表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
187/193

13 達人への道

申し訳ありません、ご無沙汰しまくっております!

短いですが、どうにか時間の隙を見つけて捻じ込みました。

ほとんどの読者が前回までの流れ覚えていらっしゃらないかも(泣)


~前回までのあらすじ~

リーチ・タクト・メロリナの三人で、品評会に出す石鹸を登録するために王都にやってきた。

すると受付会場には、同じく品評会の登録に来ていた他国のお姫様が二人。

一人は本物だが、もう一人はお姫様そっくりに化けた窃盗犯だという。

どちらが本物で、どちらが偽物なのか誰も見抜けず膠着状態が続く。

そんな中、リーチが片方を男だと指摘。

問答無用で【一触即発】を喰らわせ、事件を解決したのであった。



(修正報告)

TSにおいて、「まだ」のあるなしは重要かと思い、

以下のように修正しました。

 見た目はこんなんですけど、中身は男のつもりですから。

⇒見た目はこんなんですけど、中身はまだ男のつもりですから。

 宿酒場【さきっちょ】は一階が酒場で、二階が宿になっていた。酒場の大きさは【オーパブ】と同じくらいだが、見渡した限り俺たち以外の客は人間しかいない。多様な種族で賑わう【オーパブ】が異色なのであって、王都ではこれが普通だ。


「ほうほう、そんなことがあったのかや。災難じゃったのう」

「ま、オレがスパッと解決してやったわけですけどね!」


 事の顛末をメロリナさんに語り聞かせている利一が、天井を仰ぐ勢いで踏ん反り返った。今回ばかりは誰が見ても利一の手柄だし、得意げになるのも仕方ない。

 利一の話を酒の肴にしているメロリナさんの顔は、酔いで薄らと紅潮しており、幼女の外見を裏切って、やたらと艶めかしく見える。


「ああ、そうだ。メロリナさん、ちょっと教えてほしいンだけど」

「潮の吹かせ方かや?」


 それも興味なくはないが、利一もいるのでまたの機会に。


「サキュバスって、嗅覚が鋭いとかあるんスか?」

「ほむ。リーチが犯人の性別を言い当てた件じゃな」

「利一以外には全く違いがわかンなかったから、人間より鼻が利くのかなって」

「違いというのは正確ではありんせんな。リーチは匂いを嗅ぎ分けたのではなく、雄の匂いを嗅ぎつけたのでありんす」


 特別嗅覚が鋭いわけじゃなく、特定の匂いにだけ敏感ってことか。


「リーチはまだまだ発達途中じゃが、成熟したサキュバスともなれば、もはや雄の匂いが視覚以上にはっきり見える」

「匂いが見える?」

「目を瞑っておっても、男から香る体臭が色や形だけでなく、その他様々な情報を教えてくれるのじゃ。その雄が剥けておるのか、被っておるのか、どれくらい溜めておるのか、先走っておるのかなどの。わちきくらいになると、雄の性的嗜好から性病の有無までわかりんす」


 様々なと言いながら、その情報が下半身に集約されている気がするンですが。


「わちきは雄とまぐわう時、相手の興奮を高めるために『お願い。恥ずかしいから明かりを消してくれやす……』と生娘を装ったり、目隠しプレイなんぞを強要されたりすることもあるが、ぶっちゃけ、わちきには全部見えておる」


 この見た目幼女に目隠しプレイを強要……だと?

 サキュバスは魔物扱いされてるし、相手に正体を明かしているわけはない。

 てことは、メロリナさんが300歳だと知らずにヤってるってことだろ?

 どこの誰か知らねェけど、その変態、逮捕しといた方がイイんじゃね?


「すごかろ?」

「まあ……うん……すごいスね……」

「じゃろー。とはいえ、目以外で物を見ること自体は別に珍しくもない。例えば、リザードマンのギリコじゃと、匂いではないが、熱を視覚化しおる。もしこの先、洞窟探索でもするようなことがあれば、あやつを雇うといい」


 そっちは素直にすごいと思うし、カッコ良く聞こえるンだけどな……。

 利一も俺と同意見らしく、複雑な顔をしている。


「ま、どちらが優れているとするかは甲乙つけがたいの。ギリコは熱を発するものなら感知できるが、著しく体温の低い動物は見つけられん。その点、サキュバスは雄なら種族を選ばんしの。しかも、匂いは熱と違い、すぐには消えん。雄の痕跡を辿ることに限って言えば、クー・シーのマリーにも負けんのじゃ!」


