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忘却の彼方  作者: 志具真
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間章〜剣士の覚悟〜

時は遡り、まだ世界に異変が起こる前


凛とした部屋にたたずむ男。

ここは道場であろうか少し古めかしい雰囲気がある。


手には木刀を持ち、目を瞑り構え微動だにしない。

「はぁ!」という掛け声と共に繰り出される剣舞。

袈裟切り、薙ぎ払い、上段突き。


精練された動きから、彼が剣術における有段者であることが垣間見える。


彼の名前は神崎 直葉。神崎流剣術道場の後継者であり、師範代の地位も持ち合わせる豪傑である。

しかし、彼を見てみるとどうであろうか。顔はまだまだ幼さがあり、優しい雰囲気が見受けられる顔立ち。

体は大きいわけでもなく身長も165センチと男性にしては多少小柄な体型。ガッチリとした、というよりはスラっとした、のほうがしっくりくるだろう。

それもそのはず、彼はまだ15歳なのである。つい数週間前に高校の入学式を向かえたばかりの少年だ。

その若さと未完の体型を持ち合わせながら師範代という地位を持っていることは、彼が本来持ちえていた才能と並々ならぬ努力の賜物であろう。


神崎流剣術は古くから伝わる流派である。しかし、初代の言葉で「武術とは、元来争いに使われてはならない。弱き者を守るために使うべきである」という教えがあったために、表舞台に立つことは一度もなかった。

初代の志は殺人剣ではなく活人剣。人の為になることを一番とし、多くの命を守ったと伝えられている。

直葉は初代の言葉、生き様に強く感銘し、己が使命を見出したのである。


どのくらいの時間鍛錬に励んでいたのだろうか、一旦休憩をとることにした。

水分を補給するため移動しようとしたその時、世界が一変するように動き出す。


「地震!?」

立つことすら間々ならぬほど大規模な地震。

視界が揺れ動き、日ごろ見慣れている世界とは思えないほどの光景、その衝撃も次第に収まってゆく。


「い・・・今の地震はすごかったなぁ・・・」

ゆっくりと体を起こし遠くへ転がっていった木刀を拾いあげる。


パリン!!


「え?」

窓の割れる音とともに一匹の獣が姿を現す。


犬のような容姿をしているが決して犬ではないとわかる生物。

口からはみ出ている獰猛な牙。

不必要なまでに伸びきった爪。

そして何より・・・犬ではありえない大きな一つの眼。


「な・・・なんだよこいつ・・・」


目の前に現れた謎の生物に思考が固まる。


ぐるるるるる

敵対意識をこちらに向けてきていることがわかると、はっと意識が回復する。


目の前の生物が身をかがめた次の瞬間

「ぎゃるぅううううう」

という慟哭とともにこちらに飛びかかってきたのだ。


意識を取り戻した彼はまさに冷静そのもの。


(アレは真っ直ぐに飛びかかってくるだけ、だったら!)


目の前にいる生物が何かは分からないが、彼は迎え撃つことに覚悟を決めた。


後ろにあった左足に力を込め、右に1歩体を動かす。

さきほどまで自分の体があった位置にヤツは飛び込んだ。


ここっ!


彼とヤツが並んだその瞬間、手に持っていた木刀を上から下に向けて一身に振り下ろし、鋭い一撃がヤツの頭上を捉える。


ドゴッ


生々しい音と感触が彼の手の中に伝わってくる。

前に飛び掛ってきた遠心力と木刀を上から叩きつけられた衝撃によりヤツは前に回りながら壁にぶつかった。


会心の一撃に違いないがアレは見たこともない生物。

油断はできないとゆっくり一歩ずつヤツに近づいていく。

神経を張り巡らせていたためか、後ろに「何か」いると気付く。

木刀を構えたまま後ろを振り返るとそこにはさきほど対峙していた同種の生物がいた。



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