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新たなる仲間



心が震えた。言葉にはできないほど美しいその姿に。


空を羽ばたくグリフォンの姿に、感動し一人盛り上がっていた乙葉は恥ずかしげに頬を染める。

意味もなく前髪を触り、俯く彼女の姿にグリフォンは微笑した。


「なんですその生暖かい視線は。子供だなって思ってますか??」


どこか子供を見守る親のような視線に気がついた乙葉は、ジトリとグリフォンを見上げた。

しかし、向けられた当のグリフォンは気にした様子もなく鼻で笑う。


(我からすれば、お前は赤子同然だ)


「そうか、長寿ですもんね!!……ってそうじゃなくて。その生暖かい目がですね!!ムズムズするのでやめていただきたいと言いますか!!」


人間とモンスターの一生は確かに違う。圧倒的に人間のほうが短命だ。グリフォンはその中でも長寿の種族なので、彼の言う通り乙葉を子供のように思っても何らおかしくはない。


しかし、乙葉からすると一応成人した女性である。いや、現在は未成年だが。そのような視線を向けられると居心地は少し悪かった。

悪寒を感じる類の居心地は悪さというよりは、恥ずかしさからくる居心地は悪さなのだが、どのみち居心地は悪いのには変わりない。


(さて、人の子)


「はい。あ、もう旅立たれますか??」


助けたお礼はしてもらえた。雄大な空を羽ばたく美しい姿を見せてもらえたのだ。

そのまま、ここでお別れだと一歩下がる乙葉にグリフォンはじっと空を見上げた。


(そのことだが)


「はい??」


(気が変わった)


「え、……ん??」


気が変わるとはどういうことだろうか。脳内をフル回転させる。もしや、やはり捕食してやるという意味なのではと考えついたときサッと顔から血の気が引いた。


「あの、私美味しくないです!!三食満足に食べれないことなんてよくありましたし、睡眠も十分に取れてないし、肉は残念ながらそんなについてないですし!!いや、付いてほしいもころにもついてないスットントン体型ですし!!あ、もしかして骨とか好きですか?私の骨は不摂生の所為できっとカスカスです!!」


前世の体の状態と今の状態が同じかどうかは分からないが、視覚のみなら前と同じだ。ということは、あの無理をしてボロボロだった体とあまり変わらない状態だろう。

最近は、宿で朝食と夕食は用意てもらっているため食べるが、モンスターの資料などを読みふけっていた少し前はご飯を食べ忘れることもたびたびあった。


乙葉は基本的に一度集中すると、周りが見えなくなる所がある。

食事を忘れ、寝るのだったおろそかにし始めるのだ。


全然まったく褒められたことではないが、自分がいかに美味しくないかはきっと伝わっただろう。

謎の達成感に、言い終わった乙葉は一息ついた。


(??)


「??」


しかし、グリフォンは目を瞬かせ首を傾げた。同じように乙葉も首を傾げる。


(何の話だ)


「え??」


(よくわからん勘違いをしているところ悪いが、お前の思っていることはせんぞ)


「あれ??」


(あと、食事はしっかりしたほうが良い)


「え、あ、はい」


(睡眠もだ。人間はそのような当たり前の習慣を怠ると短命になるぞ。そもそも、我らからすれば元々短命な生き物だというのに)


「あ、すいません」


すべて正論で、言い返す言葉もなかった。乙葉は自然とその場に正座し、グリフォンからしばらく説教を受けることになった。


あれ??どうしてこうなった??と誰が思うだろう。それは他でもない乙葉自身もだった。


「で、でもですね!!最近はちゃんと食事も睡眠もとってますし!!健康的な生活を送ってます!!はい!!」


(まぁ、それなら良いが気をつけるのだぞ)


説教から解放された乙葉のそばに小雪が寄り添う。あぁ、癒やしよ!!と小雪を撫でているとグリフォンに向かって小雪が何度か吠えた。


「小雪??どうしたの??」


まさか!!かばってくれているの!?全世界中の皆さん!!うちの子見て!!こんなにも可愛い!!とテンション高めに小雪を撫で回す乙葉に、グリフォンは重いため息をついた。


(少し前に、飲まず食わずで寝る間も惜しんで本を読みふけっていたというのは事実か??)


「ちょっ!?え!?」


(事実か??)


いやあの……あのときはとしどろもどろに言いつつ視線をそらす。まさかの伏兵の攻撃があるなんて聞いてない。恐らく、ギルドの保管庫に入り浸っていた時期のことを言っているのだろう。

小雪ちゃんめ!!と頭上にいる小雪を見上げると、綺麗に視線をそらされた。


「少しの間ですよ!!モンスターのことを何も知らないで冒険者をするのは危ないですし。私、クソ雑魚冒険者なので」


(よくわかった)


言い訳を必死にする乙葉に、何度目かの思いため息をついたグリフォンは自身の中で何かを決めたように一度だけ頷いた。


(お前の獣魔になってやろう。喜べ人の子よ)


いや、全く喜べないんですがと乙葉の表情が語る。グリフォンを獣魔に従える冒険者など悪目立ちするに決まっているのだ。

しかも、乙葉は冒険者を始めて日が浅い、まだ初心者マークも取れてない駆け出し冒険者だ。


「お気持ちは嬉しいのですが……あの」


(お前の従魔となり、お前が不規則な生活を送らぬように見張ってやろう)


ふんと満足気にグリフォンは鼻をならし、乙葉はとんでもないことになってしまったと慌てた。従魔というより、監視者のような感じがしてならない。


(さぁ、契約をするぞ)


「え!?いや、あの、ちょッ‼」


流れるように契約が進んだ。え、こんなにあっさりというほどあっという間に。

こうして、新たなる仲間??というよりは親のような存在が乙葉にできたのである。





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