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忘却の彼方  作者: 志具真
8/20

一章〜終わりと始まり〜

ぽかぽかと暖かい陽気に包まれた昼下がり、玲慈と霞は近所の公園に来ていた。

「なつかしいね〜この公園」

まるで昔を思い描いているような顔をしている。

「あぁ、本当になつかしいな」

玲慈も小さい頃はこの公園でよく遊んでいた思い出があるため頬が緩む。

「ねぇ玲・・・」

霞が何かを言おうとした瞬間、急に世界が一変した。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ


それはおよそ体験したことのないほどの強さの地震。

立つこともままならぬその強さに玲慈と霞は倒れることしかできなかった。

次第に揺れが収まり、少し落ち着いた所で辺りを見回すと多くの人が外に出てきていた。


「い、今の地震すごかったね玲・・・・?」

玲慈のいる方向に振り向くと玲慈はただ一点を見つめている。

「何?どうしたの?」

不思議に思った霞は玲慈が見ている方向を見ると、そこには一本の大きな光の柱があった。

「え・・・?何?あれ、なんなの?」

今まで見たこともない光景に取り乱す霞。対して玲慈はその光の柱から目を離そうとしない。

「あ・・あれは・・・」

玲慈が言葉を発したその時、頭の中で何かがフラッシュバックした。



白と黒のモノトーンの世界

見たことも無い女性が何かを言っている

口は動いているのだが声は聞こえない

その表情はとても悲しそうで、見ているこちらまで悲しくなってくる気がする

「何を・・・何を言っているんだ!」

玲慈は女性に向かって叫ぶ

だが彼女には聞こえないのだろう、悲しそうな表情も動いている口も変わらない

「くそっ・・・どうなってるんだ」

まったく理解できない状況にどうすることもできない玲慈

誰かが呼ぶ声が聞こえる

「この声は・・・霞!」



「・・・い!玲!」

気がつくと目の前で必死に呼ぶ霞の姿が目に入った。

「どうしちゃったの?玲!大丈夫?」

心配そうにこちらを見つめる霞。

「あ、あぁ、大丈夫だよ。心配かけてごめん」

先程のことは一度頭から外して再度光の柱を見る。

「さっきの地震といい、あの光といい、いったいなんなんだ?」

誰もが思う疑問、その光景はまさに異質である。

「わからない・・・でもなんか嫌な感じがするわ・・・」

2人とも嫌な予感という共通点があり、一度帰宅したほうがよいと話し行動しようとしたその時


「きゃぁぁぁーーーーーーーーーーー」


大きな悲鳴に体がビクッと反応する。

何かあったのだろうかと声の発生源を見るとそこには「おかしな何か」がいた。


大きさは2メートルほどだろうか、犬のような生き物でアレは犬ではない生き物。

前足が異常に発達していて丸太ほどの太さがあり、おかしいほどに伸びきった爪。

そして口には人・・・


「な・・・なんだあれは」

その光景に思考がついていかない。およそこの地球上の生物とは思えないその生き物は今まさに人を襲っている。


前足で人を薙ぎ払い、獰猛な牙で喰いちぎり次から次へと命を奪ってゆく。

聞こえるは悲鳴と泣き声、見えるは命を失っていく人々と1匹の獣。

人々は散り散りに逃げ出すが、アレは逃げる相手も容赦なく襲う。

アレとの距離がまだある。玲慈はすぐに意識を戻し霞の腕を引っ張る。

「霞!逃げるぞ!」

強引に引っ張りアレがこちらに気づかないうちに遠くに逃げるべきと判断した。

「あ・・・あ・・・」

腰を抜かしているのか霞はペタンと座り込んでいるその場から動こうとしない。

「くっ・・しっかり捕まってろよ!」

霞を背中におぶって走り出す玲慈。後ろからは今もまだ襲われている人々の悲鳴とアレの慟哭が聞こえる。

「ちくしょう・・・意味わかんねぇよ!」

誰に語るわけでもない、ただ命を守るために霞と共に逃げ惑う玲慈であった。




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