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忘却の彼方  作者: 志具真
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一章6

校舎の一室、玲慈達4人と部屋に居た5人は現在の状況について話し合っていた。


「とりあえず自己紹介といこうか?そういやワシらも名前知らんかったしな」

一緒に行動をしていた4人でさえ名前を名乗ってなかった事実に気付き自己紹介を始める。


「ワシの名前は 原 銀だ。まぁ状況が状況だ。仲良くしようじゃないか」

強面の銀に仲良く、と言われても部屋に居た5人は表情が硬い。


「速水 玲慈だ」

「葉月 霞です」

「神崎 直葉といいます」


他の3人が名乗り、多少表情が柔らかくなったのか5人も名乗りだした。


「原田 拓郎です」 

メガネをかけたスーツ姿の細身の男。

「久瀬 麗美です」

学生だろう、制服を着ている。部屋に入ったとき最初に言葉を返したのは麗美だ。

「酒井 陽子よ、それでこっちの子は、はるか」 

「は・・・はるかです」

(こんな子供まで・・・)

はるかと名乗った少女はまだ小学生にもあがってないのでは、と思えるほどの幼子だった。

「・・・八島 一樹」 一人ぶっきらぼうな口調で答えたのは玲慈と同年代と思われる男。


「とりあえず名前は分かったな。それじゃあこれからどうするか話そうか?」

銀はこの場を仕切り話を続けようとする。


「あ、あの、一つ聞いていいですか?」

麗美が手を上げて銀に尋ねた。

「皆さんは私達を助けに来た自衛隊員ってわけじゃないんですよね?」

コクリと頷く。

「そっか・・・助かったわけじゃないんですね・・・」

落胆の色を隠せない麗美。

実際の所は助けるために学校に来たのだが、他の人から見れば自分達と同じようにここに

逃げ込んできた風にしか見えない。

「だったらどうしてそんな物を持ってるのかしら?」

次に声をあげたのは陽子。

「ワシが持ってるブツは・・・まぁ想像に任せる。兄ちゃんが持ってる青龍刀は元はワシのだ。

ちょっとした経緯があって兄ちゃんが持ってるわけだ。で、少年・・神崎が持ってるのは」

「僕は神崎流剣術道場の師範代です。この刀も家から持ち出してきたわけです」

なるほどね、と玲慈、霞、銀は納得した。

直葉が刀を持っていることは3人も不思議に思っていたことだからだ。


「さて質問はもういいか?話を進めるぞ」

周囲に確認をとり話を続ける。

「さて、どこまで話したっけな、あぁ、これからどうするかって事か。よし、まずワシらにできることはそう多くもない」

皆真剣に銀の話を聞いている。

「一つ目は、このままここで救助が来るのを待つ」

「二つ目は、もっと安全な場所を探しここから移動して、そこで救助が来るのを待つ」

「そして三つ目なんだが・・・」

若干言いづらいのか口ごもる。直葉の方を見て、しばし考えた後、口に出す。

「ここで救助を待つってのは最初と同じなんだが、外へ出て他の生き残りを探す」

直後動揺が起こる。


「な・・・探すっていっても危ないじゃないですか!」

反論したのは拓郎だった。


「まぁそうなんだがな、何も悪いことだらけじゃねぇ。じゃあ聞くがここで救助を待つとして、

一体ワシらがここにいることをどうやって外に伝える?」

良い方法など思いつかず、言葉を詰まらせる拓郎。

「それは・・・狼煙をあげたりすれば・・・」

「それも確かにあるが、狼煙をあげたりすればワシらが、いや、誰かがここにいるってことを外にいる化け物共に教えるようなもんだ。ワシが見た化け物は犬みてぇな一つ目の化け物だけだが、それだけじゃねぇんだろ?」

玲慈を見て話せと目で訴える。

「あぁ、俺達が最初に見たのは2メートルぐらいあった化け物でした。遠目だったから確かなことは言えませんが・・・周りにいた人より一回り以上大きかったからですから」

霞を見ると、その時の光景が思い出されたのか肩を抱いて震えていた。玲慈はそっと手を伸ばし震える肩に触れた。

霞は顔をあげてこちらを見る。大丈夫、と一言呟き再び前を見た。

「少なくとも2種類は確認したわけですが、他にもまだいると考えてもいいと思います」

玲慈はそこで話を終わらせた。


「だ、だったら余計に危ないじゃないか、外に出るなんて僕は反対だよ」

「別にアンタに外に出ろなんて言ってないだろうが。というよりだな、救助を待つにも食料が必要だ。少なくとも最低何度か外に出る必要がある。アンタは何も飲まず食わずで救助を待つのか?」

