのか……。確かにそろそろ俺も本気を出す必要はある……か。」
デズモア・ルキフェの様子がさらにおかしい。
デズモア・ルキフェの様子がさらにおかしい。
デズモア・ルキフェの様子がさらにおかしい。
さらに二本の腕が生えた。
胴体にライオンの顔が出現した。HPも全快し、今までの戦いがなかったことになる。
そしてすかさず、胴体のライオンが怒りの咆哮を放った。
レイたちの防御力が全て下がった。
「まだ変身するの? それに……、なにこれ? 二箇所攻撃しないといけないの?」
「わかんないっす。でもレイのためにあたしは頑張るからね!」
「私もよ!っていうかぁ、みんな、レイのこと好きすぎぃ! 意味が分からないじゃんー」
フィーネ、エミリ、マリアがレイの後ろでボソボソと話し合っていた。
レイはレイで唖然としていた。
7+1人のLP技で二回目の変身を全て削り取ってしまった。
っというか、これってもうコマンドバトルじゃない。
いや、まだコマンドバトルは実行中ではある。
だからちゃんと交互に攻撃はしているのだが。
「このターン、俺たちが先制攻撃が出来る。でも……、えっと。先に言っとく……、ゴメン。」
「え?どういう意味よ⁉」
「ん-?それって、どういう意味⁉」
「ふぇ?それぇ、どういう意味⁉」
レイは『魔笛』を使った。その音がどこかへコダマする。
RPGあるあるアイテム。
魔物がやって来て、何かをして、帰っていく。
ある意味での召喚術だ。
それをレイはラビから受け取っていた。
だからレイはそれを使った。
そして彼は三人の少女に頭を下げた。
いや、土下座した。
「三人とも車で待っててくれる?」
「なんでよぉ!」
と三人共が同じ声をあげたが、レイの周りに現れた魔物を見た瞬間、苛立ちを覚えたように、車に戻っていった。
レイも唖然としている。
まさかこんなことまで考えていたなんて、と。
☆
ラビ「はーい!ラビちゃん、登場でーす!ご主人!ずっと待ってましたよ!」
イーリ「俺っちが、どうしてここに?」
マロン「それは、私たちの魔王様を助けるためよね?人間の娘には負けないわよ。」
カロン「そう。これはもう人間と邪神の戦いじゃないもの。私たちは魔王様に付き従い、そして添い遂げるものでしょう?」
ボロン「うんうん♪ 私もー、ちゃーんとにゃんにゃんしたいしね♪」
ゼノス「へへへっへへへ」
ボロン「豚、気持ち悪い息をかけないでよ。それにその粗末なものはみんなには見せちゃダメよー♪」
チューリッヒ「わいも呼ばれたんか……。これどういう基準なんや?」
サラ「あれ……。私までいる。」
エルザ「え……。私までいる?それに名前が戻ってる。」
ワットバーン「こ、これは……。魔王様、どういうことでしょうか?」
ドラグノフ「我まで……。魔王様……。これは?」
ベンジャミール「ぬぅ……、最近、物覚えが悪くてなぁ……」
魔王レイ「決まっているではないか。隠居されたヘルガヌス様は穏やかな世界を望んでいる。つまり、新たな魔王軍の設立が必要なのだ。そして今、邪神に乗っ取られんとしている。分かるか?この状況を放っておくことは出来ぬ!ならば我が陣頭に立ち、世界を取り戻す必要がある。だから呼んだまでだ。つまりは役者に戻ってもらうということだ。無論、新たな枠組みとするが……、エルザはどうする?」
エルザ「レイ様のお側にいられるなら。」
アイザ「お姉たま!お姉たま!」
エルザ「アイザ、だめでしょ? 今は勇者様……、いえ、大丈夫ね。魔王様がいるんだもの。」
ラビ「ウチ、あれやりたい!はーとまーくのやつ!だってウチもヒロイン?なんですよね!」
魔王レイ「……。あぁ、そういうことだ。最初から気付くべきだった。この世界は成長している。つまり最初の配役ではあまりにも足りない。ヒロインも絶賛募集中だ!」
マロン・カロン・ボロン「まおうさまー。私たちもいい?」
サラ「え、えと……。私も……、なんか楽しそう!」
エルザ「あたしも参加……しよっかな。」
アイザ「じゃあ、わらわもー!」
魔王レイ「アイザは一度……、まぁ、いい。では皆で行こうじゃあないか。魔王軍のラブアクションを叩き込もうぞ!」
♡
ラビ「ウチ、魔王様と結婚したい!ヒロインなんだよ!だったら結婚しよ!嫁枠って言われたこと、覚えているんですよ、ご主人‼」
魔王レイ「あぁ。勿論だ。ラビは嫁候補トップだからな。これからは男女の関係で行くのも悪くない。」
マロン「私、本当に本当に魔王様と添い遂げたくなっちゃったの。こんな気持ちになるなんてねぇ。」
魔王レイ「勿論、ウェルカムだ。初めてあった頃の再現をもう一度したいくらいだ。」
カロン「ずっと癒してあげるね。私もこんなにときめくなんて。魔王様のことしか考えられないもん!」
魔王レイ「勿論、歓迎だよ!いつでも俺の鼓動を確かめてくれ。いつもドキドキしていると思うがな。」