 のじゃ! と自信たっぷりでサキュバスの魅力を語るメロリナさんだが、それを聞いている利一の表情は依然として渋面だ。


「リーチや、これからは、今まで以上に雄の匂いを意識することを心がけんさい」

「普通に嫌なんですけど」

「習得しておいて損はないスキルじゃぞ。ある程度慣れれば勃気(勃起の気配)を感じ取ることもできる。この感覚を掴めれば、タイミングを見誤ることなく自然な流れで情事に持ち込めるしの」

「そんな感覚、掴む必要ないんで」

「確かにお前さんなら、今はサラシで潰しておるが、そのデカ乳さえ掴ませれば、大抵の雄はヤることしか考えられなくなるじゃろう。ほんに羨ましい限りよの」

「そういう意味で言ったんじゃないですから!」


 でも実際、一発だと思う。揉んじまった経験(※第三部02『お前だからだよ』)から言わせてもらうと、あの感触はヤバい。魔性の乳だ。


「強情じゃのう」

「強情って。オレ、見た目はこんなんですけど、中身はまだ男のつもりですから。そこんところを忘れないでください」

「やれやれ。では見せてやるかの。タクト坊、ちぃと手伝ってくりゃれ」


 ちょいちょいと指で招くようにして、自分の後ろへ立てと指示される。

 何をさせるつもりかわからないが、俺は言われたとおり背後に回った。


「いつでもよい。わちきの頭に手刀を打ち込んでみんさい」


 そう言うメロリナさんは、俺に背中を向けたままだ。

 ふむ。

 何が何やらだが、とりあえずヤってみるか。

 もちろん本気で叩くつもりなんてない。俺はメロリナさんの頭上で象った手刀を右へ左へうろうろさせ、打ち込む角度を探した。

 んじゃ、軽く小突くつもりでイキます、よっと。


「ほやっ!」

「うおっ!?」


 ……ちょっとビビった。

 俺は掛け声をつけなかった。タイミングなんてわからなかったはずだ。

 それなのにメロリナさんは、まるで背中にも目がついているかの如く、真っ直ぐ頭頂に振り下ろした手刀を白刃取りで止めてしまった。


「カカ、ずいぶんゆっくりじゃったのう」


 体温の高い小さな手が離されるが、メロリナさんは振り返らない。

 次を要求されている。

 今のは偶然かもしれない。俺は告知なしで、二撃目の狙いを右側頭部に変えた。

 だが、しかし。


「そいっ!」


 また止められた。

 偶然……じゃ、ないのか?

 三撃目。今度は後頭部――と見せかけて、左側頭部に。


「のじゃ!」


 またしても止められた。

 どうやら、本当に見えているようだ。

 満足したのか、ここでメロリナさんが俺に振り返り、屈託のない笑みを向けた。


「すごかろ?」


 さっきと同じ台詞だけど、今度は素直に頷ける。

 そしておそらくは、俺よりも利一の方が……。


「カ、カッケエエエ! え、ちょっと、今のなんですか!? メロリナさん、武術の達人みたいだったんですけど!?」


 予想どおりのリアクションだ。

 こういうの、絶対好きだと思ったよ。目が超輝いてる。


「お前さんも、これくらいすぐにできるようになりんす。訓練すればの」

「する! します!」

「まずは、匂いで対象の輪郭を捉えることを覚えるのじゃ。慣れるまでは真っ裸の雄から始めてコツを掴むがええ。タクト坊か、エリム坊あたりに手伝ってもらうとよかろ。間違っても、聖神(せいかん)隊の連中に協力を仰いではいかんぞ」

「はい!」

「うむ、良い返事じゃ」


 ちょろ……。


「なあなあ、拓斗、俺と二人きりの時だけでいいからさ、できるだけ全裸でいてくれないか? お前、丸出しで人前に出るのも慣れてるよな?」

「慣れたくて慣れたわけじゃねェんだけど……」

「あ、嫌なら無理にとは言わないから。その時はエリムに頼んでみるし」

「俺が脱ぐ!」

「いいのか? へへ、サンキュー」


 利一、お前さ……。

 言いたかないけど、一歩ずつ、着実にサキュバスへの道を進んでいるぞ。

3巻が6月30日に発売しました。

よろしくお願いしゃっす!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