君の隣を歩きたい
「好きです」
初秋の昼下がり僕、藤橋 大が君に送った言葉だ。君は少し困った顔をして「ごめんね」って言ったよね。これは僕の心に咲いた君という花の物語だ。
君、富田 柚子に出会ったのは高校に入学したときだ。緊張と不安に包まれた僕の高校生活の始まりに君はそれら全てをかき消すような雰囲気で現れた。
「おんなじクラスですよね!お願いします。」
「あ、お願いします」
最初に話しかけられたときにはこんな感じだったかな。肩にかからないぐらいの長さのショートカット、背伸びしても僕には届かない背丈、そしてほのかに香る柚の香り。
高校生活に慣れた5月ごろのこと僕は初めてバドミントンという競技を始めた。そんな僕の前に現れたのはほのかに柚の香りを漂わせる君だった。
「バドミントン部入るんですかー?」
「うん、多分ね」
「私、小学生の頃からバドミントンやってます。こないだも試合出たんですよ」
少し頬を赤らめて君は楽しそうにバドミントンの話をした。「すごいね」
今思えばそっけない態度だったかもしれない。でもこうやって返した気がする。
「まぁ、始めるなら頑張ってください。バドミントンは大変ですよ!」
「ありがとう」
僕はこのとき全くバドミントンのころなどわからなかった。バドミントンという競技を好きかもわからなかったしどういう競技かもわからなかった。ただはっきりと今でも覚えていることがある。僕が高校生活の部活に緊張や不安を持ちながら行った時ほのかに香る柚の香りに高揚感と安心感を覚えたんだ。そして僕は彼女のバドミントンを初めて見た。その時だ。大人しくてか弱そうな君が僕の中で憧れそして目標に変わったのは。




