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平凡な優等生は一度でいいから叱られたい

作者: 暮影司
掲載日:2018/01/03

俺は平凡な日本人の高校生だ。

氏名も平凡で、流石仁勇さすがにいさという。


春からはマサチューセッツ工科大学に通う。

まぁ、今時留学なんて普通だろう。


学力は全国4位だった。

オリンピックならメダルも取れやしない。


顔も普通だ。

アイドル事務所のオーディションでは、最終選考まで残ったが結局落選した。


スポーツも特に出来ない。

帰宅部ということもあり、大体の競技は市内で2位だ。


絵や音楽などはもっと才能がない。

現役の芸術家だけが評価してくれるが、芸大教授や評論家は賛否両論で物議を醸してしまった。


つまりは何でも1位を取ることが出来ない凡人である。


趣味も普通だ。

ファッションセンターみたむらという郊外型のアパレルショップで小学生女子がブラジャーを選んでいるところを見るのが趣味である。

まだ必要がないように見える下着を一所懸命に選ぶ姿に感動を覚える。

帰宅部としての活動で毎日2時間ぐらい観測している。

一度買って帰った後、もう一つ下のサイズを買い直しているときなんてたまらないぜ。


そんな凡人の俺には悩みがあった。


今までの人生で叱られたことがないのである。

普通の人生であれば何度かは叱られるものだろう。


俺は平凡な人生を歩んでいながら、叱られたことがない。

いつも良く出来たとか、頑張ったとか、慰められていてばかりだ。

誰も何やってんだとか、もっと出来ただろうとか、親にも先生にも言われなかった。


優秀な成績だとか。

充分な成果だとか。

なんということもないことを褒められすぎて、うんざりしていた。


誰か俺をきちんと叱ってくれないだろうか。

それが俺の悩みだった。

できれば色気のある美少女がいい。

初めてのブラジャーを買う頃の少女のような、色気のある美少女が。


そう思いながら生きてきた。

俺も高校三年だ。

元日、親戚からお年玉を貰う。

もう最後のお年玉だろう。


なんでマサチューセッツ工科大学なんか行くんだ、なんでハーバードじゃないんだとか。

なんで大学なんか行くんだ、イチローみたいなスーパースターなら大学なんて行ってないとか。

そのくらいの苦言は言われてしかるべきだと思っていた。

優秀な親戚が集まっても、俺を叱ってくれる人は1人もいなかった。


翌日、書き初めのとき。

俺は家の蔵で見つけた書物の模様を描いていた。


我が家の先祖は陰陽師だという。

まぁ俺はマサチューセッツ工科大学に進むような人間だ。

陰陽師なんてものは信じていない。


とはいえ、何の気まぐれか、なんとはなしに魔法陣を書いていた。

もう高校三年、普通に書き初めなんてするのは平凡すぎる。

ちょっとひねくれてみたというところか。

やっぱり俺は叱られたいのかもしれない。


一筆入魂。

書き初めで魔法陣を書いたところ、信じられないことに、魔法陣が光りだした。


パァアアアア……


嘘だろう。

半紙に書いた魔法陣が光っている。

俺の知っている限りでは有り得ない現象だ。

まあ、俺が凡人だから知識不足なだけだろうけれど。


半紙の光に対して明らかに大きすぎる光から、何者かが登場した。

なんだ? 女の人?


「誰だ、わらわを召喚した愚か者は」


うーん、とんでもない格好をした女性が現れた。

なんというか非常に下品だ。

ボンテージというのか。

黒い革製のベルトで身体を縛られているような服。

服と言うにはあまりに露出が多すぎる。

特に胸だ。

Fカップくらいあるんじゃないか。

あまりにも大きすぎる。


背は140cmくらいで丁度いいかもしれない。

顔は派手だ。

長い金髪で、つり目。

色白でくっきりした二重でまつげが長い。

鼻はそれほど高くないし、童顔といえるかもしれないが。


脚はムチムチしているし。

体全体が丸みを帯びていて、なんというか大人すぎるというか。

なんにせよ胸が大きすぎる。


一言で言うと色気がない。


やはり胸はあるのかないのか、ぎりぎりまで小さく。

手と脚は棒のようで。

身体は筋張っているくらいに油っけが無く。

肌はすべすべしているだけで、毛が全く無い。


そういうのが色気だろう。


「申し訳ないな、僕が召喚してしまったのかもしれないが、忘れてくれ」


俺は失礼ながら興味なさげに相手に謝罪した。

なんというか、こういう下品な女性が苦手なのだ。


「ほう、わらわを召喚しておいて忘れてくれとはとんだ思い上がりではないか」


なんだコイツ。

随分上から目線じゃないか。


こっちは書き初めしただけだ。

新年早々、こんなのに付き合っていられるか。


「ごめんなさい、何かの間違いなんで、お帰り下さい」


俺は深く頭を下げた。

ここまで礼を尽くせば、誰でも納得してくれるのではないか。


「わらわに何かの間違いだと。 この堕天使のわらわに何かの間違いだと言うのか」


なんか怒ってるみたいだなあ。

堕天使とかいうけど、堕天使だとしても天使の端くれだろうに。

こんな大きすぎる胸の天使がいるだろうか。

幼女のような美しい姿をしているものだろう。


「わざわざ堕天していただいたのにすみません」


俺はともかく礼儀を尽くそうとした。


「貴様のために堕天したのではないわ、愚か者が!」


俺は平凡だが、愚か者ではないだろう。

なんだか理屈として薄っぺらい気がする。

胸は厚いくせに。


「申し訳ないです、こちらでお帰りいただけるかもしれませんので少しお待ち下さい」


俺は家の蔵で見つけたときのもう一つの魔法陣を書きはじめた。

一つが召喚なのだから、もう一つはお帰りいただくものじゃないかと。


すらすらと描くと、また魔法陣が光り始めた。


「おい、それはわらわの妹を召喚する魔法陣じゃぞ!」


ええ、お帰りいただくのではなくもう一人召喚とは。

思っていたのとは違うがちょっと待てよ。

妹ということはこの堕天使より幼い容姿なのではないか?


