1-1 冒険の始まり
時計を見ると、針はもうすぐ9時をさそうとしていた。
街灯がぽつぽつと光をともしているが、
全体的に薄暗く、星が綺麗に見える。
部長、大丈夫かな?・・・
先ほど、お得意様を一緒に接待した部長に思いをはせる、
同じ営業部の部長は、おおらかで仕事には厳しく、
尊敬できるすごくいい人なのだが、いかんせんお酒に弱い。
ちょびちょびとグラスのお酒を飲んでいただけのはずだが、
先ほど別れた時は、顔は真っ赤で、足は千鳥足。
何とかタクシーを掴まえ、部長の自宅の住所が書かれた、
身分証明書をタクシーの運転手に見せて、見送った所だ。
そんな部長の代わりに、部長の5倍はお酒を飲んだ自分は、
少しほろ酔い程度で、少しふわふわして気分が良い。
お酒に弱くなく、まったく酔えない程強くもない、
部長を見ていると、けっこう人生得しているなと思う。
そんな事を考えてながら、会社が借り上げて住んでいる、
小さなアパートを目指していると、いきなり足元が光りだした。
?
意外と酔っているのか?
上から光を差すような物はないよな、周りを見渡す。
すると光はどんどん強くなり、大きくなっていく。
すると、いきなり足元が消え、ジェットコースターで、
トップからいきなり急降下したような感覚に襲われる。
うおっっ!!
思わず目を閉じる。
ドッキリとかじゃないよな?芸能人ならまだしも、
入社1年目の中堅会社の、何の変哲もない平社員に何かしかけても、
笑いと視聴率は取れないぞ?
そんな事を考えながら、光に吸い込まれていった。