正論尽くしで中々反論をしきれない拓郎。そんな中玲慈が手を上げた。

「原さん、ちょっといいですか?」

「あん?いいぜ。あぁ、それと「原」ってのが2人もいるから面倒だな。ワシのことは「銀」って呼べ。ついでに敬語もいらん」

思いがけない提案に戸惑う玲慈だが素直に従うことにした。

「わかったよ、銀。それで食料と飲料についてなんだけど、飲料については問題ないと思う。屋上に貯蔵タンクがあって水はそこから出てるはずだから、多分出るよ。後で試してみよう」

飲料の問題がなくなったと分かった拓郎は幾分か表情が明るくなった。

「ほう、それじゃあ問題は食料だけというわけだな」

現状の問題を整理しこれからの行動指針を決めようとする。

「それじゃあこれからどうするか決めようか。一つ目か二つ目か三つ目か。他になんか考えがありゃ、四つ目も出すがどうだ?」

誰一人名案など浮かばず、いずれかを選ぶ形となった。


「それじゃあ・・・一番ありえなさそうなのからいくか。二つ目がいい奴」

辺りを見渡し数を数える。

「まぁ、当然のように0だな」

「次に、一つ目がいい奴」

手を上げたのは拓郎、陽子の2人だけだった。

「最後に、まぁ聞くまでもねぇが三つ目がいい奴」

玲慈、霞、直葉、そして麗美が手を上げた。

手を上げなかったのは、一樹とはるか。

「お嬢ちゃんにはちょっと難しかったな。八島って言ったな、お前はどうなんだ?」

一人俯き会話に参加していない一樹。

「俺は・・・どうでもいい」

初めと同じ口調で話す一樹。それに見かねた拓郎は声を荒げる。

「どうでもいいって、いいわけないだろ!もっと真面目に考えるんだ!」

まだ何か言おうとしている拓郎に対し、銀は止めさせた。

「手前自身がどうでもいいっていってんだ、それでいいじゃねぇか。それよりこれからワシらのやることは、ここで救助を待ちながら他の生き残りを探すってことに決まったが、いいな?」

もちろん拓郎と陽子は不満があるが、それを言うことはできない。多数決で決まったことに対して更なる反対意見を言うことは、即ち孤立を表す。このような状況で孤立などできるわけがないため、渋々ではあるが従ったのだ。


「それじゃあ今から何をするかだが・・・」

「銀、提案があるんだけどいいか?」

銀が話を進めようとした時、玲慈が考えていたことを話そうとする。

「ん、ああ、いい案を頼むぜ」

それじゃあ任せたと言われ、玲慈が続きを話す。


「ここで救助を待つならここでの安全を最低限確保したい。今この校舎内に入れる場所は、俺達が入ってきた玄関しか確認してないけど、他にもあるかもしれない。だからまず校舎内を見回って他の出入り口がないかを見ておきたい。知らない間に化け物が入り込んでた、ってのは危ないからね。玄関以外の出入り口があったら玄関は封鎖しておきたい。目立つ入り口だからね、簡単に化け物に侵入されそうだし」

気になることがあったのか銀が横やりを入れる。

「封鎖しても意味ねぇんじゃないか?ガラスくらいなら突き破ってきそうだぞ」

「いや、玄関のガラスって実は防弾ガラスなんだ。多少のことじゃ割れることはないさ」

「防弾ガラスって・・・相変わらずありえねぇとこだな」

「まぁ・・・作った人が変わった人だったしね」

まだ他にも色々ありそうで聞きたい銀だが、今聞くことでもないと、話を続けるさせる。

「だから玄関はなるべく封鎖しておきたいんだ。多分だけど、警備員用の裏口なら開けることができると思う」

皆、自分の安全がかかっているため静かに、真剣に話しを聞く。

「だからまずは一階の見回り、その後に玄関の封鎖、って段取りでいきたいんだけど、いいかな」

玲慈は提案をすべて話し、皆納得したのか頷く。

「それじゃあ明るい内に1階の見回りを始めようか」



玲慈たちの生き残りを懸けた日々が始まりを告げた。



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