5、ステータスの話
「き、綺麗……」
大扉の部屋へ入った宮森さんの第一声だった。
やはりというべきか、先程の一面真っ白な部屋とはうってかわって、こちらは豪華な飾り付けが壁に天井に施されていた。
言っちゃ悪いが、目にいいとは言えないな。
そんなものでも女子はきらびやかな飾り付けに心を奪われたようで、さっきから目を輝かせて騒いでいる。
「皆様、ご注目ください。こちらは鑑定水晶といって触れた者のステータスを表示してくれます。現在の皆様のお力を確認して、これからの成長に役立てて貰うよう、記録させていただきます」
そういえばステータスって、小説だと自分で見られたりするけど、この世界ではどうなのかな?
試しに頭の中で「ステータス」と唱えてみた。
すると、眼前に半透明のウィンドウが表示される。
名前:トーヤ・アシハラ 年齢:16 種族:人族(勇者) LV:1
HP:300 MP:500
筋力:300 耐久:200 魔攻:500 魔防:400 敏捷:300
スキル:MP変換、MP吸収LV1、大陸語LV10
芦原凍弥の凍弥はトウヤではなくトーヤになるのか。
自分で言ってて紛らわしい。
全体的に魔法の能力が高いみたいだけど、これは高いのか低いのか判断できない。
スキルはまあ、なんとなく分かる。
敵からMP吸収でMPを吸い取り、MP変換でどうにか戦うってことだと思う。
この世界に来てから言葉が通じたのは大陸語スキルのおかげかな。
それと、どうやら俺と同じ発想に至った人が他にもいたようだ。
オタクたちが虚空を見つめて口許をだらしなく歪ませていた。
あんなふうにならないように気をつけよう。
「ステータスは頭の中で『ステータス』と唱えても見ることが可能ですので、予め確認してくださっても構いません」
王女様もこう言っていたし、勇者だけが特別見られるというわけではなさそうだ。
誰でも自分の能力が簡単に分かるなんて、ますますゲームっぽいね。
なお、ステータスウィンドウは見せようとしなければ他人には見られないようになっているらしい。
さて、クラスメートたちはち次々と能力を鑑定して文官っぽい人達に記録されている。
やはり勇者というだけあって高いスペックを誇っているらしく、お城の人達は頬を緩めてしきりに頷いている。
そんな中ひときわ大きな歓声が上がった。
なんだろう?
名前:アキラ・キドウ 年齢:16 種族:人族 LV:1
HP:600 MP:500
筋力:500 耐久:600 魔攻:400 魔防:500 敏捷:500
スキル:聖者の裁き、不退転、身体強化LV1、聖剣術LV1、剣術LV1、盾術LV1、火属性魔法LV1、水属性魔法LV1、風属性魔法LV1、土属性魔法LV1、光属性魔法LV1、火耐性LV1、水耐性LV1、風耐性LV1、土耐性LV1、光耐性LV1、闇耐性LV1、限界突破LV1、大陸語LV10
こういうの何て言うんだっけ。
チート?
輝堂君は俺と比べるとかなりの開きがある圧倒的なステータスを見せつけた。
そういえば、俺はステータスの数値的にはみんなとそんなに開きはないけど、みんなスキルはいっぱい持ってる。
いいなー。
「素晴らしいです! キドウ様! ユニークスキルが二つに加え、六属性の魔法そして耐性をお持ちとは……
さらに聖剣術。これがあれば宝物殿の聖剣エクスブレイドが扱えます! まさに勇者に相応しいステータスですね!」
興奮した様子でまくし立てる王女様。
エクスブレイドて。
なんかしっくり来ない。
それでもみんなの反応は大きい。
どよめきは長い間続いた。
これも輝堂君の人望が成せる技なのだろう。
ユニークスキルというのは、聖者の裁きと不退転というカッコイイ名前のスキルのことらしい。
なんでも、未だ発見されたことのないスキルのことをユニークスキルと呼んでいるのだとか。
これは勇者全員にひとつは必ずあるらしい。
だとすると俺の場合、LV表記のないMP変換がユニークスキルなのかな?
なんか普通にありそうな名前だけど。
と、そんなことを考えている間にとうとう俺の順番がやってきた。
宮森さんにも「頑張ってー」と言われた。
頑張ってなにか変わるわけでは無いですけど。
名前:トーヤ・アシハラ 年齢:16 種族:人族(勇者) LV:1
HP:300 MP:500
筋力:300 耐久:200 魔攻:500 魔防:400 敏捷:300
スキル:、MP吸収LV1、大陸語LV10
あれ? ユニークスキルは?