プロローグ
ゴブリンとは、緑色の小鬼のことを言う。
何より己の欲望に忠実であり、主に見習い女剣士を陵辱するという欠かせない役割を担っている、ファンタジーの世界では有名な存在だ。
あの小さな体で機敏に動き回り、獲物を翻弄して捕らえる。しかしパワー不足が故に、一対多勢でなければいとも容易く狩られてしまう。
ゲームで雑魚キャラとして登場することが多いのはそのため。
もちろん、製作者たちに不遇なステータスを与えられることも多々ある。
なぜなら彼らは弱小なゴブリンだから。
醜い、悪の化身……緑小鬼だからだ。
「よく聞けお前ら。俺に指揮権を委ねたからには、これからは一切の妥協も許さないからな」
「「「「「「「イエス、ボス!」」」」」」」
「いや、だからめちゃめちゃキツイ訓練とか司令とか課しちゃうんだぞ? 本当にいいのか、それで?」
「「「「「「「イエス、ボス!」」」」」」」
「一日一人、人間の女を献上しろとか無茶振りしちゃうぞ⁉︎」
「「「「「「「イエス……ボス!」」」」」」」
「なんだ今の腑抜けた返事は! 俺についてこれる自信がないなら、この話は無かったことにするぞ⁉︎」
「「「「「「「イエス、ボス!」」」」」」」
「そこはノー、ボスだ馬鹿者どもが!」
「「「「「「「イエス、ボス!」」」」」」」
どうしたものか。
突然家に上がり込んできて、俺にボスになって欲しいと懇願してくる異世界からの来訪者たち。
別に異世界の住人が迷い込んでくることは珍しくはない。だがよりによって、向こうの世界の嫌われ者『ゴブリン』が七匹も、初対面のはずなのに俺に懐いている。
意味が分からない。
完全に理解不能だ。
原則として、迷い人のこちらへの滞在は任意に委ねられ。犯罪に手を染める危険性のある迷い人は、第一発見者がキチンとした証拠と書類手続きを終えれば強制送還できる。
明日の放課後に手続きを終えるまでの辛抱……か。長い。
取り敢えず、証拠だけを揃えておくか。
「よ、よーし。いい返事だ小鬼ども。だが簡単に俺の下僕にしてやるわけにはいかんぞ。今からお前らに試練を与える」
「「「「「「「イ、イエス……ボス!」」」」」」」
「まずは……んーそうだな、隣の家に住んでる幼馴染の勝負下着を奪ってこい。あと、ついでに入浴中の写真でもあるといいな、うん。と、まあそんなところだ。行ってくれるか?」
「「「「「「「イエス、ボス!」」」」」」」
どうせなら、うん。そう、あくまでゴブリンを強制送還するために物証を収集するだけだ。
決してやましい気持ちがあるわけでも、コギャルになってしばらく口を聞いてくれない幼馴染の勝負下着を拝見したいわけでは……ない、とは言い切れない。
「よし、ゴブリンたちよ、この一眼レフカメラを持って出発せよ!」
「「「「「「「イエス、ボス!」」」」」」」