忘れてた。
ポーションを手に入れた後は昼食になるようなサンドイッチなどを買い込み、準備が終わった乙葉はその足で薬草の依頼達成を目指し町はずれの森へ向かっていた。
薬草は比較的わかりやすい物で、森へは歩いて十数分ほど。現在の時刻は太陽の位置などからお昼ごろと推測したため向かう事を決めのだ。これなら行って帰っても夜には町に戻れるだろう。
早々に宿を探して寝たかったのだが、昼夜逆転するのも困る。それにずっと座り仕事ばかりしていた乙葉にとって外の空気を感じながら歩くことはリフレッシュにもつながった。
ロザクローには東西南北に一ヶ所づつ門がある。乙葉が入って来たのは南門で、町はずれの森があるのは北門から出ると一番近い。
「分かりやすい地図を借りれてよかった」
北門でギルドカードを提示、門を抜けると平原が広がっていた。その向こうには目視で小さくだが森が確認できる。気持ちのいい風を感じながら、森を目指す乙葉の影からひょっこりと小雪が顔をのぞかせた。
「今人もいないみたいだし、出てきてもいいよ小雪」
返事をするように一鳴きすると小雪は陰から姿を現し、じゃれつくように乙葉に頬ずりをする。その姿はいい子にしていたよ褒めてと言いたげだ。
草原にできた道を歩きながら、良さそうな木を見つけ足を止める。あそこで昼食にしようとピクニック気分で先ほど屋台で手に入れたお昼を取り出した。
「小雪にはこれ」
買い取りで手に入れたお金はすべて小雪がいたおかげなので、屋台で焼いていた大きなお肉を買っていた。モンスターがペットのような扱いでいいのかどうなのかわからないが、一応と薄味にしてもらっている。
美味しそうにガツガツと食べ始める小雪の横で、乙葉もサンドイッチに口につけた。素朴な、味だった。素材の味を生かした、というより調味料の味がない。
「これはこれで美味しいか」
サンドイッチを咀嚼しつつ、早々に食べ終えた小雪が草原で走り回るのを見守る。流れる雲に、柔らかな風、風に揺れる木の葉の音。ボーっとしているうちに徐々に思考が現実に戻っていく。
「私、武器買ってない」
そして重大な問題に気が付いた。