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道端に、ザクロが落ちていた。

 道端に、ザクロが落ちていた。

 実は二つに割れ、中の赤黒い粒がいくつかアスファルトにこぼれている。


 周辺はスーパーや歯医者がある至って普通の住宅地だ。駅が近くにあり、そこへ向かっている途中だった。


 ザクロって結構珍しいと思うけど、どうしてこんなところにあるんだろう。誰かの食べかけ? それとも落とした拍子に割れてしまった? 皮って柔らかかったっけ。固いなら衝撃で割れそう。そこのスーパーに売ってるのかな。滅多に見たことないけど、旬なら売ってるとか。そもそもザクロの旬ってあるの?


 疑問は尽きないが、時間がないので通りすぎる。なんとなく振り返ると、同じようにザクロを二度見している人がいた。自分と同じように不思議に思っているんだろうなと、勝手に親近感を抱く。


 答えが見つからないまま、電車に乗り込む。

 地下鉄の暗い車内、人もまばらな席に腰かけ、先程見たザクロを思い返す。


 初めて食べたのは、たしか小学生の時、祖父母の家だった。

 白い皿の上に半分に割ったザクロが乗っていて、艶やかな粒が並んでいた。今まで見たことがある果物は、バナナやリンゴやみかんなど鮮やかな色の見た目で、茶褐色の皮と赤黒い実を持つザクロは、幼心に異質に見えた。

 味は酸っぱく、小さな種をどうしていいか困ったことを覚えている。


 成長してザクロに再会したのは、物語の中だった。私が一番好きな小説、恩田陸先生の「三月は深き紅の淵を」の中で何度も登場する。意味深な小道具として、それは役立っていた。

 川端康成や江戸川乱歩の短編のタイトルにも用いられているらしい。まだ読んだことはないが、調べたあらすじだけで気を引かれる内容だった。




「道端に、ザクロが落ちていた」。

 この冒頭から始まる物語を、自分ならどんな展開にするだろう。


 実のように甘酸っぱい恋愛系なら、ザクロが好物な少し変わった男の子に恋をした女の子の青春ものとか?


 よく小道具として使われるホラーなら、物語のラストは道端に落ちていたザクロのような人の×××とか……。


 ザクロが鍵になるミステリーなら、赤黒い粒が弾けた汁が犯人につながるヒントになるとか。


 電車の中で、新しい作品の種を育てようと思索に耽る。

 趣味で拙い物書きをしている私が、ザクロを題材に作品を考えている。大文豪や憧れの作家のように。なんて思うのは片腹痛いにもほどがあるが、今この瞬間だけは先人たちと繋がっているように思えて、気分が高揚してしまうのは許してほしい。

「道端に、ザクロが落ちていた。」から始まる物語、あなたならどんな結末に繋げますか?

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