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オーバーデイズ49  作者: えいちふみふさ
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ブリキット王国後編

 それから三日たった。


王は毎日しじみに元居た世界がどんなものだったかを聞いていた。


どうやら異界の話が余程気に入ったらしい。


それ以外の時は城下町をぶらぶら歩いた。


王様からもらった小遣いで色んな食べ物を食べて回った。


しじみはウルという名の果物をいたく気に入った。


毎日食べていた程だった。


そんなある日、城がやかましくなった。衛兵が息を切らせて謁見の間に入って来た。


「そんなに息を切らせてどうしたのじゃ。」


「盗賊たちが現れました。どうやらブリキット人の承認を狙ったらしく……」


「何と奴らめ、非人道的な事をしおって」


「盗賊は何故人をさらうのですか」


しじみは王に聞いた。王は髭を撫でながら答えた。


「奴らはブリキット人を捕まえて火にかけ溶かすのじゃ。その金属で造られた武器や防具は奴らの間で高く売れるのじゃ」


「そんなひどい事を……許せない!」


しじみは声を上げた。彼女にしては珍しく怒りに満ちていた。


「ライアンはどうした」


「はっ、ライアン殿はいち早く被害者の救出に向かいました。」


「そうか、無事帰ってくればよいが……」


「何かあるんですか」


しじみは聞いた。王は答えた。


「奴らは巨大なゴーレムを飼っている。ゴーレムが出てきていたらいくらライアンでも勝つことは厳しいであろう」


「……なら私たちも行きます。鎧さんならきっとゴーレムにも勝てます。鎧さん行こう!」


「しじみ、君が望むなら」


そう言うと王のが止めるのを聞かず、鎧がしじみを抱えて駆けだした。



「どうだまだやるか」


盗賊の巣窟。


盗賊たちに囲まれてライアンは右腕から血を流していた。


しかし闘志は未だ消えず。バックラーを付けた左手に剣を持ち、構えた。


ライアンの眼前には彼の背丈の倍以上あるゴーレムが立ちはだかっていた。


盗賊の親玉がライアンに語り掛けた。


「これから俺たちに楯突か無けりゃ、命は助けてやるぜ。何ならうちに入ったらどうだ?お前ほどの腕なら歓迎するぜ」


「ふざけるな。お前たちは必ず倒す。命に代えてもだ」


「ならいいや。やっちまえ」


盗賊の親玉の命令の元、ゴーレムは腕を振るった。


ライアンはバックラーで受け止めたが、派手に引き飛ばされて転げ回った。


ゴーレムはライアンへと歩みを進めた。


「ここまでか。心な中でライアンは覚悟を決めた。その時だった。


「そこまでですーー!」


そこに現れたのはしじみと鎧だった。


「あなたたちが盗賊さん達ですね!それ以上酷い事はやめてください!」


「何だお前。なんで俺たちがお前の言う事を聞かにゃならねえんだ?」


「何でもです!悪いことはしてはいけないと習わなかったんですか!」


「習わなかったなあ。まあいいや。ガキンチョ、お前も踏みつぶしてやるぜ。やれ、ゴーレム」


その言葉にゴーレムはしじみ達に近づいて行った。


しじみをかばうように立つと手のひらをゴーレムに向けた


。瞬間、鎧の手のひらから炎の渦が解き放たれた。


炎の渦はゴーレムの胸を貫き、盗賊たちのねぐらを炎に包んだ。


ゴーレムは倒れ、あちらそちらから悲鳴が上がった。


「……鎧さん、やりすぎじゃ……」


「この手の輩にはこのぐらいがちょうど良いのです。さあしじみ、大きな声で奴らに宣言してあげるのです」


「えーと、これでこりましたか!悪いことは申しませんかー!」


「もうしねえ、だからこの炎どうにかしてくれぇ」


しじみは鎧の方をちらりと見た。


鎧は溜息をつき、指を鳴らした。ねぐらを燃やしていた炎が消え去った。


「約束通り、もう悪いことはしないでくださいね」


盗賊の親玉は泣きながら頷いた。ライアンが足を引き擦りながらしじみ達の元に歩み寄ってきた。


「助かったよ、二人とも。ゴーレムを一発で伸しちまうなんて大したもんだよ。君ら本当に何者なんだ?」


「ただの旅人ですよ」


しじみの一言に、ライアンは声を上げて笑った。



それからは盗賊達は心を入れ替え、傭兵として働くことになった。


盗賊を成敗したライアン、しじみ、鎧の三人は王から直々に褒賞された。


そして七日目になった。しじみ達の元に王とライアン、そして元盗賊達が集まっていた。


「長い間お世話になりました」


しじみは頭を下げた。ライアンが口を開いた。


「君達が居なくなると寂しくなるな」


「全くじゃわい。もっと異界の話を聞きたかったぞい」


「俺たちこれからは心を入れ替えて頑張ります」


「みなさん、本当にありがとうございました」


そう言うと、しじみと鎧の体が霞の様に薄くなっていった。


しじみは見えなくなるまで手を振っていた。一つ風が吹いた。


しじみ達の姿は見えなくなっていた。

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