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明日に持ち越し


武器屋に行ったのにもかかわらず、防具だけ購入して肝心の武器を買い忘れるのはうっかりにもほどがある。


乙葉は、自身の重大なミスに頭を抱えた。いや、気がついたのがここで良かったと考えるべきか。森についた段階でこの事に気がついた方がショックはでかかっただろう。


このまま強行突破して森に行くのはかなりチャレンジャーだ。たとえGランク冒険者向けの依頼であっても、危険なのは危険。

そもそも、冒険者ギルドに依頼が来るということは一般的な町民では対処ができないからであって、武器未所持で森へ行くのはよほどのアホか自分を過信しいるだけのやつだろう。


「引き返すか」


草原を駆け回る小雪を呼び戻した乙葉は、自分のミスに肩を落としながら来た道を引き返した。これではただのピクニックである。


門番兵は、先程出ていった乙葉が早々に引き返してきたことに首を傾げていたが、すぐに生暖かい優しい表情を浮かべた。

どうやら、何かを用意し忘れ引き返してきたと思ったようだ。正解である。


ただ、その門番兵もまさか武器を用意し忘れて引き返してきたとは思わないだろう。


こそこそと身を縮こませ、足早に武器屋に向かい初心者向けの短剣を一つ購入。依頼は明日にして、今日は今の所持金で泊まれる宿を探そうと目的地を森から宿へと変更する。


出鼻を挫かれるようだが、自業自得なので文句を言う事もできない。


ロザクローはおおよそ円形の形をしている。町は大きく5つのエリアに分かれ、町の中心地にある大きな噴水のある周辺は中央区、東西南北に一ヶ所づつある門周辺を東区、西区、南区、北区と分けている。


中央区には主に、多種多様な商店が軒を連ね。西区には町民たちの住宅地、北区には冒険者ギルド、商業ギルドなど施設が立ち並んでいる。


そして、乙葉が今いる東区は宿泊街。冒険者向けの宿から観光客向けの宿まで、多種多様な宿がやってくる人を迎えるように建っている。


東区に入って一番に目に入るのは、豪華絢爛な外装の宿屋。店先では観光客を引き入れようと若い男が活気よく大きな声を上げていた。


店屋の建ち並ぶ中央区とはまた違う活気のある場所だ。

店先にある料金表をみつつ、どの宿に泊まるか吟味していると他の宿とは少し離れた場所にポツンと宿屋が一軒建っているのに乙葉は気がついた。


他の宿屋より遥かに年季の入っているように見える。外装にはおびただしい量の蔦が我先にと伸び、宿屋の看板は少し斜めっている。


営業中なのかも疑わしいその店に、乙葉は自然と足を進めていた。


店先には他の店のように料金表は置かれていない。やはりこの宿は閉めているのかもしれない。引き返そうとしたとき、ドアがガチャリと音を立てて開いた。


中から出てきたのは、中年の女性だった。ふくよかな体つきに、赤毛を一つに結い上げられた髪は三つ編みにして肩から垂らしている。


「おや珍しい!!お客さんじゃないか!!」


女性は、乙葉の顔を見ると破顔一笑して宿の中に招き入れるようにドアを大きく開けた。


「ここは営業されているんですか??」


「あぁ!!営業中さ!!……と言っても、見ての通り閑古鳥がなく状態だけどねぇ」


店の中には他の客らしき人はいない。他の宿屋にある賑やかさのない宿の中をチラリとみた女性は寂しそうに笑った。


「一泊の料金はおいくらですか??」


「一泊食事付きで銀貨一枚だよ」


「え!?」


驚きで音羽の声が裏返る。というのも、他の宿はどれだけ安くても銀貨三枚なのだ。その銀貨三枚も食事なしの金額で、この宿がいかに格安なのか理解できる。


「銀貨一枚でいいんですか!?」


「あぁ、まぁボロい宿だし、冒険者向けの宿だからね!!豪華絢爛な寝床と料理は用意してやれないが、温かい寝床と料理は用意してやれるよ」


なんてことだと、乙葉は目を輝かせ女性の手を握った。


「一週間程連泊できますか??あと私獣魔を連れていて、その子の食事も用意していだだきたいのですが!!あ、もちろん追加料金も払います!!」


「お、ぉぉ、任せな!!」


必死迫る乙葉の圧に、女性は若干引きつつ頷いた。



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