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忘却の彼方  作者: 志具真
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一章2

「はぁ・・・はぁ・・・」

さすがに人を背中の乗せて走るのは体力が持たないであろう。


「玲・・もう大丈夫、走れるわ」

震える声に「大丈夫か?」と尋ね「えぇ」と返事を受けた玲慈は速度をゆるめて霞を降ろす。

「とりあえずもっと遠くに行くぞ!」

2人は走り続ける、何も考えられない、ただ遠くに、アレと離れたい一心で走り続ける。

どれだけ走っただろう、最早限界が近づいてきている。

周りを見ても逃げ惑う人々だらけ、どこか安全に隠れる場所は無いかと辺りを探す。


「ぎゃぁーーーー」


再び悲鳴が聞こえる。

反射的に悲鳴の方向を見るとそこにはアレとはまた違う何かがいた。

見た目はまさに犬、だが決定的に違う部分がある。目が一つしかついていないのである。

顔の真ん中についている大きな目玉をぐるりと動かし辺りを見回す。

そして何より危険なのが

「いったい何匹いるんだよ・・・」

先程のアレは1匹であったのに対して今度の犬モドキは群れを成しているのか4匹はいるようだ。

獣たちは次々と人に襲いかかっている。

どこへ逃げようか考えていると1匹がこちらに勢いよく向かってくる。


だ・・駄目か、と思ったとき人の気配が隣にあった。

そして真横から聞きなれない音が響いた。


パンッ パンパン


こちらに向かっていた獣に何かが当たり、衝撃に耐え切れなかったのかそのままの速度で横転し目先の危機は回避された。

動かなくなった獣を見ると血が流れているのか地面が赤く染まってゆく。


音の発生源が気になり横に目を向けると一人の男が手に拳銃を持ち、獣に向かって構えていた。


「こおおおおらぁぁぁああクソ犬がぁぁーーぶっころしてやる!!!」

右手に青龍刀、左手に拳銃を持った男の咆哮。

違った意味で現実からかけ離れている光景に霞は思考が停止している。


パンパンパン


男は容赦なく拳銃を発砲し続ける。その表情はまさに鬼というべきか。

はじめの1匹は拳銃に意識がなかったのか簡単に当たったが、残りの3匹は右に左に動き回り、当たりそうではあるが、直撃といったことはない。男は内心このままでは駄目だと思っているが発砲をやめることはできない。隙を見せれば一斉に襲い掛かってくることは必至。

右手に持っていた青龍刀を捨てて用意してあった2丁目の拳銃に手をかけ狙いを定める。

男の弾が尽きるのが先か獣が撃ち抜かれるのが先か、まさに緊張の時であった。


拳銃の音が鳴り響く中、玲慈は男が捨てた青龍刀をジッと見つめていた。

心の中が熱い、戦えと何かが叫ぶ、まるで自分はずっと戦火の中で生きてきた人間であるかのように、それが自分の居場所だと、誰かが自分に「語りかけてくる」

逃げることを考える一方、戦うことも考えてしまう。

自分の気持ちが判らぬまま一つの答えが出る。

このまま殺されるぐらいなら・・・玲慈は覚悟を決めた。


「おっさん!ちょっと借りるぜ!」

捨てられた青龍刀を拾い残りの獣に向かっていった。


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