いきていること。
コレは、僕が主さんと出会った時のお話です。
僕は、主さんに出会う前は……動物達がいっぱい集められた大きな施設に居ました。
その施設は身寄りのない動物達が集められている場所で、ある一定期間が来ると殺処分を受けると言う所
僕も弟もペットショップで売れずに残っていた為に此処に持ち込まれたのだった。
僕たち兄弟は人間達の傲慢で生み出された。
【大人にならないヒヨコ】として人工的に生み出された。
大人になれば僕らは皆殺されたり捨てられたりする、だから人間は最後まで可愛がれる様にと人工的に僕らの様なヒヨコを作ったんだ。
一時的にそれはブームを呼んだ、だけど人間は直ぐに飽きる……だから僕達の様に売れ残るとこうやって、こんな施設に送りこむんだ。
「お兄ちゃん…怖いよ」
「大丈夫だよ、きっと優しい人が迎えに来てくれるから……だから泣かないで、待っていよう?」
「…ぐす…お兄ちゃん…」
里親が見つからなければ処分、里親が見つかれば里親に引き取られる。
でも、もし、それで僕達兄弟のどちらかしか連れて行かれなかったら。
そう思うと胸が痛かった。
まだ幼い弟だけは、どうか引き取って欲しい。
──僕の願いは其れだけだった。
そんな思いを描いて過ごしていたある日の事、その日は定期的に行われていた施設の動物達の里親を探す為の面談という名の里親探しイベントが行われた日、僕は其処で主さんと出会った。
この日初めて学園都市に来た。
施設は遠くの場所にあるから、定期的に大きな街に行ってこのイベントは開催される。
初めて見る学園都市、都市は区画ごとによって色が違い本当にすごく綺麗な街だ。
初めて見る街に弟は嬉しそうにはしゃいでる。
だけど…もし今日里親が見つからなかったら、僕らの期限がもう後僅か、弟だけはもらい手が決まって欲しい。
色んな人たちが僕らを見る。
弟は僕から離れない。
僕らが二人で居ると人間は手に取らない。
「二匹は飼えない」と言って。
だから、僕ら以外に居た仲間達は次々と貰い手が決まり居なくなっていく。
僕の事は良いのに……せめて弟だけは。
僕の願いも空しくイベントが終わった。
「またこの二匹だけ残ったな……」
「兄弟一緒じゃ流石に貰いていないか……」
「どうする?これじゃ……」
施設の人達も困った表情を浮かべる。
この人達には罪はない、この人達は僕らの事思って定期的にこのイベントに連れてきてくれるのだ。
この人達はこの間涙を流しながら仲間達の屍を抱いてた
「ゴメンな……俺達に力が無いばかりに救えなくて……」
この人達は誰よりも僕ら動物と接してきてた人達だから誰よりも苦しい思いをしてる。
命の尊さを知ってる。
だから、この人たちがこんなに困った表情をする理由も僕にはわかる。
──僕達の期限がもうないって事を。
施設の人達は僕らを優しくそっと抱き上げた。
弟はプルプルと震えながら僕にしがみ付いてくる。
僕は覚悟を決めてる、でも弟はまだ幼い、弟だけは救いたい、でも僕等にはどうしようも出来ない。
そんな時だ──。
「──そのヒヨコ貰える?」
白いブレザーの制服を着た主さんが僕等の前にやってきたのは。
施設の人達は驚きの表情を浮かべると一緒に声をあげる。
「し、しかしこのヒヨコ達は兄弟で小さい方がまだ兄弟離れが出来てなくて……」
「それなら二匹とも引き取るよ、だったら良い?」
「!」
信じられなかった。
僕等を二匹とも引き取ると言う言葉に。
こうして僕等は主さんの許にやってきた。
主さんの部屋はあまりモノが無く……そう、まるで引っ越してきてあんまり日数が経っていない、そんな感じの部屋だった。
「ごめんな…まだ何もない部屋で……」
そいうと主さんは僕達をベットの上に降ろす。
初めての柔らかい感触に弟は楽しそうにその上を歩く。
主さんは段ボールの中から、それなりに大きな籠を取り出して中にふんわりとしたタオルを詰めて僕等の寝床を用意してくれた。
僕達はその籠に移った。
弟が嬉しそうだった。
施設ではこんな待遇を受けた事が無かったから。
主さんは優しく僕等を撫でてくれた。
こんなにも人の手が優しいだなんて。
そして主さんはとっても優しかった。
「そうだな……名前をつけないとな……こっちの大きい方がツナでちっこい方がナツな?」
初めて僕等に名前が付けられた。
僕達にはずっと名前が無かった。ペットショップに居た時もあの施設に居る間も、ずっと名前なんてなかった。
(なっ…つ?)
(そう、お前は今日からナツ)
(お兄ちゃんは?)
(ツナだよ)
弟が名前を貰えたことに嬉しそうに跳ねる。
まだ飛べない翼でバタバタと動かしながら。
(名前が決まったみたいだな…)
(!!?)
