8、MP変換
『MP残量500→SP残量0』
ふむ……。
SPっていうのは何の略だろう?
スタミナポイント? スペシャルポイント?
MPはマジックポイントだろうからなにかステータスに関係するものなのだと思う。
とりあえず、この“→”はMPをSPに変換できるって意味だということはなんとなく分かる。
スキル名がMP変換だからね。
このスキルがステータスに直接作用するスキルだとするならば、ステータスウィンドウも見ることができるだけでなく何かしらの操作ができるかもしれない。
そう思ってステータスウィンドウの“SP”の部分をタッチしてみた。
そしてその行動は正しかったようだ。
『MP残量400→SP残量1』
MPが100減少し、SPが1増加した。
直後、再び新たなウィンドウが現れる。
それを見た瞬間、俺はガラにもなく目を見開いて驚いてしまった。
そこに書かれていたのは、スキルの名前だった。
それも数え切れない程膨大な量の。
それだけなら問題ない。
問題があったのは、その隣。
ウィンドウには、こう表示されていた。
『剣術:必要SP20』
勘のいい人ならわかったと思う。
そう、書いてあるのは必要SPという文字。
俺のスキル、MP変換によって得られるものもSP。
おそらく、SPーースキルポイントを消費してスキルを習得することができる。
つまり、俺は、この膨大な量のスキルすべてを、手に入れられる。
頭で理解し、その情報についての考察を開始するまでに数秒の時間を要した。
王女様からさっきスキルについての説明が少しだけあった。
スキルには先天的に所持しているものと努力によって獲得できるものがあるらしい。
先天的なスキルには強力で希少なものが多く、努力のより身につけるものでさえ、才能のある者が相当頑張らないと獲得出来ないらしい。
だとしたら、俺は一切の努力なしにその道のプロと同じ技術を扱うことができるということだ。
さらに、先天的スキルの例として王女様があげていた魔法系スキルも、スキル一覧の中にある。
このスキルは、異常だ。
無闇に人に知られていいものじゃない。
でも、それを補って余り有る価値が、このスキルにはある。
俺の口許には、いつの間にか笑みが浮かんでいた。
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「ハァ……ハァ………ア、アシハラ様……。夕食の……お時間です……」
おぉ、予想外にもちゃんと間に合ってるよメイドさん。
息も絶え絶えで時間ギリッギリだし、しかも服がところどころ破れてる気がするけど、
「一応及第点ですね」
「なんか不服です!?」
えっ、結構甘めに評価したつもりですが。
そんなこんなで、俺は部屋を後にした。
あのあと、とりあえず今あるMPを全てSPに変換して5SPを獲得したけど、一向にMPが回復する兆候が見えなかったので暇つぶしに取得できるスキルを眺めて今後の計画を練っていた。
うーん、早めに取っておいた方がいいのはやっぱりあのスキルかな。
とは言うものの、一番安いスキルでさえ必要SPが10なんだから、スキルを取るのはまだまだ先かな。
いろいろ考えながら歩いていると、(何故か俺が先導していた)食堂に着いた。
中に入るとクラスメートは半分くらい集まっていて、異世界で戦う決意を固めたもの、未だ陰欝さが抜けない顔をしている者同士が会話している光景が多く見られる。
尚、皆に付けられたメイドと思わしき人達は端の方で静かに佇んでいた。
うん。キャラが濃いのはウチのだけみたいだ。
「なんだかいい匂いがしますねー。アシハラ様、あとでちょびっとだけ分けてくれませんか? 噂によると今日のメインディッシュにはあのカマッサ牛が使われているそうで……」
………………。