疲れてしまった男の違う世界で始める生活
ああ、いつからこういうことを考え始めたのだろう。
小さい頃は悩みなどなかった。
いや、その頃の自分にとっては大きなことであったのだろうが、今考えるとそんなものはどうでもいいことだった。
現在21歳。とある医療系の学校に通う学生である。
なんとなく決めた道だった。
その学校が家の近くにあったから、入学した。
ただ、その道がなんとなくで決めていいほど簡単なものではなかったからこそ今こんな後悔をしているんだろう。
周りの人が悪いわけではない。
自分が真剣にやってなかったことなどもちろんない。
いずれ、やりがいを感じることができるだろうと思った。
真面目にやってれば結果がついてくるものだと思った。
だが、そう考えていたものは、その職場に行ったことにより打ち砕かれた。
その職場に研修に行き始めてもうそろそろ2週間経つ。
その職場の教育担当者はとても良くしてくれた。
研修というものにストレスがなるべく付き纏わないようになんでも相談してくれと、仕事自体忙しいだろうに気を遣ってくれた。
だが、その職場で経験を積んでいるうちに自分がいかにその職に向いてないか、いかにその分野が苦手で、自分にとって辛いものだったか痛いほど実感できた。
その場所の光景を見ると、
その場所の匂いを嗅ぐと、
その場所の音を聞くと、
その場所のことを思い浮かべると、
気持ち悪くなるくらい精神がおいやられてしまっていた。
今は午前3時。
まだ起床時間まで3時間ほどある。
いつもみたくそのことを考えすぎて起きてしまった。
汗をかいている。少し喉が渇いた。
キッチンに行き、コップに注いだ水を飲み干す。
まだ暗い闇の中で、考える。
出来るなら人生をやり直したい。
また一から自分の人生を選び直したい。
叶うならば、此処ではないどこか遠く、自分の事を知らない世界に行きたい。
本来叶うはずのないその思いを頭に浮かべながら、また布団に潜り込む。
明日も早い、早く寝よう。
自分の体淡く光出したことも知らず、また、浅い眠りについた。
翌日の朝、世界から200の生命が消息不明になったことも、大きくニュースに取り上げられたことを、主人公も含め、まだ誰も知らないことだった。
ーーさあ、少し出掛けようーー