だとすると色気のある妙齢の美少女が現れる可能性が。

俺は少し期待した。


パァアアアア……


嘘だろう。

全く同じ格好で全く同じ見た目の女が登場した。


「誰だ、わらわを召喚したのは」


愚か者とは言わない分、真っ当なのかもしれない。


「この愚か者じゃ」

「姉上もおったのか。 久しいのう」


この姉妹似ているな。

ボンテージの色が黒ではなく赤いだけだ。

これはあれだな。

姉妹といっても、双子だろう。

あまりにそっくりじゃないか。

俺はがっかりした。


「すみませんね、妹さんまで呼んでしまって」


俺はガッカリ感を抑えきれないまま、謝罪した。


「なんじゃお主は。冴えない顔しおって。なんというか特徴のない顔じゃのう」


妹さんに言われる。

そうでしょうとも、俺は凡人だからね。


「そうなのじゃ、こやつ、なんとも面白みのない男なのだ」


姉の方と話し始めた。

二人とも話す度にいちいち胸が揺れるのがウザい。

ボンテージの間からプルンプルンと、している。

せめてこの胸が小さければなぁと思うのだが。

惜しいなぁ。


「お主、われら双子を召喚しておいて何ともないのか」

「お主、われらを見て何とも思わないのか」


双子の堕天使から訊かれる。


「いや、思わなくはないですよ。見た目が下品だなあとか、胸が大きすぎるなあとか、あと5歳若ければなあとか」


俺は正直に答えた。

面白いことが言えればいいんだが、俺は平凡な男なのだ。


「貴様、われら姉妹を下品と申すか」

「貴様、われら姉妹を年増と申すか」


双子堕天使は俺の言ったことを確認してきた。


「ええまあ。そうですね」


俺は素直に返答した。


「貴様、会ったばかりの堕天使に向かって下品はないだろう」

「貴様、会って間もない女性に対して年齢のことはタブーだろう」


そう言われてもな。

なんか無いのかというから言ったんじゃないか。


「何を不服そうな顔をしているのだ、お前ごときが」

「素直に土下座して謝ったらどうだ、お前ごときは」


小さな背だが、見下ろすような態度で、蔑んだ目をしている。

姉は紫の目、妹は桃色の目。

二人ともつり目なので、侮蔑の目がとても似合う。


こんな目で叱られたいと思っていたんだが。

やっぱり、服装がなあ。

麦わら帽子に白いワンピースとか、紺色のセーラーパーカーとかなら良かったのに。

動物のきぐるみみたいなパジャマなら良かったのに。

露出が多すぎるんだよな。

太ももなんてほとんど見えてしまっているじゃないか。


ハァ……


ついため息をついてしまった。


「ため息をつきたいのはこちらじゃ、たわけ者」

「ため息も出ないほど呆れておるわ、うつけ者」


二人から、膝にローキックをくらい、跪く。

姉から右膝を。

妹から左膝を。

所詮女の子というか、ローキックをくらっても痛くはないのだが。

カクっと膝をついたので、見上げる体制になった。


すると姉は俺の右の太ももに左足を。

妹は俺の左の太ももに右足を乗せた。


裸足だ。

堕天使だからなのか、靴は履いていなかった。


「情けない格好だな」

「だらしない姿だな」


二人は顔を近づけ、小さな声でそれぞれの耳の近くで言葉を発した。


姉は俺の頭に手を載せ。

妹は俺の顎に手をかけ。


「貴様、本当に何も思わないのか」

「貴様、本当に何も感じないのか」


二人は足を太ももからずらし、俺の股間に近づけた。

脚の付け根あたりに体重がかかる。


「そうですねえ。軽はずみな召喚をして申し訳ないです。新年早々」


俺は頭を垂れた。

二人の太ももに挟まれる形になってしまった。

両頬にむちむちとした感触が当たる。

惜しいなあ。

もっとほっそりとした色っぽい太ももなら良かったのに。


「お主、童貞のくせに大したものだな」

「お主、童貞の割に堂々たるものだな」


はぁ、褒められたって、嬉しくもなんともない。


「われら姉妹、お主を気に入ったぞ」

「いつでも望めばわれら現れようぞ」


そうですか。

まぁ気に入られるのは悪い気持ちではないが。


「ありがとうございました」


俺が踏まれたまま土下座してお礼を言うと、二人はスッと姿を消した。


やれやれ、堕天使を召喚しても褒められて気に入られて終わりか。


誰か、俺を叱ってくれないだろうか。

できればスポーツブラを付け始めるくらいの色っぽい女の子に。


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― 新着の感想 ―
[一言] かなり変態な主人公がコメディーな世界観に合ってて面白かったです!
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