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わくわくな冒険の始まりとは


木の匂いと土の匂いが鼻腔をくすぐる。夢心地のような気持ちがいい場所で、乙葉は寝転がっていた。またこのパターンかなんて思いながら、視界に現れた子犬に顔をなめられる。


むくりと起き上がる乙葉の周りを、子犬は尻尾を振って駆け回っていた。何を言いたいのかはわからないが、とりあえず遊べと言っているのだろうか。


近くに転がる適当な小枝を持つと、少し遠くへ放り投げる。


「さて、それにしても森の中スタートはひどくない??」


放り投げた小枝に一目散に走っていく子犬を横目に、乙葉は大きなため息を漏らした。


できればどこかの宿屋のベッドとかの上で目が覚めたかった。あ、そんな都合良いわけない??あ、そうですか。


とりあえず立ち上がって、自分の着ている服装を確認してみる。薄っぺらいシャツにテロンテロンのスカート。


パンツ透けそうだなとスカートを触っていると、ポケットに何かがある事に気づく。触った感じからして紙のようなそれを取り出すと乙葉は不振がりながら開いた。



【  異世界でのびのびくらそう!


ステップ:1 子犬に名前を贈ろう!

       

名前を贈ることによって主従の絆がより深まります!


ステップ:2 第一の町へ旅立とう!

       

ここから一番近い町は『ロザクロー』ここでは冒険者ギルドに入れます。小銭稼ぎをしましょう


ステップ:3 アイテムボックスを使おう!

       

創造神からのギフト≪アイテムボックス≫の使用が可能です!

使い方は簡単!ただ念じるだけです!現れた魔法陣に手を突っ込めばOK☆

ちなみに中に入る容量は無限ですが、生き物は入りません!


ステップ:4 全力で楽しも!        


これは貴女の物語、全力で楽しみましょう】


内容の前に、カラフル過ぎないか。


読み終わった乙葉は、その異様にカラフルな手紙に眉をひそめた。ペンの色は一行ごとに変わっているし文字の周りには意味の分からない生物の落書き。

読み手をここまで混乱させる手紙もなかなかない。ある意味才能かもしれない。


「それはさておき、名前かぁ」


顎に手を当てて考える乙葉の足元で、小枝を地面に置いた子犬が甲高い声で鳴く。持ってきたよ!!褒めて!!と全力で尻尾を振っている子犬の頭をそっと撫でた。


「小さなふわふわした白い毛玉。……そうだ、お前の名前は小雪にしよう」


どうかな??と乙葉は子犬を見下ろし首を傾げた。実家のペットも妹が名付けていたし、実家を出てからはペットを飼う余裕はなかった。名づけるという経験がない彼女は、謎の緊張感にドキドキしていた。


「小雪??」


「わんっ!」


恐る恐るもう一度呼ぶと、子犬改め小雪は目をキラキラとさせて返事をするように吠えた。

どうやら、嫌ではないらしい。乙葉ホッと息をついた。


「じゃあ、行こうか」


「わんっ!」


白くて小さなフワフワの子犬。小さな雪のようなその子に乙葉は笑みを浮かべた。


剣でもなく魔法の杖でもない。攻撃力皆無って最初からつんでないか?と思いはしたもの、話し相手がいるのは良いものだなと思い直す。


話しかけて返事があるのは嬉しい。理解しているかしていないかはさておき。


とはいえ、ここは一応剣と魔法の世界らしいのでRPGのようにモンスターが出たら即死不可避なのを忘れてはならない。


正直そこが心配でならないと、今一度自分の服装を見直した。

これ、無理よな??モンスターがもし出てきたら死ぬくない??と乙葉はシャツを掴んだ。


とりあえず、足元をぴったりくっついてくるこの可愛い子犬だけでも守り抜かねば。


「まずは、目指せ第一の町だね。それまでモンスターとかには出会いませんように」


合掌して手のひらをすり合わせて、お願いしますお願いしますとお祈りを繰り返す。天に届け私の祈り。


「と言いつつ、ここがモンスターのいない区域の可能性もあるし、そもそもモンスターがいない可能性もあるわけだ」


「くぅ??」


何を言ってるんだと小雪が首をかしげる横で、乙葉はうんうんと自分の考えに何度も頷く。


そもそもここが異世界でない可能性もないこともない。なぜなら右を向いても左を向いても森しかないから、現在異世界である判断材料がない。

もしかすると、あれ??知ってるはこの風景!!となる可能性もある。


モンスターの不安からか、先程から一人脳内会議に熱が入る。

しかし、ふと乙葉はその会議を中断した。


《そういえば、モンスターの事で頭がいっぱいだったがそもそも道がこっちであってるのか》


新たな議論内容が浮かんだからである。


普通冒険の始まりとはもっとワクワクな感じではないものか。後先考えず、やったるぜぇええ!!みたいな感じではないのか。


普通の冒険者がよくわからないが、現在の乙葉の脳内の九割は心配事で埋め尽くされていた。


「え、待って不安になってきた」


新たな不安要素に、立ち止まる。あのカラフルな手紙を見直そうと乙葉がポケットに手を入れた瞬間、隣にいた小雪がある一点を見つめて唸り声をあげた。



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