序章4
目を覚ますとそこは白い部屋だった。
誰かがこちらに近づいてくる。
何かを言われている、だけど何も聞こえない。
はじめは白色しか見えなかった世界に徐々に色が付き始める。
すると次第に声が聞こえ始めてきた。
僕の目の前に一人の男性が顔を覗かせた。
「速水 玲慈君、だね?」
その男は確認するように尋ねてきた。
「は・・やみ・・れい・・じ?」
ようやく絞りだすような声でその一言だけ発することができた。
「そう、君の名前だよ、速水 玲慈君」
名前?僕の・・名前?俺の・・名前は・・・
「はやみ・・・れいじ・・・」
自分の心の中で呟き、口にもう一度出してみるとひどく懐かしく感じられた。
速水 玲慈、それが俺の名前・・・
するとその男はにっこりと笑って後ろにいる女性に声をかけた。
「まだ意識がはっきりとしていないな、意識がしっかりと戻るまで目を離さないように」
そう告げると男は部屋から出て行った。
静まり返る部屋、聞こえるのはピッピッという機械音のみ、思考が回復してきたのか今の置かれている状況を
理解しようと考え始める。
(ここは病院だよな?なんで病院なんかにいるんだろう・・・)
考えてはみても答えは一向に出てこない。
(事故にでもあったのかな・・・)と思い記憶を呼び起こそうとするが全くというほど頭に思い浮かばない。
体を動かし痛みが無ければ事故ではないなと思い、とりあえず体を動かす。
(痛みはなし、っと次は起きれるかためしてみるか。)
苦もなくすっと体が起き上がる。部屋に待機していた看護士は彼が急に起き上がったことに驚き少しの間
固まっていた。が、すぐに先生を呼んできますねと言って部屋から出て行った。
先生という言葉と辺りを見回せば、やはりここは病院だと納得させられる。
まだ自分の置かれている状況が理解できない彼はとりあえず後で聞いてみようと答えを出したのであった。
考えがまとまったのも束の間、廊下からパタパタパタパタと何か慌しい音が聞こえる。
なんだろうと考えていた次の瞬間ガラガラッという大きな音とともに扉が急に開けられた。
「れ・・・玲!」
そう言って扉の前にいたのは幼馴染の霞。その慌てぶりに多少戸惑いながらも声をかけようとした矢先、飛び込むようにこちらに向かってきて抱きついてきた。
「あぁ・・・玲・・本当に玲なのね・・・よかった・・・」
彼女の言葉を今ひとつ理解できてない彼は慌てながらも次に入ってきた人を見る。
「父さん・・・母さん」
そこには玲慈の父・和也と母・風香が立っていた。
「玲君・・・無事だったのね・・・、本当に・・・よかったわ」
涙を流し安堵の表情を浮かべる母とその横で「よかった・・・・よかった」と繰り返し呟いている父の姿があった。
現状を理解していない玲慈と、理解している3人の温度差はかなり激しい。
霞が落ち着いた頃合を見計らって玲慈が対面後初めての声を出した。
「えっと・・・俺どうしたの?」
もちろん3人とも鳩が豆鉄砲食らったような顔をしたことは言うまでもない。