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14298に隠された謎  作者: レモン汁
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第1話 記憶がない男

 なぜここにいるのか。俺が誰なのかもわからなかった。頭までが真っ白にされたような感じで記憶さえない。ただわかるのは、誰かに殺されそうになったということだけだった。しわがれた声でまるで苦しそうに言ったあの台詞は切に俺の死を望んでいる人のようだった。年配の男だろう。


 俺はどうにかこの空間から抜け出せないかと逃げ道を探すことにした。

 ーが。一向にも進んでいる気配がない。景色が変わらないので、最初のところから何キロ進んだのかさえわからない。ただ、とてつもないほどの空腹感が俺に襲ってくるだけだった。飯もないし、まして動物さえいない。そもそも俺しかいないのではないか。。。



「起きて、朝よあなた。おーきーてっ。ねえ。起きてってば。」


「ーん?ここは、、どこだ、? 」

 なんだか頭がぼんやりしている。まるでまどろみの中にいるような感じだ。どうやらさっきの何もない真っ白だった空間とは違う。くっそ、、まったく今の状況が把握できない、今度は一体どこにいるのだ。。

「馬鹿ねえ、寝ぼけてるのかしら?あなた昨日飲み会だったから疲れてるの?」

 目の前に立っていたのは全く見覚えのないふっくらとした女性だった。どうやら俺はこの目の前にいる中年の女と結婚しているらしい。とっさに俺はとりあえず話を合わせるしかないと思った。

「え、ああ。そ、そうかもしれない」

「んっもう。ちゃんとしてよねえ。今日は私たちの5年目の結婚記念日なんだから。」

「あ、ああ。」

 俺は玄関のドアを開け、とりあえず街を歩いた。

 ここはいったい何処なのだろうか。街並みも景色も何処か見たことがあるような、、、

 プルルル、プルルル。

 突然携帯が鳴り出した。非通知だ。俺は何も考えずその電話に出てしまった。

「・・・」

 しばらく沈黙が続く。

「もしもし?」

 俺は恐る恐る電話の向こうの人に尋ねる。

「ー、298」

 ーん?砂嵐のようなものが聞こえ相手の声がよく聞こえない。何かの数字を言っているのでろうか向こうの電話からは3桁の数字か聞こえてきた。。

「よく聞こえない。もう少し大きな声で言ってくれないか。」

 俺は半ばキレながら声を荒げて言った。当然だろう、全く知りもしない街なみに全く状況が掴めないところに置かれているのだから、、

「14298」

 まるでアンドロイドのような声で今度ははっきりと返事が返ってきた。

「何の数字を言っているんだ?というかあなたは誰なんだ?ここはどこだ、、?」

 俺は電話の向こうの相手にすがるような気持ちで俺は尋ねた。

「私は誰でもない。ここはどこでもない。14298、、14298、、14298、、」

 電話の向こうの相手は繰り返し、繰り返し同じことを言っている。

 ー14298ってなんなんだ、まったく聞き覚えのない数字だ、、14298?


「加藤〜?加藤?おーい、ちゃんと聞いてんのか?」

「え?ん?はい」

 顔を上げたら、すごい腱膜で怒った顔をした教師が俺を見ていた。

 教室の生徒が俺を見て笑っている。

「お前バカだなあwまた居残りだぞこれはっw」

 隣に座っているツーブロックの男子が俺に話しかけてくる。状況が把握できない。」

 どいうわけか俺は携帯で電話していた通路から学校へ移動したらしい。。俺はスーツから制服に変わり、さっきかけていたメガネもないことに気がついた。。

 ー何で俺が高校にいるんだ?というか、加藤って誰だ?

「あのさ、加藤って誰?」

 俺は隣の男子に話しかけた。

「は?何言ってんのっw?先生〜、加藤の頭がとうとうぶっ飛びました〜w」

 教室の生徒がまた俺を見て大笑いし始めた。ーどうやら俺が加藤らしい。。

「キンコンカンコーン」

 授業の終了のチャイムと同時に俺は教室を飛び出した。クラスにいづらかったからだ。なんで俺が加藤なのか、さっきにいた街からどうやってここにきたのかわからない。。俺は目の前の男子トイレに逃げ込んだ。

 プルルル、プルルル。

 トイレに電話の音が鳴り響いた。俺は迷わず出た。

「一体どうなっているんだ。さっきの路地からどうやって高校に移動したんだ。おい!」

「・・・」

 俺の叫んだ声が響き渡り沈黙が続く。

「お前は誰だ。。なんで俺が高校にいるんだ?加藤って誰だ、、?なあ、おい、、なんとか言えって。」

「・・・」

 またも沈黙が辺りを包み、トイレの蛇口から出る水滴の音が鳴り響く。

 ーバタバタバタバタ、キーカチャッ

「おい加藤〜?どしたんだよ、顔色わりーなあ。次は物理だから移動教室だぞ?早く行こうぜ」

 トイレのドアを勢いよく開け、さっき隣に座っていたチャラそうな男子が話しかけてきた。

「あ、ああ。」

 俺はとりあえずこの状況に乗っかるしかないと判断した。


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