乙葉、親になる
「え、絶滅??」
「はい、絶滅したドラゴンです。この種は比較的に穏やかな性格のものが多く、しかしドラゴンとしてのパワーは保持してますから。そこを人間に狙われたと聞いたときがあります」
過去の文献に…とエルダーが部屋にある小さな本棚から目的の本を探し始める。しばらくしてあったあったとある1ページを乙葉の前に広げた。
そこにはふわふわの毛に覆われたドラゴンが記載されていた。
毛色はクリーム色の柔らかな色合いで、ドラゴン特有のがっしりとした四肢に大きな羽を持ち、長い尻尾も特徴的だ。
過去このドラゴンは富裕層がペットとして飼うことが多かった。自分たちの権力を見える形でと考える者が多かったのだ。
それ故に乱獲は止まらず、ついには絶滅してしまった。
「いや、でもどれだけ穏やかな性格といってもドラゴンですよね??危害を加えられたら怒りそうなものですけど」
「生まれる前の卵が狙われたようです。彼らドラゴン種は敵には容赦ありませんが、仲間や家族に対して愛情深い生き物ですから。孵化した時から一緒ならそれはもう彼らにとっては家族です。例えそれが母親と引き離した元凶であっても……彼らはそれを知りませんから」
「……人間がゲス過ぎて自分も含めて消滅させたい」
強く握り込んでプルプルと拳が震えた。魔王になって人間を滅ぼして私も死ぬとばかりの怒りように、エルダーは少し引き気味になりつつ乙葉を落ち着かせようと動いた。
「……この卵は適切な施設で、丁重に扱っていただけるんですか??」
魔法の影響で孵化するのかは分からないが、雑に扱って良いとは思えない。乙葉の気持ちを理解したにエルダーは当たり前だと頷いた。
「えぇ、勿論ですとも」
「なら、よろしくお願いします」
机の上に置かれた卵の表面を優しく撫でる。良い人の元で幸せに暮らすんだよと何度も何度も撫でた。
「さて、今回の報酬のお話をさせていただきますね。今回は単独での未開拓遺跡の調査ですので、こちらの金額になります」
「滅茶苦茶、貰ってますけど大丈夫なんですか??」
見るにこの先2ヶ月は何もしなくても生活できそうな金額なんだがと金額が記載された紙を指さした。
「未開拓遺跡ですからね」
2人がそんな会話をしていると影から顔をのぞかせた小雪が気づいてとばかりに『ウォンッ!!』と一鳴きした。
「何??どうしたの小雪」
小雪は鼻先を卵の方へ向ける。それにつられて卵に視線を向けると、卵に先ほどまでなかった亀裂が入っていた。
嘘だろ!?と乙葉もエルダーも慌てた。どういう事だと2人で慌てていると、卵の亀裂は寄り深く大きくなっていく。
「ちょ!?え!?生まれる感じ!?ドラゴンって温めなくても生まれるの!?」
「いや、私も聞いたことないんですが!?」
ついに卵はパカリと2つに割れた。中にいたのは先ほどの淡いクリーム色の毛に包まれた小さなドラゴンだった。
体よりも小さな羽をパタパタと羽ばたかせ、物珍しそうに辺りをキョロキョロを見渡す。
そして、乙葉の姿を見つけるやいなや「キュイッ!!」と可愛らしい声を上げた。
パタパタと小さな羽を羽ばたかせて乙葉の方へと飛んでいく。
その動きは見ていてハラハラするほどつたないもので、慌てて差し出した彼女の両手にドラゴンは無事に着地してみせた。
「ど、どうすれば??」
震える手でドラゴンをエルダーに見せると、彼は困ったように考え込んだ。
試しにと彼が手を出せば、怖がるような威嚇するような仕草を見せる。
「これは駄目ですね。もう貴女を親だと思ってますよきっと」
「いやそんな簡単に……」
困惑する2人を置いて、ドラゴンは乙葉に甘えるよに頬擦りをする。キュイキュイと可愛らしい声をあげるのも甘えている証拠なのだろう。
指先でその頭に触れて撫でてやると、より一層嬉しそうに羽と尻尾を揺らした。
「まぁ、オトハさんが育てたら良いと思いますよ」
「えッ!?そんな困りますよ!?」
「そんなにすでに懐いてる子を引き剥がすのは可哀想で私にはできません」
「色々と面倒くさいだけでは!?」
「本部には、私から良いように言っておきますのでご安心を!!」
やいのやいのと騒ぎ立てる乙葉をエルダーは部屋の外へと追い出した。
「私はこれから書類仕事がありますので、ドラゴンの育て方はこの本を参考にしてくださいッ!!頑張ってください新米ママッ☆」
ポンと渡された本を受け取る隙にドアは完全に閉められた。ぐぬぬと消化しきれない思いに変な声が出る。
「……しょうがない。とりあえず帰ろうか」
見えると困るかと布でドラゴンを包み込む。その間も抵抗するような様子もなく、なんならすでにドラゴンは眠っていた。
「……一応、新米冒険者なんだけどな私」
ここに新米冒険者兼新米ママが爆誕した。