ボロン「いっぱい血を吸わせてね!それに約束もね?」
魔王レイ「いくらでも!約束、待ってます!今度は俺、仰向けになるから!」
サラ「えと、あんまり知らないけど、えと……、お友達からなら……」
魔王レイ「大歓迎だ!これから知っていけばいい。まずはお茶からで。」
エルザ「ずっとお側にいても宜しいですか?えっと、時々三人で……」
魔王レイ「俺もそうしたいよ。それに二人だけの時も作りたい。」
アイザ「わらわと結婚して!」
魔王レイ「当たり前だよ、さっきも言ったしな!」
♡
イーリ「え、なんすかこれ……。でも、魔王様ならそんなもんだよなー。」
チューリッヒ「まぁ、王様やからなぁ。」
ゼノス「くーん、くーん、くーん」
ワットバーン「う、羨ましすぎる……」
ベンジャミール「ワシ、なんでここにおるん?」
ドラグノフ「英雄、色を好む……か。」
オスカー「そりゃそうじゃ。こりゃ魔族名も変態ドエロ魔王に改変じゃな。」
魔王レイ「って、オスカーいたのかよ!!というわけで、魔王近衛軍、全軍進撃だ!」
☆
魔王軍による総攻撃、しかもラブアタック付きの超絶攻撃により邪神デズモア・ルキフェは450万のダメージを受けた。
「いや、今のが1ターン扱い……だと!?残りHP50万あるとはいえ……、このままではやられ……」
「ここまでだ。コマンドバトルは中止だ!」
⚔
レイが突然のコマンドバトル中止宣言をした。
すると世界は色を取り戻し、通常の地下闘技場に戻っていく。
数百万の攻撃が繰り広げられたとは思えないほど、壁も綺麗なままだった。
この辺りを見ると、ゲームなのだと思える。
「でも、これはゲームじゃないし、ゲーム世界でもない。いや、そうだったかもしれないが、ちゃんと生きている。だからこそ、これからのことを考えたい。デズモア、いやアズモデ。タイムオーバーだ。これ以上やればお前が死んでしまう。」
レイのその言葉を聞いて、車から勇者パーティも駆けつける。
「レイ、どういうことだ。邪神を倒さなければ終われないと……」
「そう……だ。俺を倒さなければ、真の平和など……、おとずれ……ない。」
ぼろぼろになったアズモデがゆっくりと立ち上がって、そう言った。
そんな彼に対し、レイは右手を突き出して、こう言った。
「スキル・強奪!流石にレベルとHPが高いからな。ここまでしないとこのスキルが使えないって思ったんだよ。それにお前の役目はもう終わっている。」
その瞬間、アズモデの体は元のピエロの姿に戻った。
強奪など関係なく、レイは既に彼の役に勝っていた。
つまりレイは数ターン前には彼の役を食っていた。
彼はこの世界に最強の役には不足と判断されたのだろう。
色々とおかしなことがある。
どうして彼は本を持っているのか。
そういう設定なのか。
だから彼はその本をペラペラと捲って確かめた。
そしてふむふむと頷く。
そして彼はこう言った。
「みんな、聞いてくれ。俺は『不殺』を約束させたのは覚えているだろ。だから一撃死のないコマンドバトルを選択した。徐々にHPが奪われる世界なら、ギリギリで止められるからな。」
レイがコマンドバトルを選択した理由はまさにそれだった。
アズモデを殺すなんて考えられなかった。
彼だって、この世界の住民であり、その役をこなしているだけだ。
勿論、皆でわいわいやりたかったのはある。
ただ、あれはあれでかなりめんどくさい。
嫌というわけではなく、かなり時間がかかる。
アズモデさえもレイと比べれば赤子同然になってしまった。
見えない壁さえなければ、瞬殺出来た。
でも、レイの目的はイベント探しだった。
だから死んでしまったら、新たな道が開かないかもしれない。
既に、レイの知らない世界が見え隠れしている。
彼を殺すなんてもってのほかだった。
「それから、この世界は同じ瞬間をずっと繰り返しているらしい。しかも時間が巻き戻るのではなく、作り変えられている。そうじゃないと、俺がクリアした実績が証明できない。それにこの本に書かれているのは、間違いなく昔の俺からの要望書だ。」
もっと経験値稼ぎ出来るようにしたい。
ヒロインイベントの時に敵は現れないでほしい。
戦い慣れたから、敵をもっと強くしてほしい。
残酷描写が見たい。
ヒロインの好感度を上がりやすくしてほしい。
円滑にクリアできるようにして。
サポートが足りていない。
などなど……。レイはそれを見て、最後にその本に書き足した。
無論、モンスター語で書くのでアズモデにも読める。
『アズモデはよく頑張った。もう悪者ぶらなくていい。 by ニイジマレイ』
と書き足した本をレイはアズモデに見せた。
そして、彼は膝から崩れ落ちた。
「もう、自由にしていい。こんな本は……」
びりびりに破って、二度と読めなくした。
もう、こんなことを繰り返さない為。