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忘却の彼方  作者: 志具真
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序章1

人々の希望と新しい出会いに喜びを感じる4月。

寒かった日々も、もう終わりに近づき暖かい陽気が包み込む季節。

多くの人々は歓喜に溢れ、皆新しい出会いや環境に緊張と喜びが入り混じっている。

世間では明るく楽しい時期ではあるが決してそうでもない人達も少なくはない。


一人部屋にたたずむ少女。

彼女の名前は葉月 霞。黒く真っ直ぐに伸び、さらっとしたその綺麗な髪はまさに女性の憧れである。身長は165cmと女性にしては少し背が高い部類にはいるだろう。顔を見てみれば整った顔立ちに可愛らしい目、まだ幼さ残る雰囲気があり、多くの男性が魅了されてしまう女性とでもいえる。


そんな彼女が机に頬杖をつきながら悲しげな瞳である一点を見つめている。

その先にあるのはシンプルな木枠の写真立て。

写真の中には眩しいばかりの笑顔の彼女と彼女に負けないくらいの笑顔をしている少年が写っていた。


写真の中の2人を見ればまるで相思相愛の恋人に見えるだろう。果たして2人の関係は?

と聞かれれば否、彼女と彼は家が隣同士の所以幼馴染という関係だ。いや・・・友達以上恋人未満、というのが一番

しっくりくるかもしれない。


ではなぜ彼女は悲しげな瞳で写真立てをみているのだろうか?

もう少しばかりその様子を見守るとしよう。


「・・・玲」

ただ一言、それだけを呟き、その響きを感じると涙が浮かんできた。

彼との付き合いはもう20年近くになる。彼女の年齢は20歳、まさに生まれてすぐからの付き合いなのである。

楽しいとき、辛いとき、彼は常に彼女の傍にいてくれた。共に笑い共に泣き、時には喧嘩もあったがそれでも最後には仲直りをしていつもの関係に戻っていた。

しかしその彼は、今はいない。


「あなたは今・・・どこにいるの・・・?玲・・・」


彼と最後に会った日のことが思い出される。

お互いの両親が旅行へ行ったため、夕飯を食べにファミリーレストランへ向かった。

学校の話、友達の話、趣味の話。それはいつもと変わらない日常の光景であり、楽しい時間が過ぎ去ってゆく。


帰宅途中、家まであとわずかという距離、彼は携帯電話を忘れてしまったようで、お店まで取りに行くからまた後で、と言って走り去っていった。


しかし、彼はその日帰ってくることはなかった。

次の日も、そのまた次の日も、彼が帰ってくることはなかったのだ。


そう、彼は1年前から行方不明なのである。




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