序章3
ピンポーン、ピンポンピンポーン
何度も何度も押される呼び出し鈴。
「いったいこんな時間になんなのよ・・・」
あまりに続く呼び出し鈴に目が覚めてしまった少女、霞。
ドタドタと怒っているだろう父の足音が聞こえる。
時刻は夜の1時、そのあまりに非常識な輩に一言怒鳴りつけてやろうと憤慨している霞の父が玄関に出た。
「今何時だとおもってる・・ん・・・?」
最初は大声で怒鳴りつけていたのだが次第に声が小さくなっていく。
彼の目の前には今にも泣き崩れそうな、いや最早泣き崩れているだろう女性がいた。
その女性は親睦の深い隣の速水夫妻の妻 速水 風香。玲慈の母だ。
最初は怒鳴りつけてやろうとしていた父であったが、相手が風香であることとその只ならぬ雰囲気に何かおかしいと
すぐさま感じた。
「ど・・・どうしたんですか、速水さん?」
いつもとは違う雰囲気に多少怖気づいた調子で声を掛ける。
「玲慈が・・・玲慈が見つかったんです!」
2階の自室で事の顛末を聞いていようとした霞であったが、その言葉が聞こえたと同時に部屋から飛び出し玄関まで一気に駆け抜けた。
「お、おばさん!その話本当ですか!?」
喜び、驚き、困惑、そのすべてが入り混じったような表情で風香に問いかける。
「本当よ、本当なのよ霞ちゃん、さっき警察から電話があったの、今は病院にいるって・・・」
その言葉を聞いた霞はいても立ってもいられずに
「早くその病院にいきましょう!」
と言い即座に部屋に戻っていった。
「玲が・・・玲が生きてた・・・玲に・・・玲に会える!」
彼女の中には最早喜び、嬉しさといった感情しかなかった。
これから起こる悲劇など、もちろん今の彼女には知る由もない。