突然と女の人の声が聞こえた。
僕等は慌てて周りを見渡した、すると一匹の白い猫が僕等の方にやってきた。
その猫に主さんが……。
「雪乃、お帰り」
猫は主さんにそう言われると僕等の籠の周りをクルクルと回る。
猫は僕等をじっと見る。
(お兄ちゃん、怖いよ…)
(大丈夫、僕がついて居るから)
僕は弟を咄嗟に僕の後ろに隠した。
猫は危険だ。
僕等はあの施設で其れを学んだ。
だけど雪乃はそんな僕等に優しく笑い掛けてくれた。
(安心しなさい、誰も取って食ったりしないから)
(え……?)
(このアタシをその辺の野蛮な連中と一緒にしないで)
雪乃はそう言うなり主さんの方を見上げていた。
そして主さんは雪乃の頭を優しく撫でる。
雪乃は何処か気持ちよさそうに目を細め喉を鳴らし主さんの指に擦りついていた。
そして僕等は、直ぐに猫の雪乃と打ち解けた。
雪乃は本当に優しい猫だ、そして誰よりも強かった。
僕はそんな雪乃を姉の様に慕った。
雪乃を姉として慕る意味を込めて
「ユキ姉ぇ」
そう呼ぶようになった。
主さんの所で住み始めて一年が過ぎたころだ。
誰も住んでいなかった隣の部屋に誰かが引っ越してきた。
そして、引っ越してきた人がこの家に挨拶に来た。
その人物に主さんが驚きの表情を浮かべてみていた。
「──くん、お隣さんだったんだ?」
「!?」
そう、主さんの同級生さんだった。
主さんの同級生さんは隣に引っ越してきた事もあり、僕等は主さんの同級生さんともすぐ仲良くなった、ただ雪乃は主さんの同級生さんが来た事を嫌がる。
何故ならば……
「まったく…貴女という猫は本当に野蛮ですね」
「…カノト……!」
そう、主さんの同級生さんの飼っている猫のコラット種のカノトさんだ。
この二人はよく衝突をする。
でも、お互いに本当は好きなんだって思う。
だって人間の言葉で【喧嘩するほど仲が良い】って言う言葉がある位だから。
僕と弟はよくこの二人のやり取りをニマニマしながら見ている。
それから、雪乃とカノトに連れられて初めて動物だけの街マタタビストリートに来た時に、猫のアクアと撫子とモチに出会った。
モチは本当に大人のお兄さん、ただアクアが相当苦手のようだけど。
アクアはモチを見るや周りにハートの嵐を撒き散らしながらモチに何時もアタックしている。
「煩い!寄るな!!バカ女!!!オレはお前みたいなバカが嫌いだ!」
「ガビーン!!!」
何時もああやってアクアは惨敗している。
告白する方も凄いけど振る方も本当にすごい。
其れから、暫くして主さんが突然僕の前にやってきた。
主さんの面持ちが少し申し訳なさそうだった。
「ツナ…あのな、ナツの事なんだけど…」
「クピ?」
主さんの言葉が重たい。
弟に何かあったのかな?
心配だ、でも続く言葉に驚いてしまった。
「元気が無くなってしまっている友達の所に預けようかって考えているんだけど…」
「!」
弟を里子に出す話だった。
飼えなくなったわけじゃない、ただ主さんは寂しそうな友人を見て居れなかったみたいだ。
主さんは本当に友達思いだ。
誰よりも僕等を大事に思ってくれてる人だからだから主さんは僕にちゃんと打ち明けてくれたんだと思った。
僕は、主さんの言葉に了承をする意味を込めて主さんの肩に乗りすり寄った。
主さんは其の儘弟にその話をした。
弟は最初困惑していたけど、最後には了承をしてくれた。
其れから弟は主さんのさんの所に引き取られて行った。
主さんの友人さんは本当に優しそうな人だった。
主さんの友人さんならちゃんと弟を面倒を見てくれるって思えた。
でも弟が居なくなってちょっと寂しかった。
弟が居ないのは分かっているのに、僕は部屋で弟の姿を探してしまう。
今迄ずっと一緒だったから。
そんな僕を見かねた雪乃がモチに相談したのか、モチが僕にいっぱい構ってくれる様になった。
そんな日々が続いたある日……
マタタビでは変な噂が流れていた。
見慣れない猫が最近出没していると言うモノ。
隣街から来たとか、お化けだとか色んな噂が流れていた。
でも、その猫を見た人たちは口々に言う。
振り返ってしまうほどに美少年だと。
そう、其れが後に友達になった花音だ。
そんな花音に撫子は恋をした。
一目惚れらしい…でも撫子は想いを伝えれないでいる。
花音も何だかんだで撫子を気にかけている、そして、この二人は後にお互いの飼い主さん同士の関係で一緒に住む事になった。
そして今、僕は弟とは離れて住む事になったけど、今はもう寂しくはありません。
だって、この街に居れば弟に何時でも会えるし、其れに僕の周りにはこんなに素敵な動物がいます。
色んな動物に出会い、いっぱい経験をさせてもらってます。
まだ見ぬなにも知らなかった世界を知れば知るほど楽しい。
コレが生きてる事なんだよね……。
昔々に別の所で書いたのを加筆修正したリサイクルもの。
この話しの内容は年齢制限が不明につき、全年齢層設定にしております。
っというか変えれないのです。
困りものです。